福島とベラルーシの母親を映した「小さき声のカノン」鎌仲ひとみ監督と五味太郎氏がトーク

2015年3月10日 07:00


鎌仲ひとみ監督と絵本作家の五味太郎氏
鎌仲ひとみ監督と絵本作家の五味太郎氏

[映画.com ニュース]「ミツバチの羽音と地球の回転」など核や被ばくをテーマにしたドキュメンタリーを手がけてきた鎌仲ひとみ監督最新作「小さき声のカノン 選択する人々」(公開中)のトークイベントが3月9日、渋谷のシアター・イメージフォーラムであり、鎌仲監督と絵本作家の五味太郎氏が作品について語った。

本作は福島と1986年のチェルノブイリの原発事故後のベラルーシの生活を、母親たちの視点から捉えた作品。両国で400時間にわたりカメラを回した鎌仲監督は、「2時間に編集していく過程で、作り手の選択が入るが、作為や真実や物語という区分はなく、そこで何が起きているのか、暮らしの中で被ばくから子どもたちを守ろう、乗り越えようとするお母さんたちが見たかった」と話し、「福島では話してはいけないことになっているので、(生活ぶりを)なかなか見せてくれる人がいなかった」と取材の苦労も明かした。

五味氏は「チェルノブイリと比較して、(原発事故が)福島は人口密度の高いところで起きた」ことが興味深いとし、「ロシア人は政府を信用していないので、国の責任を問うという習慣がなく、国家と国民の関係がそもそも日本と違う。日本でも、(被ばく者の)保養については民間がまず動くのが理想」と指摘した。これを受けて鎌仲監督も「ベラルーシのように、日本も自治体や市民が動いて子どもにとって自由な保養を展開できたら」と希望を語った。

2011年の原発事故後に、児童、生徒の登校を制限した学校の対応が議論を呼んだが、鎌仲監督は「学校には行かなくてもよい」と自身を考えを述べている。五味氏も「学校は先生のためにあるようなもので、子どもは(学校を)必要としていないんです」と辛口のコメントとともに同意し、観客からは「いろんな立場の人がそれぞれの発想をして良いのだと思った」と感想が寄せられた。

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