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谷口ジロー、枯れた大人の“わび、さび”がフランスで人気

2015年3月1日 12:45

「Elle s’appelait Tomoji(とも路)」の一場面「AKIRA」

「Elle s’appelait Tomoji(とも路)」の一場面
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[映画.com ニュース] マンガが文化として高い評価を受けるフランスで有名な、アングレーム国際漫画祭。1月29日から4日間にわたって開催された、第42回目の今年、最優秀賞に日本人で初めて大友克洋が選ばれたのは、日本でも話題になったと思う。大友といえば、「AKIRA」などで熱狂的なファンを持ち、フランスで2回も芸術勲章に輝いた(その都度階級があがっていく)、日本を代表する漫画家と目されている。だが、アングレームで人気だったのは、彼ばかりではない。現地で展覧会が開催された谷口ジローも、大きな反響を及ぼした。

じつは、谷口人気はいまに始まったことではない。すでに10年ほど前からじわじわと浸透し、いまではすっかりポピュラーな漫画家である。とくに人気があるのは、「歩く人」(L’homme qui marche/Casterman)「孤独のグルメ」(Le gourmet solitaire/Casterman)「ぶらり」(Le promeneur/Casterman)などの、“現代さすらいもの”。また「遥かな町へ」(Quartier lointain/Casterman)は、2010年にフランスのローヌ=アルプ地方に舞台を移し、映画化されている。音楽はソフィア・コッポラの映画などで知られるAIRが担当。原作のしっとりとした味わいを、自然に囲まれた田舎町の雰囲気に生かして、高い評価を得た。また昨年は、ルイ・ヴィトンのトラベルブックシリーズのべネチア編を谷口が手掛け、話題になった。

もっとも、谷口ファンは他の日本の漫画家ファンに比べると、年齢層が高い。SF的要素やロリポップカルチャーとは無縁の谷口ワールドは、どこか枯れた大人の味わいがある。ふと立ち止まって人生を考えるようなメランコリックな感覚が、“わび、さび”に魅了される、アダルトなフランスの日本文化ファンに受けている。いわば漫画界の小津安二郎なのだ。

谷口の大ファンだという、漫画原作者で批評家のブノワ・ペータースは、谷口漫画の特異性をこう語る。「彼は決して過多な装飾やジェスチャーを描かない。その豊かな表現はセリフや顔の表情、アクションに頼るのでなく、セットやその演出に拠るものです。登場人物の感情はしばしば、彼が訪れる場所によって表現される。そこにはつねに繊細なニュアンスがあるのです」

アングレームのみならず、年末から1月にかけては、「Les gardiens du Louvre(千年の翼、百年の夢)」(Futuropolis)と、「Elle s’appelait Tomoji(とも路)」(Rue de Sevres)の新刊が、2冊続けて発売になり、ふたたび谷口ブームがきている印象だ。

一方、映画関係でいま日本オタクのあいだで話題になっているのは、3月に公開を迎える新作、「Tokyo Fiancee」である(ポスターに「東京婚約」と日本語が入っている!)。日本通のアメリー・ノ―トンの自伝的原作「Ni d’Eve, ni d’Adam」の映画化で、幼少期を過ごした日本に20歳で舞い戻ったヒロインが、さまざまなカルチャーショックに遭いながら未知の日本を発見する、という物語。ベルギー出身の若手監督、ステファン・リベルスキーがメガホンを取り、昨年のトロント国際映画祭に出品された。主人公役の、フランスで赤丸上昇中の女優ポーリーヌ・エティエンヌが、いかにも一風変わった日本好きのパリジェンヌという雰囲気でキュートではあるものの、果たしてどんな“東京画”になっているのか。ちょっと見るのが怖いような気もする。(佐藤久理子)

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