ロバート・アルトマンのドキュメンタリーが公開 妻、キャスリンが語る巨匠の素顔
2015年10月2日 09:30
[映画.com ニュース] 「M★A★S★H マッシュ」「ナッシュビル」など、さまざまなジャンルの傑作を残し、アメリカ・インディペンデント映画の父と称されたロバート・アルトマンの実像に迫ったドキュメンタリー「ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男」(ロン・マン監督)が10月3日公開する。巨匠の映画人生を支えた妻キャスリン・リード・アルトマンが作品と夫ロバートを語るインタビューを映画.comが入手した。
――完成したドキュメンタリー映画にどんな感想を?
最初に見たのはLA、サンタモニカの試写室でロン(・マン監督)とふたりっきりで見たのよ。それはもうスリリングで素晴らしい体験だった。特にボブ自身を語り手にする方法はひらめきのある素敵なアイディアだと思ったわ。
――アルトマンご自身が本作をご覧になったらどんなことを仰ると思われますか?
それはよく考えるのよ。彼も気に入るでしょうね。そうじゃない理由がみつからないもの。独創的で、深い探究心を感じさせるし監督ロン・マンの心の底からの思いが伝わってくる。間違いなく気に入ったはずよ。
――映画祭を含め世界各国で本作が上映され、また生誕90周年にあたる今年にかけてアメリカでも各地でアルトマン特集上映が行われていますが若い観客の反応は?
世界で、また全米の様々な都市で本作が上映されボブのことを新たに知ってもらえるのは大事なことだと思う。確かにアメリカでも最近、若い人は映画館で映画を見ない傾向がある。だけど映画は見たその時だけじゃなく記憶に残る。思い出を作る貴重な体験になる。だから若い人こそもっと見てと言いたいわ。
――1959年、テレビ・シリーズ「ソニー号空飛ぶ冒険」で演出家と出演者として出会い、47年間もの結婚生活を送っています。その秘けつは?
秘けつも秘密もないわよ(笑)。ただいつも一緒にいた。それだけのこと。家族が一緒にいることが大事だったから新作が始まるといつも子供たちを引き連れてそこに行った。正直言えばそのせいで子供たちには落ち着いて教育を受ける機会を与えてやれなかった。その点に悔いは残るの。でも、みんなでいる、その方が大事だった。それをしなければ結婚生活も家庭もなくなっていた。今の私もいなかったでしょうね。
――ご自身の女優としてのキャリアを惜しむことはないですか?
キャリアなんていえるようなものはなかったから(笑)。後悔もなしね。私はハリウッドのお膝下、カリフォルニアで生まれ育ったのね。映画は地元の産業で、女優としての野心があったとかではなく、単に近所に就職するようなつもりでスターレットの仕事をした。ロンの映画でも紹介されるエスター・ウィリアムズ主演の『百万弗の人魚』なんかにちょこっと出て、ボブのヘリコプターの連続ドラマにもそんな感じで出たのね。
――今回のナレーションには出会いの日付まで入っています。
映画でも言っているように私は1959年のエイプリル・フールの日だったと記憶しています。でもボブは4月2日だと(笑)。結局、それ以上は追究せずうやむやにしています。
――お子さんたちの撮ったホームムービーが見られるのも本作の見どころです。
私もすっかり忘れていたようなものもあって。箱詰めにして長いことそのままだったから。ミシガン大学アナーバー校に寄贈した映像資料をロンが精力的にリサーチして発掘してくれた。“再会”できてうれしかったわ。
――優れたアーティストとよき家庭人、必ずしも両立するものでもないようですが。
確かに。とはいえボブは基本的にはアメリカ中西部気質の男。気どってもったいぶったアーティストなんてタイプじゃなかったわ。イージーゴーイングな彼の人柄をロンの映画から感じとってもらえたらと思う。
――アルトマン映画で一番のお気に入りは?
どの子が一番かと聞かれているようなもの、わが子はみんな可愛いってボブはいつもいってたけど私の答えもそれね。だけど、そう、私は『クッキー・フォーチュン』も好き。『ショート・カッツ』も。もっともっと評価されていい映画よね。もちろん70年代の映画もいいけれど。
「ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男」は、10月3日YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。