新たな女性社会派監督の誕生「フローズン・リバー」コートニー・ハント監督

2010年1月29日 17:34


アメリカ社会への鋭い批判に注目
アメリカ社会への鋭い批判に注目

[映画.com ニュース] 08年のサンダンス映画祭でグランプリに輝き、同年のアカデミー賞でも脚本賞と主演女優賞にノミネートされるなど、多くの映画祭で話題を集めた女性監督コートニー・ハントの長編デビュー作「フローズン・リバー」が、1月30日より公開される。ニューヨーク州北部に暮らす白人女性が貧しさから、ネイティブ・アメリカンの女性と組んで不法入国斡旋ビジネスに手を染めていく姿を描いた社会派サスペンスドラマである。

「私の夫がニューヨーク州の北部、カナダとの国境の小さな村出身で、そこの近くのモホークの保留地にいる人たちが、凍った川を渡って、いろいろなものを密輸しているという話を聞いたのが、この映画を作る最初のきっかけでした。川を越えるということに何かとても惹かれるものがあったんです。ドキュメンタリーとして作ることも考えたのですが、“なぜ女性がこういった危険を冒すのか”という心理を描けるフィクションにした方がより深く掘り下げられると思い、フィクションとして作りました」

当初は短編として製作し、のちに長編としてリメイクした。短編がニューヨーク映画祭に出品・上映されたことが、大きな励みとなり、長編の製作を決意したという。

「自分のアイデアが観客の中で響くものがあるのかもしれないという自信になったんですね。早速、短編に出演してくれたメリッサ・レオミスティ・アップハムのことを考えながら脚本にとりかかりました。ただ、資金調達がやはり大変で、全体で1年くらいかかりましたね。もちろんハリウッド・メジャーは全く興味を持ってくれなくて、創作とか撮影とか、そういったこと以上に苦しみましたね」

子供の頃に母親に連れられて見たベルイマン、トリュフォー、フェリーニ、黒澤といった巨匠たちの名作の影響で映画監督を志したと語るハント監督。それだけに、アメコミを映画化した大作だけに注目が集まる現在の米映画界に危機感を抱いている。

「今のアメリカ人はシネマというよりはイベントを見に行っているのです。『ダークナイト』『スター・ウォーズ』、そして『アバター』というイベント・ムービーですね。なので、とても哀しいことですが、ゆくゆくは誰もがホームシアターで、イベント・ムービー以外の映画を見るということになるかもしれません。とはいえ、優れた脚本の質の高い作品はあるわけで、そういった映画はやはり残っていくと思いたいですが」

キャスリン・ビグロージェームズ・マンゴールドを輩出した名門・米コロンビア大学のフィルムスクール出身。在籍中は「タクシードライバー」「レイジング・ブル」の脚本や「白い刻印」の監督としても知られるポール・シュレーダーに師事した。

「ポールは何に対しても正直な人で、辛辣なことでも何でも口に出してしまう人なんだけど、この映画をすごく気に入ってくれたみたいです。卒業後、初めて会ったときに、映画については何も話してくれませんでしたが、ギュッと抱きしめてくれました。私のことを誇りに思ってくれていることはよく伝わりましたね(笑)」

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