「ザ・レッスン」で長編劇映画デビューを果たした監督が主演女優と語る

2014年11月1日 06:30

ペタル・バルチャノフ監督とマルギタ・ゴシェバ
ペタル・バルチャノフ監督とマルギタ・ゴシェバ

[映画.com ニュース]第27回東京国際映画祭のコンペティション部門に選出された 「ザ・レッスン 授業の代償」は、勤勉な女性教師が金銭トラブルに巻き込まれ、追い込まれていくうちに驚くべき行動に出る――その過程を緊張感たっぷりに描き出した人間ドラマ。これが長編劇映画デビューとなったペタル・バルチャノフ監督が、主演女優のマルギタ・ゴシェバと来日。ふたりに話を聞いた。(取材・構成/稲田隆紀)

――どういう発想やきっかけで、この作品を作ることになったのですか?

ペタル・バルチャノフ監督(以下、バルチャノフ):4、5年前、(もうひとりの監督/脚本/プロデューサー)クリスティナ・グロゼバと、新聞に先生が銀行強盗をしたという記事を見つけました。見出しからイメージがひらめきました。“先生が銀行強盗”という短いセンテンスでしたが、面白いプロットだと思いました。どうしてそんなはめになったのかと、ふたりでディスカッションしながらストーリーを発展させていきました。

――その実在の先生をリサーチしてストーリーに反映させたわけではないのですね。

バルチャノフ:あくまでも新聞の見出しからイメージしたもので、完全にフィクションです。教室の中の生徒のエピソードを盛り込み、先生の行動と対比させるアイデアは早い段階からありました。

――ストーリー作りをする上で、モラルを教えるべき先生がモラルを破るというアイロニーにひかれたわけでしょうか?

バルチャノフ:コメディの要素とドラマの要素を組み合わせていくことが重要でした。ドラマとともにアイロニーがメインになっていて、組み合わせることで観客がもっと身近に感じてくれ、実際の人生に近いものに仕上がってくると考えたのです。

――ふたりで監督をする場合、どういう分担をされているのですか?

バルチャノフ:クリスティーナとは、10年以上前の学生の時から互いにサポートしあってきました。卒業してナショナル・フィルムセンターでコマーシャルをいっしょにつくるなど、共同作業をしてきました。なにより楽しいし、責任を分かち合っているので勇敢な決断ができます。脚本では彼女がリーダーで、撮影に入ると彼女は俳優たちとのコミュニケーションを主にやり、私は撮影監督とのやりとりが多くなります。でも、完全に分けているわけではなく、互いに相談しながら進めます。編集は私が主に進めていますが、彼女のほうで客観的な意見があれば耳を貸します。

――主演にゴシェバさんを起用したのは役柄のイメージですか?

ヴァルチャノフ:もちろんです。彼女がぴったりだと思いました。新聞の見出しを見た直後に彼女の顔が思い出されたほどです。せっかくいいストーリーがあっても、いい俳優が見つからない場合もありますが、この作品は幸いでした。彼女に感謝しています。

――俳優として演じてみてどうでしたか?

マルギタ・ゴシェバ(以下ゴシェバ):銀行強盗をした実際の先生がテレビでインタビューされているのを見たことがあって、しばらく後にこのオファーが来ました。偶然とはいえ、実在のキャラクターを演じるには完璧なシチュエーションなので、嬉しく思いました。監督はふたりとも柔軟で、張り詰めた感じもなく、楽しく演じることができました。

――演じられた役には実在の先生のイメージはどれくらい反映されているのですか?

ゴシェバ:彼女の“仮面”に隠されている部分は、監督と私がつくり上げたものです。インタビューのなかでは彼女は誠実そうで、少なくとも反省していて、自分の行為を恥じているように見えました。規則正しい生活を送っていそうな感じとか、彼女の髪の色とか前髪の感じをこの作品のなかに反映しています。

――教師が銀行強盗をやるというギャップの面白さにひかれたのでしょうか?

ゴシェバ:銀行強盗という、境界線を越える判断をするまでのステップを想像してみると、どこかの時点で彼女は自分自身を罰する行為に出たのだと思い至りました。突然、自分に対してアグレッシブになる。常に即座に判断することを求められ、すべてが崩壊したとき、ベクトルが自分に向いたのです。こうした肉づけは監督と綿密に相談しながら決めていきました。

バルチャノフ:この作品は私たちの3部作の1作目としました。3作とも新聞の見出しからイメージを受けた作品です。システムや社会から抑圧され、不思議な行動をしてしまう人たちを描いていきます。ブルガリアの現状を反映した強いキャラクターですが、目立たない、誰からも気づかれないような人たちです。

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