「女性ですが凄く面白かった」チェリーボーイズ yukinko-dayoさんの映画レビュー(感想・評価)
女性ですが凄く面白かった
簡単にまとめると、主人公の国森(林遣都)は、自信がないダメ男で、自信を取り戻す為には、脱童貞しかないと思い込んでいる。しかし、彼が自信を取り戻すには、実は必要だったのは脱童貞(やらせてくれる女)ではなく、彼を肯定してくれる友人(男)だった、という話し。
構造的には女をダシにした超ホモソーシャルな世界ですが、嫌悪感は沸きませんでした。
国森が徹頭徹尾情けなくて最低で、ちっぽけでちっぽけな奴で、むしろ、泣けました。国森も自分がちっぽけとわかってる。変わりたいと思ってる。発想と手段は間違ってますが、彼なりに一生懸命。友人二人も彼を支えようとしている。国森視点では青春友情成長ストーリーです。
しかし、ヒロイン笛子(池田エライザ)の最後の言葉に集約されるように、「男だけで盛り上がんな」という冷めた女視点が入っている為、作品全体としては独りよがり感がない。これは脚本のバランスの良さだと思いました。
そして、出てくる女の子達は、通りすがりの名も無きキャラすら、とてもキュート。女性へのリスペクトすら感じる(監督が女性を綺麗に撮ろうとしたと仰っていたが、本当に魅力的)。
そういうわけで、女性が観て、女性だから嫌だった、というのは、私はありませんでした。
一番好きなシーンはラストシーン。劇中、ひっきりなしに目をパチパチしていた国森が、しっかり前を向いている。「俺は人生のステージ上がったぜ」と言わんばかりの顔つき。
でも、はたからすると、変わってない。「変わってねーから!気のせいだから!」と、内心突っ込みまくりました。ここの林遣都の表情が秀逸。絶妙にうざい。髭剃ったのか微妙に小綺麗なのが、またムカつく。上手いです。
バカだなーと笑いながら、バカだなーと泣きました。私はこの作品は好きです。
最後に見逃して欲しくない、と思った箇所を一つ。国森がスマホを操作するシーン。検索サイトを開いたら、すぐ検索第一候補に「国森信一」と出る。何度も自分の名前を検索してきたのだとわかり、国森の孤独と絶望を感じて胸に来ました。もちろんヒット数はゼロです。遣る瀬無い!