クーデターさなかの恋愛模様……タイの新鋭監督最新作TIFFでワールドプレミア上映
2015年10月26日 05:30
[映画.com ニュース] 第28回東京国際映画祭コンペティション部門出品作「スナップ」が10月25日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズでワールドプレミア上映され、主演のワラントーン・パオニンをはじめティシャー・ウォンティプカノン、コンデート・ジャトゥランラッサミー監督、プロデューサーのソーロス・スクム氏が会見に出席した。
タイの新鋭コンデート監督は、「タン・ウォン 願掛けのダンス」が第27回東京国際映画祭「CROSSCUT ASIA」部門で上映されており、2年連続で同映画祭への出品を果たした。今作はメインストリームであるコンペティション部門への出品ということで、「映画祭の皆さまのサポートに感謝します」と謝辞を述べた。
映画は、クーデターが勃発したタイを舞台に、高校卒業から8年後の同窓会で初恋の相手と再会した女性が、忘れられずにいた恋と、現在の婚約者との間で揺れ動く様子を静止画を使用したスタイリッシュな映像で描いた。
コンデート監督は、今作を政治的に苦悶してるタイの現状を念頭に置いて製作したといい、「タイではたった8年の間に2回もクーデターが起きました。以前は軍と民衆は反対の立場にいたが、現在では一部の民衆は軍事クーデターを支持している。個人レベルでは、友人間や家族間で政治的な見解を持った人が対立するという現象が起こっている」と国が置かれた危機的状況を説明。「その時代背景の中で、若い人たちが恋愛、人間関係をどのように作っていくのかということをこの映画に込めました」と真摯に作品のメッセージを伝えた。
また、「主人公は女性に決めていた」と断言するコンデート監督は、「SNSを見て、女性の考え方に興味を持った。彼女たちが自分の人生から(インスタグラムで)他者に見せたい写真をどういう風に選んでいるんだろうというような、女性たちの実生活の疑問がこの作品のアイデアのスタートになりました」と明かした。
ワラントーンとティシャーは、そんなコンデート監督は「女性をよく理解している」と声をそろえ、「劇中の静止画は私のインスタグラムから使っています。たぶん私の性格が主人公のプンに似ているから。出来上がった映画を見て、ちょっと(胸が)チクっとしました(笑)」(ワラントーン)、「私も毎日インスタグラムに写真を投稿します。(映画から)『私って本当にこんなことしてたっけ?』っと気付かされたことがありました」(ティシャー)と、その洞察力に舌を巻いていた。
第28回東京国際映画祭は10月31日まで開催。