婚約者の友人 : 映画評論・批評

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婚約者の友人

劇場公開日 2017年10月21日
2017年10月3日更新 2017年10月21日よりシネスイッチ銀座ほかにてロードショー

戦争を背景にオゾン流ミステリーと恋愛ドラマが交差

フランソワ・オゾンが初めて戦争を題材にした本作は、エルンスト・ルビッチが1932年に映画化したBroken Lullabyと同じ戯曲を元にしているものの、ほとんど別物と言っていいだろう。ドイツ出身のルビッチがフランス人の青年の視点から描いたのに引き換え、オゾンは恋人を失ったドイツ人女性の立場から描き、後半も大胆に書き変えているからだ。それぞれが他国のキャラクターに寄っているのが面白いが、オゾン版は残された婚約者の視点に添うことで、ミステリーと恋愛ドラマの要素を膨らませている。

第一次大戦の傷跡が色濃く残るドイツの田舎町で、身寄りのないアンナ(パウラ・ベーア)は、亡き婚約者フランツの両親と暮らしていた。ある日フランツの墓で見かけた、見知らぬ男が訊ねてくる。アドリアン(ピエール・ニネ)と名乗るこのフランス人は、フランツが戦前パリに留学していたときの友人だという。彼がためらいがちに語るフランツの思い出に、癒される家族たち。だがその気持ちがアンナのなかで次第に恋愛感情に変わる頃、アドリアンの秘密が明かされる。

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初めてといえば、モノクロの映像もオゾン映画では新鮮である。尤も、時代ものだからと全編をモノクロで通すのではなく、ヒロインの心情に従ってときおりカラーに変化させる手管が心憎い。アンナがアドリアンと散歩をしながら語り合うとき、洞窟を抜けて湖に出るとともに、あたかも彼らが新世界に足を踏み入れたかのように色彩がふたりを包む。水に濡れたアドリアンの裸体から立ちのぼるそこはかとない色気に、アンナが忘れていた感情を取り戻していくさまが胸を震わせる。

ヒロインの視点に立つことでもうひとつオゾンが実践しているのは、フランスを客観的に捕らえることだ。とくにパリを訪れたアンナが、レストランでフランス人が国家を合唱するのに遭遇する場面には、さりげなく国粋主義への批判が滲む。実際本作はオゾンのフィルモグラフィーのなかで、もっとも社会的なメッセージが込められた作品でもある。若きフランツもアドリアンも、そしてもちろんアンナも、戦争がなければその運命はまったく変わっていただろう。そんな思いをミステリーのなかに託し、あくまで上品に、情感豊かに描き出すのがこの監督らしい。瑞々しくも、風格溢れる傑作。

佐藤久理子

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