EXOのD.O.映画デビュー作「明日へ」監督が語るド・ギョンスの魅力

2015年11月5日 14:45


プ・ジヨン監督
プ・ジヨン監督

[映画.com ニュース] 韓国アイドルグループEXOのメインボーカルD.O.(ディオ)が本名ド・ギョンスで銀幕デビューを果たした映画「明日へ」が、11月6日に公開される。不当解雇への抗議でパート社員たちがスーパーを長期間占拠したという実際の事件を基に、韓国の非正規労働者の過酷な現実を描いた社会派作品だ。演技未経験だったにもかかわらず、主人公の息子という重要な役にド・ギョンスを抜てきしたプ・ジヨン監督にキャスティングの経緯や作品について話を聞いた。

家族のために懸命に働いた大手スーパーのレジ係のソニは、入社5年目で正社員への昇格が決まった。しかしある日、非正規雇用者全員に会社からの一方的な解雇通達により、ソニと同僚たちは職を失うこととなってしまう。ソニたちは一致団結し、強大な企業権力を相手に解雇撤回を求める行動に出る。ミス・コリア出身の美人女優ヨム・ジョンアが、女手ひとつで子供を育てながら、レジ係で生計を立てる主人公ソニを演じ、新境地を開いた。

本作は実話をベースにしているが、映画化に伴いフィクションの部分を追加した。「実際に起きた事件にインスパイアされていますし、現在もなお、非正規雇用の問題は続いています。そのため、例えば実際の労働現場で起きた事件や関連人物たちのインタビュー、ドキュメンタリーなどの資料を十分に反映して映画を作っています。しかし映画はひとつのエンタテインメントです。労働現場の声を1年以上かけて集約すると同時に、家族を描いた映画であり、女性たちが成長する物語として観客に楽しんでいただける作品になるよう、2つの側面を意識しました。また、特定の人物を描いてはおらず、あくまで架空のキャラクターが登場する映画なので、また、誰かを美化したり、逆に誰かを悪者のように描いたりということもしませんでした」

演技未経験だったド・ギョンスを主人公の息子テヨン役にキャスティングした理由は、「ギョンスは私が実際会う前に描いていたイメージと、実際に会って受けた感じが180度正反対の俳優でした。それが私にとっては良かったし、非常に印象的でした。実際の彼はアイドルっぽくなく、年齢の割に大人びています。しかも真面目です。この役を任せてもいいと思えるぐらい信頼できました。また彼自身も成長過程で苦労しており、アルバイトの経験もありました。それは彼がこの役を演じる上でプラスになると思いました」

ド・ギョンスの魅力は「彼は何の偏見もなく、役についてもすんなり理解していました。まるでスポンジのようになんでも吸収するし、いつも準備万端で本人の一生懸命やろうという姿勢が素晴らしく、(初出演作が)この役でなかったとしても、例えどんな役でもこなせたのではないかと思うぐらいです」と絶賛している。

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劇中では、労働者たちの闘いが描かれる一方で、親子の絆やテヨンの成長が感じられるシーンが印象的だ。「母親に大声で口答えしながらケンカしながら家を出てしまう場面がありますが、この部分が非常に難しかったようです。というのも、あの年齢になるまで一度も母親にそのように声を荒げたり、反抗したことがなく、真面目な子でどうしていいかわからなかったようです。本人は非常に悩んでいたのですが、シャワーをしながら大声を出してみたりして練習したようです。本人が努力して役作りをしたのです」とド・ギョンスの役作りについて明かした。

ド・ギョンスは作品の内容と歌詞がリンクする主題歌「叫び」も担当した。「この映画のテーマから、エンディングを軽い音楽で処理するよりは、歌詞がある歌で終わりたいと考えていました。登場人物の一人の歌で締めくくれれば、と。当初、ギョンスが歌う予定はありませんでしたが、彼は歌手ですし、このような主題歌があるので、彼が歌ってくれればいいなと思い提案してみたのです。すると即答でやりますと言ってくれました。もちろん引き受けないということもあり得たのですが、本人のやる気で実現できたのです」

本作では、主に女性の非正規雇用者たちの問題を描いているが、韓国映画界の女性の立場についてこう語る。「私が2007~8年の間に長編第1作を撮り、昨年この映画を作りましたが、当時よりも今の方が女性監督の数は緩やかに増えていますが、成長の勢いは決して強いものではないように思えます。どうしても映画という産業を取り巻く投資や製作面では男性中心のネットワークが強いので、女性たちが相対的にチャンスを得るのが難しい部分があるのは事実で、見えない壁のようなものはあるのかもしれません」

女性監督の地位向上のため、映画業界内の女性映画人の権利保護のためのコミュニティに積極的に参加している。「韓国映画界でより多様な映画を作るのであれば女性監督たちにもたくさんのチャンスがあるのでは思うのですが、どうしても韓国映画の主題というのがアクションだったり犯罪ものやスリラーだったりと男性的な題材に偏っていると思います。女性監督のチャンスは多いとは言えないかもしれませんが、今後肯定的な方向へと変化していくでしょう」と希望を語った。

明日へ」は11月6日、TOHOシネマズ新宿ほか全国順次公開。

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