アルコール依存をリアルに描くポーランド映画監督「老若男女、貧富も関係ないすべての人間の問題」

2014年10月30日 14:55

ボイテク・スマルゾフスキ監督
ボイテク・スマルゾフスキ監督

[映画.com ニュース] 東京・六本木ヒルズで開催中の第27回東京国際映画祭コンペティション部門出品作「マイティ・エンジェル」の上映が10月30日あり、ボイテク・スマルゾフスキ監督とプロデューサーのヤツェック・ジェハックが会見した。

ポーランドの著名作家の小説を原作とする本作は、社会的に成功しているもののアルコール依存から脱却できない作家が主人公。施設に収容され、他の患者たちのエピソードも交えながら依存症に陥る過程や、そこから脱しようと苦しむ人間たちを徹底したリアリズムで描写したドラマ。

2009年の「ダーク・ハウス/暗い家」に続き2度目の東京国際映画祭参加となったスマルゾフスキ監督は、「アルコールの問題はこれまでの自作でサブモチーフとして扱ってきましたが、自分が成熟し、今回この問題を中心に作ってみようと思った。アルコール問題にけりをつけたかったのです。それと同時に、原作の時間の混沌と、アルコールに依存する人間の感覚に興味を持った」と製作のきっかけを明かす。

過度の飲酒がもたらす悪害を容赦なく描写した理由は「この映画は鋭い観察から成り立っており、日本のウィスキーではなく、ポーランドのウォッカのにおいのする作品にしたかった」。そして、「この作品を通し、老若男女、貧富の差も関係なくアルコール問題がすべての人間の問題だとわかった」と話す。さらに「実際の出来事を描いた作品ではなく、作家の頭の中の想像です。そこには作家が青春時代を生きた共産主義時代に根底がある」と説明した。

主演俳優の真に迫った酩酊の演技について問われると「俳優は自分の経験を巧みに応用してくれました。もちろん私も含め現場はしらふでした」と振り返り、「吐瀉物はポーランド料理のえんどう豆のスープと酢漬けのキャベツを混ぜたもの」と細部まで徹底したリアリズムで描いた事を明かした。

東京国際映画祭は10月31日まで開催。

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