日本で暮らすフィリピン人の現状を描いた「インビジブル」監督・俳優陣が語る : 映画ニュース

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日本で暮らすフィリピン人の現状を描いた「インビジブル」監督・俳優陣が語る

2015年10月30日 21:40

多くのフィリピン人の声を代弁!

多くのフィリピン人の声を代弁!
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[映画.com ニュース] 昼は工場、夜はバーで働くベンジー。日本人と結婚してアパート経営を営むリンダ。借金に苦しむホストのマヌエル。建築作業員ロデル。日本で働く4人のフィリピン人の人生が交錯する本作は、出稼ぎ労働をして故郷に仕送りする、多くのフィリピン人の声を代弁する作品。労働、生活、家族とのつながりを社会の根底から見つめ、異国に流入する下層民の現状を真摯に描いた好編だ。監督、脚本、俳優、製作担当が、映画の裏側を語った。

もとは、東京を舞台にした芝居だったそうですね?

ヘルリン・アレグレ(以下、ヘルリン):芝居では1990年代末の東京が舞台でした。当時、日本に住むフィリピン人の多くは東京にいました。映画の時代設定も同じですが、東京の風景は一変しているので、別の場所に舞台を変えざるをえませんでした。

ローレンス・ファハルド監督(以下、ファハルド監督):現実的にも東京で撮影するのは大変です。福岡や旭川はそれほど風景が変わっていないので、この物語にふさわしいと思いました。

このふたつのロケ地はどのようにして決まったのでしょう?

ファハルド監督:2013年、アジアフォーカス・福岡国際映画祭に行った際、福岡フィルムコミッションのロケーションツアーに参加したのがきっかけです。その1年後、この舞台の企画をもらうのと同じタイミングでシナグ・マニラ映画祭が発足し、製作資金援助のための脚本提出の話がありました。運よく選考に通り、福岡の担当者にこの脚本で映画を撮りたいと申し出ました。旭川に関しては、しんしんと積もる雪景色が撮れる街を探していました。

ヘルリン:雪は人生の冷たさ、孤独を象徴する比喩として、作品に欠かせない要素でした。

ベンジー役のベルナルド・ベルナルドさんは、舞台版にも出演されていたそうですね?

ベルナルド・ベルナルド(以下、ベルナルド):初演と再演の2回上演していて、私は再演時のキャストです。初演とは若干異なる部分もあって、再演のストーリーのほうが映画の土台になりました。

どのあたりが異なるのでしょう?

ベルナルド:ベンジーはフィリピンに妻子がいますが、日本ではゲイとして生きています。そして、2つの仕事をかけもちしている。性的嗜好と仕事で、「インビジブル(不可視)」な側面があるのです。常にマスクをして顔を隠しているのも、そうした性質を物語っているのです。

ヘルリン:2013年の第1バージョンではベンジーはただの異性愛者でしたが、監督のアイデアで変更されました。おかげで、キャラクターにより深みを与えることができたと思います。

ベルナルドさんは、イシュマエル・ベルナール監督の「マニラ・バイ・ナイト」(80)にも出演されています。長い経歴を誇る上、今回は12年ぶりにフィリピンに帰国されてのご出演だったとうかがいました。

ベルナルド:「マニラ・バイ・ナイト」は、1991年の第4回東京国際映画祭で上映されました。あと、「ミュージカルズ・イン・フィリピーノ」という舞台が、国際交流基金のサポートで上演されています。ですから、私はこれで3回目の来日になります。舞台版も映画も、帰国1作目のとても大切な作品です。優れた監督と仕事ができて、私は本当に恵まれています。もう年だからすぐ涙が出ちゃうんです(笑)。

4人のキャラクターがすごくリアルで驚きました。先ほど、お話のあったベンジーのほかに、売れないホストであるマヌエルの境遇も身に迫ってきます。

ヘルリン:私は日本に住んで大学に通っています。実はいまも大学院で研究を続けていますが、日本で暮らすフィリピン人のレポートを読み、実際に聞き取りを行いました。バーに行き、どんな仕事をするのか働くフィリピン人に聞いたり、日本政府が発行する在日フィリピン人関係の文献を精査しました。また、フィリピンにある海外派遣エージェンシーにも話を聞きました。多角的に情報を集め、さまざまな声を拾って脚本を書きました。マヌエルのキャラクターも聞いた話をそのまま反映しています。フィリピン人のホストだけじゃなく、日本人のホストもあんな感じだと思います。

ずっと固定カメラで人物に動きをつける演劇的な演出をされていて、クライマックスのシークエンスで、初めて手持ちカメラの荒々しい力感を呼び込んでいました。

ファハルド監督:ストーリーを前面に押し出して、俳優たちの存在を際立たせるために舞台的な演出をしました。あと窓からのぞいているような、盗み見している感覚を出そうとしました。舞台は照明ですが、映画では自然光を使いリアルにしました。この作品は行動観察的な映画といえばいいでしょうか。冬はいろんな動植物が活動を休んでいる時期です。そうした静的なイメージで展開したところで、殺しの場面に至ってカメラは動き始めるのです。

オイー・バローさんもいま日本に住んでいるそうですね。マヌエルに誘惑される際どい役に、どんな経緯でキャスティングされたのでしょう?

オイー・バロー(女優):ベルナルドさんは私の恩師であり、ロケで来日した際に、映画に出ないかと連絡をもらいました。もう20年以上会っていなかったので、まずベルナルドさんに会いたくなったんです。会ってストーリーを聞いたら、すごく興味をかきたてられました。私が日本に移住した時、こんなフィリピン人が大勢いたからです。日本にいるフィリピン人は何かと誤解されることが多くて、これは実情を描いた素晴らしい映画になると思い、出演したのです。

本作は、日本のフィルムコミッションや国際交流基金アジアセンターがサポートして、完成した作品でもあります。

クリスマ・マックラン・ファハルド(製作):シナグ・マニラの助成だけでは不足で、福岡フィルムコミッションと国際交流基金アジアセンターが協力してくれました。福岡フィルムコミッションはロケ地などの便宜を図ってくださいました。また、国際交流基金アジアセンターの村田裕子さんから連絡を受け、福岡から旭川への移動の費用など、不足していた部分の助成を受けることができて大いに助かりました。皆さんがいなければこの映画は存在しません。ご協力に感謝するしだいです。

(取材/構成 赤塚成人)

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