劇場公開日 2017年11月25日

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「地獄の花嫁冷土より来たる」ゴースト・ブライド 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0地獄の花嫁冷土より来たる

2017年12月16日
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鑑賞方法:映画館

怖い

ロシア産の幽霊ホラーが珍しく劇場公開。
ネットで海外予告を漁っている時に目に留まった作品だが、
ギリギリ射程範囲内の映画館で上映してたので鑑賞。

たぶんロシア製ホラーを観るのは自分は初めてかも。
いや、ロシア映画自体、最後に観たのはいつだったか……
……『ナイトウォッチ』以来? え、もう13年前なの?
嘘ッ! うわっ、怖ッ!!(そこで怖がるな)

そんなわけで自分はロシアンホラーの特徴なんて
語れないのだが、本作に限っての印象としては、
『インシディアス』以降の欧米の心霊ゴシックホラー
(『死霊館』『ウーマン・イン・ブラック』等)
にかなり雰囲気が近い印象。というより、
本作は多分それらを意識してるのだろうと感じる。

...

写真が発明されて間も無い頃、ヨーロッパを中心に
『遺体記念写真』というものが流行したそうだが、
本作は『遺体を撮った銀板写真にはその人の魂が
保存される』という言い伝えを発端とした怪奇譚。

19世紀。若くして死んだ妻のことを
諦めきれず、とある禁忌を犯した男。
時は流れて現代。婚約者の家族に会うために、
人里離れた古い邸を訪れた女子大生ナスチャ。
言うまでもなく婚約者の家族には呪われた歴史があり、
ナスチャはその歴史にまつわる怪異に襲われる。

...

本作には良い意味での“土臭さ”がある。
アラン・ポー作品や、スティーヴン・キングの
『ペット・セマタリー』を彷彿とさせるような、
暗く閉鎖的な、古く湿った土と死の臭い。

恐怖演出も悪くない。
心霊ホラーとしての恐怖度は中の中の上といった所。
初っ端、花嫁衣装の遺体を撮影するシーンが怖い。
瞼に描かれた瞳の異様さ……
何度固定してもガクリと下を俯く頭……

残念ながら恐怖のピークはそこだったりするのだが、
中盤から登場する土気色の不気味な“怪異”の
ビジュアルはなかなかだし、過去のフラッシュバック
で登場する恐怖シーンはJホラー的要素もあって良い
(Jホラーのハリウッドリメイク流行以降の
 欧米ホラー的、と書いた方が正確かしら)。
婚約者の家族やその周囲の人々の閉鎖的な雰囲気、
それこそロシアらしさを感じる寒々とした空気も良い良い。

...

ただ最初に書いた通り、
本作は全体的に欧米のゴシックホラーに似ている。
先述の遺体撮影のシーンやあの“怪異”の風貌も
恐ろしくはあるが、演出自体には過去の欧米
ホラー作で観たようなデジャヴを覚えてしまい、
オリジナリティを感じられなかったのが残念。

クライマックスの間延び感もよろしくなく、
アイツなんでチマチマした襲撃しかしないの?とか、
あんた最後壁壊しまくってただけだったな!とか、
ナスチャさん○○をさっさと壊しなさいよ!とか
(ラストで「言わんこっちゃない!」と思った)、
肝心の終盤で結構もたついてしまった感がある。

それにあの終盤の展開だと「それができるなら例の
儀式も必要無かったんじゃ……」と思っちゃったり。
そもそもあんな恐ろしい効果のある儀式が、
あんな簡単な方法で出来ちゃうもんなのかね……。

...

という訳で、評価としてはまあまあの3.0判定。
空気感や閉鎖的な雰囲気は悪くないが、
もう少し独自性が欲しかったかな。

<2017.12.02鑑賞>
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余談:
「結婚は花嫁にとって葬儀と同じ」
という台詞が興味深い。映画で登場する
演出にもそのまま繋がってるし。
この辺りがロシア的価値観なのかしらねえ
(日本とかでも同じ考えの人はいるだろうけど)。
いやーそう考えると結婚て恐ろしいですね。
ロシアだけに、ロシアの結婚恐ろ(座布団没収)

浮遊きびなご