ある日系人画家の数奇な人生。「ミリキタニの猫」監督に聞く

2007年9月5日 12:00


「ミリキタニの猫」リンダ・ハッテンドーフ監督
「ミリキタニの猫」リンダ・ハッテンドーフ監督

[映画.com ニュース] 米国に生まれ広島で育ったジミー・ミリキタニ(三力谷)は、画家を志し青年期に再び渡米したところ第2次大戦が勃発し、米国籍を持っていたが日系人であるがゆえに強制収容所に送られ、市民権も剥奪された。戦後各地を転々としていた彼は、いつしかニューヨークの路上で絵を描きながら暮らすようになる。そして01年9月11日、瓦解する世界貿易センタービルの粉塵が舞う中でも、ひとり絵を描き続けていた……。

自由と平和を希求する画家ジミー・ミリキタニ。今年で87歳を迎えた彼の人生を追ったドキュメンタリー映画「ミリキタニの猫」のリンダ・ハッテンドーフ監督に話を聞いた。

監督とジミーの出会いは偶然だったという。「最初に彼に会った時、猫の絵をくれて、その代わりに“写真を撮ってくれ”と言うので、私は翌日ビデオカメラを持っていきました。“あなたの絵について、何かしゃべってください”と言ったら、どんどん話をしてくれるようになり、やがて彼が、何か記録すべき重要な背景を持っている人だと分かったのです」

そうして監督とジミーの親交が深まる中で起こった9・11テロ。リンダは住む家のないジミーを自宅に招き入れる。「最初は“路上アーティストの四季”みたいな話を撮ろうと思っていたのですが、ここで作品は違った流れになりました。何よりも彼を心配するその心こそが、この映画には大切でした」

ジミーは、当初は拒んでいたリンダの助力を次第に受け入れるようになり、市民権の回復や老人ホームへの入居、収容所跡地への再訪、生き別れていた姉との再会など、80歳を過ぎて新たな人生が開けていく。以前は収容所や原爆で焼かれた広島の街の絵を描き続けていたジミーだが、監督曰く「収容所跡地への“巡礼”が終わった後、彼が描く収容所の絵からはフェンスはなくなり、ゲートは開かれ、常に描かれていた彼自身が描かれなくなりました」とのこと。「この映画を見る人には、あれだけの深い傷を抱えた人でも、再び立ち直ることができるという希望を与えたい。そして、こういう事実があったということを頭で考えるのではなく、心でしっかり感じてもらいたいですね」

ミリキタニの猫」は9月8日より公開。

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