ソ連の圧力に屈した「氷雪の門」36年越しの公開で、悲劇のヒロインが吐露

2010年8月21日 17:01


36年越しの悲願がよくやく実現
36年越しの悲願がよくやく実現

[映画.com ニュース] 終戦の混乱時、樺太で散った電話交換嬢 9人の悲劇を描いた「樺太 1945年夏 氷雪の門」のトークイベントが8月20日、東京・シアターN渋谷で行われ、主演の二木てるみ木内みどりが撮影当時の思い出を語った。

74年に製作された同作は、ソビエト連邦軍が「日ソ不可侵条約」を破り上陸した樺太を舞台に、真岡郵便局の電話交換嬢たちが自決用の青酸カリを胸に、決死隊として職務を遂行した姿を描く。「東京犯罪地図」(56)の村山三男監督がメガホンをとったが、ソ連からの圧力で公開中止となった。今回は、助監督を務めた新城卓監督(「俺は、君のためにこそ死ににいく」)の尽力で、自決した交換嬢たちの命日にあたるこの日、36年越しでの劇場公開が実現した。

主人公の班長・関根律子を演じた二木は、「オトメからだいぶ時間が経ちまして、おばさんになりましたが」と笑いを交えながら挨拶。「懐かしさと同時に、必死になって映画を作り上げたことを思い出した」と神妙な面持ちで語り、「今思えばバカげていることを、当時の彼女たちが信じていたというせつなさが伝われば。今を生きる人には理解できないかもしれない。だからこそ、上映中止も含めて『じゃあ、なぜだったの?』と理不尽を教材に考えてほしい」と訴えかけた。

木内は、「当時は戦争のことなど考えず、ひとつの仕事としてひたすらやった。むしろお蔵入りと聞いて、驚いたことが印象に残っている」と述懐。久しぶりに鑑賞したのを機に「改めて、戦争について自分の頭と心で考えてみた。遅まきながら、国を愛することや守ること、子どもたちの将来について思いをめぐらせている」。また、「今も(戦争)当時も実はあまり変わっていない。総理大臣がコロコロ変わるような状況も、責任のかけらはみんなの中にあると思う。無関心だけはやめようと言いたい」と熱っぽく語った。

客席で上映を見守った新城監督も、急きょ登壇し「大ヒットするような作品ではありませんが、ぜひ多くの人に伝われば幸い」と感無量の面持ち。二木は、「当時のスタッフはほとんどが他界している。残された私たちには、この作品に込められた思いを伝える義務があると思う」と力説した。

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