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タイ映画「タン・ウォン」コンデート監督、青春映画のかたちを借りて描こうとしたこと

2014年10月29日 13:20

コンデート・ジャトゥランラッサミー監督

コンデート・ジャトゥランラッサミー監督
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優れた映画は掘り下げるほど味が出る。第27回東京国際映画祭で新設されたCROSSCUT ASIAで上映される本作はその好例で、楽しめる青春映画でありながら、タイ人が置かれた状況を端的に示してみせる。その手腕は鮮やかで、観念とは異なるどこまでも現実的な着地点をもつ。優れた短編小説のような味わいの作品を手掛けた、コンデート・ジャトゥランラッサミー監督に早速話を聞いてみた。(取材・構成/赤塚成人)

――映画では、チャットやマンガ、ゲーム、K-POPといったポップカルチャーを積極的に取り上げています。これらを見せようと思った理由は何でしょう?

コンデート・ジャトゥランラッサミー監督(以下、ジャトゥランラッサミー):これはタイ文化とは何かを探る作品です。そこでまず、今の若者がどんなカルチャーで構成されているのかを紹介しようとしました。

──一方で、祠に願掛けする民間信仰を扱っています。タイでは身近な場所に祠があるのでしょうか?

ジャトゥランラッサミー:どの地域コミュニティにも、祠があります。モダンなマンションの入口にも大きさの違いはありますが、祠が据えられている。それはタイ人の自信のなさを表しているのだと思います。タイ人は明日試験を受ける、子どもが入試を迎えるといった時に、お寺や祠にお参りしお供えをします。説明できないものにすがる気持ちがあるからです。そうした部分で精霊信仰が好きなのです。

──タイでも日本でも信仰する気持ちが薄れつつある今、こうした迷信めいた気持ちを描こうと思ったのはなぜでしょう?

ジャトゥランラッサミー:私はタイ人の信仰心は薄れていないと思います。子どもたちは一見無意味なことをやり、信仰心がないように見えますが、目に見えないものを疎んじてはならないと大人に教えられて育っています。生活がいくらモダンになっても、目の前の問題を解決してくれるわけではありません。困難に陥ったときの身近な対処法として精霊信仰が染みついているのです。

──自尊心が傷つきやすい高校生を主役に描いたのは、どんな理由からでしょう?

ジャトゥランラッサミー:私自身、タイ文化を明確に理解しているわけではありません。だから若者も恐らく理解していないに違いないと思います。そして彼らが自信のない出来事に見舞われたとき、どうやって出口を探すのかを基調にストーリーを描きたいと考えました。

──主人公の4人のキャスティングが絶妙でしたね。

ジャトゥランラッサミー:全員素人で、スタッフが街や学校でスカウトした後、オーディションをして選びました。100人のなかから4人選んだのでキャスティングには時間がかかりました。卓球少年のベースを演じたナタシット・コーティマナスワニットは、数年前ミュージックビデオに出演してもらいましたがプロではありません。この演技が認められて賞を受賞してからいろんな仕事が入ってくるようになり、私のことを大変尊敬してくれています(笑)

──爽やかな青春物かと思っていると、政治の話が出てきて、ペースは争乱に巻き込まれます。

ジャトゥランラッサミー:若者の青春映画に見えて、実は政治の話が入ってくるので、ある意味、観客を騙している気はします。でも大人から次世代まで、実際タイで起きていることの影響を受けているのは事実であり、この国の未来に思いを馳せたい気持ちがありました。ただの仲良しに描かなかった理由もそこにあります。各人が喧嘩して、それぞれの人間関係から飛び出していきます。また願いが叶った御礼にタン・ウォンという伝統舞踊を踊るかりそめのグループができますが、それも壊れて各人の道を歩んでいきます。今のタイでも同じことが起きていて、タイ人はバラバラになっているというメタファーです。

──この作品は、積極的に若者文化を取り上げ、若者たちの成長を描いています。しかしその成長は苦渋の選択ともいえるものです。成長するには痛みを伴うと主張したかったのですか?

ジャトゥランラッサミー:実は、エンディングを自分としてはまとめたくありませんでした。むしろ観客に質問を投げかけたいと思いました。タイ人に観てほしいと願って作った作品であり、タイには希望がなく、未来もないと思ってほしいわけではありません。ただ明日どうすべきなのか疑問を投げかけようとしました。その試みはある程度成功したのではないかと思います。

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