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「自由が丘で」加瀬亮が紐解く、ホン・サンス監督から生まれるミラクルの秘密

2014年12月12日 15:00

ホン・サンス監督との現場を語った加瀬亮「自由が丘で」

ホン・サンス監督との現場を語った加瀬亮
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[映画.com ニュース]「出会いたかった監督に出会えた」。かねてホン・サンス監督のファンを公言してきた俳優・加瀬亮にとって、映画「自由が丘で」はこれまでのキャリアの中でも大切な宝物のような1本となった。ある日の日本での対談をきっかけに意気投合し、初対面にもかかわらず一緒に映画を作ることを約束したホン監督と加瀬。カンヌやベネチアといったヨーローッパの国際映画祭ではもちろん、日本でも着実に人気を集めているホン監督だが、その誰にも真似できない製作スタイルはいまだ謎に包まれている。そんなホン監督のそばで2週間の撮影をともにした加瀬に、ホン作品の魅力を紐解いてもらった。(取材・文・写真/山崎佐保子)

思いを寄せる年上の韓国女性クォンを追いかけ、ソウルにある迷路のような路地の街にやってきた日本人青年モリ。宿泊先のゲストハウスで知り合った男と毎晩のように飲み歩いたり、近所のカフェ「自由が丘」の女性オーナーと急接近したり。日記のようにクォンへの思いを手紙に綴りながら、彼女を探してソウルの街をさまよい続ける。

ごくごく平凡な男・モリだが、時に頑固で時に繊細。普段は穏やかだが、酔っ払うと感傷的にもなる。そんなモリの人物像とは、ホン監督が加瀬という生身の人間から連想した部分も大きいのだろうか。「どうなんでしょう。それはあるかもしれない。でも監督に聞いてみないとわからないですね(笑)」とはにかんだ加瀬。ホン監督の前に立つと、どんな役者であれ内面を見透かされてしまうのかもしれない。「監督の観察力、人の本音を感じる力は本当にすごいです。例えば芝居中、僕の中に正直じゃないような気持ちが生まれると、すぐに見抜かれて指摘されるんです」と“神通力”とも呼べるものをホン監督は持っているようだ。

ホン組の独特な現場の空気は、他にはないものらしい。「どんな現場でも、普通はひとつくらいは腑に落ちないことがあるものです。だけどびっくりすることに、ホン監督の現場では疑問に思うことが何もなかったんです。ホン監督は僕にとって外国の人で年も離れていて、でも何も違和感がない。この出会いは本当にうれしかったし、とても心地よかったです」。

ホン監督といえば、脚本を撮影当時の朝に書くことで有名。しかし、完成した映画には即席ゆえのいびつさは一切感じられず、やはりその伝説はにわかには信じがたい。「本当にその場で書いていますよ(笑)。だから書けない日も時にはあるんです。大抵は役者が現場に着くころにはほとんど書き上がっていますが、書けない時はモリが泊まっているゲストハウスの部屋にホン監督がパソコンを持ってこもり、しばらく出てこないことも。そんな時、僕ら俳優部はゆっくりとコーヒーを飲んで待っていました」と、劇中のみならず現場にもゆったりとした時間が流れていたようだ。


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(C)2014 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.
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ホン監督は、「起こったことは受け入れる人」だという。「例えば雨が降ってきたら、状況が変わるので脚本も変わる。ロケ地に行って人がいなかったら仕方ないし、失敗して転んでも仕方ない。偶然に起きたことも、起こったことは全て受け入れるんです」と決めたことに固執しない。それは、「とてもおもしろい映画作りの方法だと思います。だいたいいつもスタッフは10人以下で、4人くらいの時もある。撮影期間も約1週間。今回はたまたま僕が外国の人で、英語で脚本を書かなくちゃいけない手間があったので2週間だったのですが、少ない人数で1週間。それであれだけ面白いものを作る。改めてすごい人です。誰にも真似できないと思います」と敬愛している。

そんな風に、“生モノ”ならではの面白みを追求してきたホン監督。監督が抱えるプレッシャーはもちろん計り知れないが、俳優部への負担も少なくはない。「監督自身が自分に課していることが、とても勇気のいることです。そこまで監督がしているから、僕ら役者も30分でセリフを覚えて撮影に臨みたいと思う。監督はいつも演技の前に、『Let's see what happen』と言うんです。『これから何が起こるかみんなで見てみよう』ということなのですが、きっとそうやって毎日発見をしていきたいんだと思います。映画作りの過程の中で何も発見がなければ、作っている意味なんてないんです」。

ホン監督の映画は、見ればそれがホン監督の作品であるとすぐにわかる。それは、映画監督としての作家性であり、唯一無二の“武器”である。加瀬は、「世界中に変な映画ってたくさんあるわけです。よく『で、答えは何? どんな意味なの?』って 言う人がいるけれど、ひとつの正解の“答え”なんて映画にないと思います。今はひとつの答えに向けて、“答え合わせ”をするクセがついている印象を受けますが、そういうものを僕は外していきたいんですね。意味がわからない=つまらないっていうのはもったいないですよ。下手するとわからないと怒る人も出てきたりします(笑)。言葉に簡単にできることだったら映画なんかいらないですよ」。

自由が丘で」は12月13日公開。

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