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タブーのドアを開けようと意欲作に挑んだ、ドイツのクリス・クラウス監督

2016年10月31日 15:00

クリス・クラウス監督「ライフ・イズ・ビューティフル」

クリス・クラウス監督
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[映画.com ニュース] 2006年の「4分間のピアニスト」で国際的に知られるようになったクリス・クラウス監督。ここ日本でもスマッシュヒットを記録した作品だが、新作「ブルーム・オヴ・イエスタディ」で描き出したのは、ホロコーストという負の遺産をひとつのテーマとして用いたラブコメディだ。このところホロコーストをサブテーマにした作品は日本でも多く公開されているが、ドイツ本国からこのような作品が登場するのは稀なこと。その事情などを監督に聞いた。

ホロコーストのイベントを企画しているトトは、やや頑なで性格的に問題あり。そこで彼は担当を外されてしまう。だが、彼はフランス人インターンの女性ザジとともに、勝手にイベントの準備を始める。すると彼らはやがて意外な事実に直面することに…。と、ホロコーストの史実自体はメインのストーリーではないこの作品。「ホロコーストを一部で描いているけど、あの悲劇をそのまま描いていない作品はドイツ国外ではよく目にするようになりました」と監督。

クリス・クラウス監督(以下、クラウス監督):そういった作品のなかでも、ちょっと以前の映画になりますが、イタリアのロベルト・ベニーニ監督が撮った「ライフ・イズ・ビューティフル」は素晴らしいアプローチの作品だと思いましたし、最近ですとカナダのアトム・エゴヤンの作品「手紙は憶えている」もいいですよね。また、昨年この映画祭でも上映された「ヒトラーの忘れもの」(TIFF上映時のタイトルは「地雷と少年兵」)は、デンマーク人の監督ですがドイツとの共同制作だったので、私もよく存じています。このようにドイツ国外ではこういった作品が作られているんですが、じつはドイツ国内では全くそのようなことがないんです。相変わらず旧態依然とした保守的な悲劇を作り続けているんですよ。でも、私はそれよりも、国外で製作されている新たなアプローチの作品にインスパイアされました。ホロコーストをテーマにした映画の新しいムーブメントに影響を受けたことで、私たち“第三世代”のこと、そして現代の話を作ることに非常に興味がわいたんです。

それでは直接的にはどの作品から、本作へのインスピレーションを受けたのかを聞くと「『ライフ・イズ・ビューティフル』です」と即答。

クラウス監督:ですが、あの作品を見てすぐに構想が浮かんだわけではありません。あの作品のトーンはすごく面白いと思いましたし、コメディ要素を入れて描くことができるんだ、と関心を持ったのは事実です。でも、私が描くならもっとテーマを個人的なところから出すべきだとも思っていました。そこで、自分の家族の歴史を調べたり、さまざまなアーカイブをチェックしていたのですが、その際、加害者と被害者の孫の世代は互いに冗談を言い合っているのが普通にされていることを知ったんです。そこで、本作をコメディタッチにしようと思いました。

そこかしこに織り込まれたコメディやブラックユーモアに笑いつつも、見終わった後はホロコーストのことが残像のように印象に残るという仕掛け。このサプライズも監督の目論みだ。

クラウス監督:映画は観客を驚かせたり、何か新しいものを与えるためにあるのだ、と常々考えています。ドイツではこのテーマの作品は見慣れてしまっているので、「あ1、これはこの先どうなるかわかってるよ」という反応になってしまうんですね。ということは、このテーマ自体が映画として死んでしまっていることだと思うんです。私はもっと生き生きとした、タブーのドアを開けるような作品を作りたいと思い、この作品に着手しました。もちろん役者とも議論を重ねましたし、彼らは役柄について理解するためにとてもオープンになってくれました。

戦後70年以上経過した今こそ、語られなければならない過去。それも今を生きる我々の言葉で、というのが鍵となる。ドイツでは比較的オープンに語られている、というホロコーストだが「おそらく語られすぎたのだと思います」という監督。

クラウス監督:語られずに解決されていない問題と、語られすぎていることの両方が存在するんです。たとえばホロコーストのことはよく語りますが、誰も自分の家族が関わっていたとは考えていない。それはあの問題に直面したとは言えないのではないでしょうか。そのために私たちは私たちの世代の話法で、映画を通じて伝えていかなければならないと思います。じつはこの作品と関連して進んでいる、ドイツの秘密情報局のシリアスなプロジェクトがあり、まず来年3月に小説が発表されます。ドイツでは戦中戦後の資料が最近になって情報開示されたり発掘されたりしているので、リサーチに困ることはありません。むしろ、新たな視点がたくさん出てきているので、今後も私はこのテーマに挑んでいくつもりです。

(取材/構成 よしひろまさみち 日本映画ペンクラブ)

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