大島優子が“演じる”ことでこじ開けた、さらなる冒険の幕開け

2012年7月20日 22:00


「メリダとおそろしの森」日本語吹き替え版を担当した 大島優子
「メリダとおそろしの森」日本語吹き替え版を担当した 大島優子

[映画.com ニュース] 国民的人気グループ「AKB48」の中心メンバーとしての活躍はもちろん、最近はドラマ、映画と幅広く女優業にも挑んでいる大島優子が、ディズニー/ピクサーの最新作「メリダとおそろしの森」日本語吹き替え版でタイトルロールを演じ、ハリウッド作品に初参加。これまでのディズニープリンセスとは一線を画す、快活で自由奔ぽうなヒロインの冒険と成長を声で表現してみせた。自身も女優として着々と成長するなか、“演じること”への思いを語った。(取材・文/内田涼、写真/片村文人)

映画は中世スコットランドを舞台に、自由を愛する王女メリダが、家族や王国をも脅かす“精霊の森の魔法”と立ち向かう冒険ファンタジー。声優挑戦は2度目だが、主役級のキャラクターを演じるのは今回が初めてで「ピクサーの作品は『トイ・ストーリー』シリーズをはじめ、どれも大好きでしたし、演じる前はワクワクすると同時にとても緊張したんです。観客の皆さんに『メリダにピッタリ』と思ってもらえるかなって……」。実際、マイクに向かうと「やっぱり声だけで表現するのは難しい。ひとつのセリフで10回、20回とテイクを重ねることもありましたね。今回はとにかく、はっきりとセリフをしゃべることを意識させられました」と苦労も多かったという。

それでも「メリダが本当に表情豊かなので、その点はとても助けられました。ふだんの声のトーンに比べて、より抑揚をつけることができたし、だんだんメリダになりきることが楽しくなりました」と躍動感あふれるメリダと寄り添いながら、大島流に“役作り”は進んだようだ。

物語の大きな軸となるのが、自分らしく生きることを望むメリダと、彼女の将来を心配し“王女にふさわしい言動”を求める母親・エリノア王妃の関係性だ。「王女たるもの、こうじゃなくちゃいけないと言われるメリダの気持ちは、すごくすごく理解できますね」と大島。日本中、いや今や世界中のファンから熱い視線を浴びる存在となった現状に対し、「私自身も“大島優子たるもの”“AKB48たるもの”“総選挙第1位たるもの”っていう周囲の目っていうのは、意識していないつもりでも、心のどこかで意識してしまう。もちろん、私にとってAKB48のメンバーでいることは、何よりも大切なことですけどね」と率直に語る。「本当の自分はもっと自由奔ぽうで、本当にメリダみたい。自然や動物が大好きだし、服がちょっと汚れるくらい全然気にしませんから」

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両親が勝手に進める縁談に嫌気がさし、禁断の魔法に思いを託してしまうメリダ。その直後、最愛の母親に思わぬ事態が巻き起こってしまう。恐ろしい呪いを解くために、メリダは家族とのきずなを取り戻そうと、新たな試練と向き合う……。「私は家族が大好きだし、仲もいいんですよ。だからこそ、お母さんに反発してしまうメリダの気持ちもわかる気がしますね。うちの場合はどちらかといえば、お父さんのほうが『もっと女の子らしくしろ』って小言が多いですけど(笑)」。本作を通して、家族への愛を改めて考えたといい「ほかの誰が何と言おうと、私は親が言うことが一番だと思います」と離れて暮らす最愛の人への思いを明かす。

本作は主人公・メリダ自身の成長物語でもあり、「成長を実感することですか? 最近、やっと気持ちに余裕が出てきましたね。いま思うと、10代後半のときは、本当に余裕がなかったなって……。メリダもきっと同じですよね。少女から大人になる狭間で、周りの意見よりも自分の主張を第一に考える。まだ『自分は子ども』と思っていても、周りからは『もう大人だ』って言われちゃう。そのギャップがなかなか埋まらなかったです」と振り返る。

本作に続き、山田孝之の主演映画「闇金ウシジマくん」では借金返済に苦しむヒロインを熱演。女優として、さらなる飛躍が期待される一方、周囲が抱く“アイドル”大島優子へのイメージとの差には少なからず葛藤もあるという。「私にとっては、どちらも大切なステージ。だからこそ、女優として演技するときは、AKB48とはまた違った自分を全面に出せるように努力しています。特に今回はメリダという、とても共感できるキャラクターを演じたおかげで、今後もっともっと演技を通して、本当の自分を解放させてみたいなって強く思いましたね。いろんなチャレンジができそうだなって」

今年6月6日に東京・日本武道館で行われた「第4回AKB48選抜総選挙」では、昨年2位の雪辱を果たし、第2回(2010年)以来のトップ返り咲きで“センター”を奪取した。約1万人のファンを前に「この景色をもう一度見たかった」と喜びを爆発させたのは、記憶に新しいところ。今後も怒涛(どとう)の快進撃が続きそうだが、大島自身の目の前にはどんな“景色”が広がっているのか?

「正直、何も見えていないですね。でも、何も見えていないのが逆にいいかなって。女優としても、AKB48としてもチャレンジしたいことは数えきれないくらいあるんですが、それが自分にできるのか、ファンの皆さんに求められているのかもわからない。だからこそ、目の前のことを一生懸命やるのみ! そういう気持ちですね」。そう宣言する姿に、勇気を胸に自らの運命を切り開こうとするメリダを重ねずにはいられない。女優・大島優子のさらなる“冒険”が「メリダとおそろしの森」で幕を開けようとしている。

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