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「日本を東南アジアから眺めた」 空族が「バンコクナイツ」で見つめたもの

2017年2月24日 17:00

富田克也監督(左)と共同脚本の相澤虎之助「サウダーヂ」

富田克也監督(左)と共同脚本の相澤虎之助
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[映画.com ニュース]「サウダーヂ」の空族による最新作「バンコクナイツ」が公開する。「娼婦・楽園・植民地」をテーマに、タイ・バンコクからイサーン地方、ラオスまでロケを敢行。様々な事情を抱えてタイで生きる登場人物たちの人間模様を、現地の息遣いを感じる映像、伝統音楽とともに、圧倒的なスケールで映したロードムービーだ。ベトナム戦争の傷跡、日本人専門の歓楽街……タイ人ホステスと元自衛官の男の恋愛を軸に、重層的な東南アジアの歴史をひも解いていく。2月25日の公開を前に、監督、脚本、そしてオザワ役を演じた富田克也と共同脚本の相澤虎之助に話を聞いた。

バンコクにある日本人専門の歓楽街タニヤ通り。タイの東北地方イサーンから出稼ぎに来て5年になるラックは、現在は人気店のトップにのぼりつめ、日本人男性をヒモにしながら贅沢な生活を送る一方で、故郷の家族に仕送りをする。ある晩、ラックはかつての恋人である元自衛隊員オザワと5年ぶりに再会。ふたりはそれぞれの思いを胸に秘めながらラックの故郷へ向かう。


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(C)Bangkok Nites Partners 2016
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「現実として、目の前にタイ人もブラジル人も大勢いたので『サウダーヂ』はあの瞬間、あの時期に撮らなければいけないものでした。『サウダーヂ』で描いた甲府という一地方都市の問題が、日本全国共通の問題だと捉えられるようになって。その後、じゃあ日本は一体なんでこうなっちゃったんだと考えようと思ったときに、考える尺度をひろげるために日本から離れることが必要でした」と、富田は今作の舞台にタイを選んだ理由を明かす。

「日本全体を東南アジアから眺めてみたら、海では隔てられているけど、歴史という地続きでつながっていた。そうしたら、見えてくるものも違ってきた。ベトナム戦争の影響が東南アジアに深い影響を残していることを知って、そこに至るまでの流れで歩き回ってみると、自分たち日本人のことにもなっていたとわかったんです」

国道20号線」「サウダーヂ」でもタイへの目配せがあったが、今作「バンコクナイツ」の構想は10年以上前にさかのぼる。90年代後半に、バックパッカーだった相澤が東南アジアの歴史と裏経済を描いた「バビロン」3部作を企画したのがきっかけだ。そして、「サウダーヂ」発表後、4年をかけて新たにリサーチを開始。バンコクへの出稼ぎ労働者の大半がタイ東北部イサーン地方出身であることを知り、ベトナム戦争の傷跡の残るイサーン、ラオスへと取材を進めていった。

相澤「今回、イサーン地方という場所をしっかり知ることができたのが大きかった。10年前に撮っていたら、旅行者目線の映画になっていたと思う。そうではないものをやりたかったので、この10年は必要でした」


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(C)Bangkok Nites Partners 2016
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相澤が監督した「バビロン2 ‐THE OZAWA‐」(12)に続き、富田自身がオザワ役を演じた。「他に誰かいい人がいれば、という考えもあったけど、現地で次々と起こるスゴイ現実に対応しているうちに、こっちのことはいろいろ面倒くさくなっちゃって。もういい、俺がやる、という感じで事をシンプルにしていきましたね(笑)」

タイ人女性が日本人を相手に日本語で接客するカラオケクラブが立ち並ぶ、バンコクの歓楽街タニヤ。美ぼうと愛嬌でしたたかに夜の街を生き抜くタイ人女性と、客、ヒモ、そしてタイに沈没する日本人男性の生態をリアルに描いている。

富田「バブルの終わりかけに僕は高校生でしたが、先輩とか見てると、なんかみんな金稼いでて、高級車のトランクにはゴルフセットが入ってて、時々タイやフィリピンに遊びに行ってるみたいな感じで。ジャパゆきさんとかスゴイ流行って、友達の兄きがフィリピーナと結婚して、そしたら嫁さん逃げちゃって。『あれって、ビザほしかっただけだぞ』みたいな噂の中で、タニヤという通りの存在を知って。日本の経済状況と深い関係があったと後でよくわかりました」


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(C)Bangkok Nites Partners 2016
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「今回、長い期間を現地で過ごして、タイは母系社会だと感じました。イサーンではそれが顕著。母親を中心に一家郎党がより集まって住み、女たちが何とか働いて、家族を養っていく。そうすると、この商売が、女性たちが従事する職業として、手っ取り早く大金が稼げる数少ない職業選択肢のひとつになるのは否めない」

イサーン地方から貧しい若い女性がバンコクへ出稼ぎに行く、という状況は今も大きく変わっていないそうだ。

「僕たちもこの題材に向かうにあたって、いろんな矛盾を抱えることになりました。た。でも結局は心の問題。僕たちは彼女たちと接する中で、ひと事とは思えなくなって。相澤と話してて、結局、山中貞夫監督の『河内山宗俊』(36)みたいな映画を作りたかったんだなと。幼い身に余りある問題を抱えることになってしまった少女を、長屋のぼんくら浪人とヤクザの親分が行きがかり上ほっとけないと助けに入って、わりとあっさり命を掛けて死んでいく。江戸時代の設定なんですよね」

一足早く上映された第69回ロカルノ映画祭では、10代の若者が選ぶ若手審査員・最優秀作品賞を受賞。フランスでは、リベラシオン、ル・モンドという二大紙が作品評を掲載するなど、「サウダーヂ」に続き今作も海外で高く評価された。


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(C)Bangkok Nites Partners 2016
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相澤「海外の映画祭で、ヨーロッパには娼婦という存在を侮蔑してしまう風潮があるけれど、『バンコクナイツ』にはそういう目線がないと言われたんです。もちろんタイにそういう見方がないということはないけれど、社会にそういう職業を受け入れ、許すというところがある。致し方ないという部分がもちろんあると思うけれど、彼女たちも恥じていない。セクシャルマイノリティの人を寛容に受け入れているのも、そういうことだと思うんです。非常に包容力のある社会のように思えます」

サウダーヂ」に出演したヒップホップグループ「stillichimiya」フルメンバーが完全協力し撮影や録音を担当。劇中をイサーンの伝統音楽モーラムが彩り、観客自身もタイに滞在しているような臨場感溢れる作品に仕上がった。「遊園地のアトラクションのような経験をさせてくれる映画はたくさんあるけれど、本当の旅をするような映画がない。旅に連れ出してくれるような映画を作りたかった」と言うふたり。空族が届けるアジアの風をぜひ劇場で感じてほしい。

バンコクナイツ」は、2月25日テアトル新宿、シネマ・ジャック&ベティほかで公開。過去作の特集上映「KUZOKU SAGA<空族サーガ>全作品特集上映」は新宿K's cinemaで3月4日から。

(映画.com速報)

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