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名匠V・シュレンドルフ、パリ壊滅計画の裏描いた歴史ドラマで見る現代社会

2015年3月6日 16:45

フォルカー・シュレンドルフ監督「パリよ、永遠に」

フォルカー・シュレンドルフ監督
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[映画.com ニュース] 1944年のフランス・パリ解放から70年を経て、パリ壊滅計画の裏で繰り広げられたふたりの男による駆け引きが、「パリよ、永遠に」として映画化された。「ブリキの太鼓」などヨーロッパの歴史を見つめてきた、ドイツの名匠フォルカー・シュレンドルフが本作について思いの丈を語った。

史実に基づいたシリル・ジェリーの舞台「Diplomatie」を原作に、第2次世界大戦末期の1945年8月にパリ破壊を命じられたナチス・ドイツ軍将校と、パリを愛するスウェーデン総領事が繰り広げた一夜の攻防を描く。

シュレンドルフは、原作者のジェリーと共同で脚本を執筆。話し合いを重ね、「歴史的な事実を厳密になぞることはしない」という意識を共有し、「事実をそのまま描くのではなく、歴史的な瞑想をする映画にしたかった。それで、個人が自己の決定に対して責任をどう取るかということを中心に置いた。また、一人の人間がどこまで歴史に影響を与えられるかなどに関心があった」と組み立てていった。

劇中で、ノルドリンク総領事がコルティッツ将軍にコンタクトを取るため使用した秘密の扉は、ジュリーが舞台版に盛り込んだもので、史実とは異なる。シュレンドルフは、舞台版オリジナルの要素を踏襲し、ノルドリンクがコルティッツを盗み見見る素通しの鏡などを新たなに登場させることで、「領事の主観を通して語られる側に立つ」と観客とノルドリンクの同一化を図った。「誰が物語を語るのかという語り手の視点は映画にとって大変重要で、この作品では領事だ。我々は領事に親近感を感じるのだ」

緊迫の一夜を明かす男を演じたのは、舞台版に続き主演したニエル・アレストリュプ(コルティッツ将軍役)、アンドレ・デュソリエ(ノルドリンク総領事役)だ。シュレンドルフは、300回以上演じてきたふたりの演技をリセットするため、「けいこをたくさん繰り返すのだ。疲れるまで繰り返すことによって、舞台で演じた役を忘れ去るのだよ」と俳優陣の意見を取り入れながら形にしていった。かつては他者のアドバイスは受け付けなかったそうだが、「彼ら(役者)は経験から何がいいか直感的に分かるんだな。何が正しくて、何が間違いか。何があっていて、何がはずれているかをね。だから、監督は俳優が言うことをよく聞くべきなんだ。俳優がおかしいと思いながら演技をしてもいい作品にはならないよ」と語った。


パリの命運をかけた長い一夜がはじまる「パリよ、永遠に」

パリの命運をかけた長い一夜がはじまる
(C)2014 Film Oblige - Gaumont - Blueprint Film - Arte France Cinema
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ふたりの男に加え、パリという街がヒロインとも言える重要な役割を担っている。ドイツ生まれのシュレンドルフにとっても、パリは思春期に大きな影響を受けた「運命の場所」だ。「現在の私のアイデンティティを形成した場所は明らかにパリだ。パリに到着したのは15歳の時で、離れたのは25歳の時だ。この年代の10年間は一人の人間にとってもっとも大事な時間と言える。この多感な時期に将来が形成され、あるいはうまくいかず、挫折すると言える。自分の人生について考えると、このパリの時代が決定的に重要だ」

そんなパリが破壊されていたら、映画監督としてのシュレンドルフは存在していなかったかもしれない。「両国(フランスとドイツ)の文化にどっぷり浸って育ったのだ。その意味でこの作品を通じて、私の存在の根源に立ち戻ることができて、非常に幸せだと言える」と振り返り、「だから、映画の終わりに救われたパリを祝うためにカメラの目で美しい街をたどったのだ。幸福の瞬間を祝う儀式のようにね。その意味で、この映画は私にとって戦争映画ではないのだ。現在から見るパリの歴史についての瞑想と言ってもいい」と語る。

さらに、対話による他者との向き合い方もフランスで学んだと明かす。昔から外交に関心を抱いていたそうで、現在のヨーロッパ情勢にも触れ「ドイツは現在ヨーロッパの中で他の国々を凌駕するようになったが、その力を示すのは危険だ。ドイツ人は自分たちの力を示したいだろうが、そのためにドイツは20世紀に二度も大悲劇を引き起こしているのだ。現在非常に危険な時期に差しかかっている。経済の分野で力があっても、政治の世界では控えめに振る舞うべきだ」と持論を展開。本作では、「過去の戦争だけに関係すると思って作った訳ではない。国と国との関係における個人の責任を意識している」と現代社会を見つめなおした。

1月7日、フランス紙(シャルリー・エブド)襲撃テロ事件が発生した。シュレンドルフは偶然にもこの日、「ブリキの太鼓」の脚本を担当したジャン=クロード・カリエールとの打ち合わせのため、パリに滞在していたという。「フランス全体が打ちのめされて、ショックを受けていた。テロに対するフランス人の反応は素晴らしかった。あのテロの後、世界中でデモがあったが、フランスでは200万人が街に出て、犠牲者への連帯表明及び言論の自由のために意思表示をした」と話し、「フランスでは共和主義の伝統があり、国民の意志表示がはっきりしている。とても感銘を受けた。そしてパリに誇りを感じた」と胸の内を明かした。

パリよ、永遠に」は、3月7日から全国で公開。

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