女の一生 : 映画評論・批評

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女の一生

劇場公開日 2017年12月9日
2017年11月28日更新 2017年12月9日より岩波ホールほかにてロードショー

古典らしからぬ清新さ 現代と通じる醜い世界への静かでしぶとい抵抗の姿勢

1883年に刊行されたフランス自然主義文学の古典を映画化。そう聞いて思い浮かべるかび臭さや古めかしさをまんまとうっちゃる清新さでステファヌ・ブリゼ監督版「女の一生」はするりと現代の、とりわけ女性観客の胸にすべり込んでくるだろう。

これみよがしの新しさをふりかざすわけではない。今では稀な1.33:1のスタンダード・サイズで撮られた映画はむしろ、四角く狭いフレームの端正さの中に“古風”な人生を囲い込む。19世紀ノルマンディの貴族の娘ジャンヌの、予め定められた枠を抜け出せない不幸と不運と不自由が目を撃つ。

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修道院で教育を受け無邪気に理想の世界を思い描いていたヒロイン。彼女が愛する夫に息子に、あるいは親友と信じた乳姉妹や伯爵夫人、さらには母の過去にも裏切られ、それでもどこか夢見る子供のままに人を疑うことをせず、生の行路を全うする姿。それは一見、いかにも受身で古めかしく、ああそういう時代もあったのかと、遠くの景色を眺めるように呟いてみたくなったりもする。が、自分から何かを変えようと動くわけではないとしても、酷くて醜い世界に器用に順応することは退けて、正しい心で持ちこたえていこうとするヒロインの、静かでしぶとい抵抗(とみえない抵抗)の姿勢は現代を生きるちっぽけな存在とも通じるものとして、じわじわと迫ってくる。

前作「ティエリー・トグルドーの憂鬱」で監督ブリゼは保身を捨て、漸く手にした仕事を手放し、そうすることで人としての尊厳を守るひとりを差し出した。世知辛い21世紀の現実をそうやってなんとか持ちこたえたトグルドー氏の世界とジャンヌのそれとはそう隔たってはいない。あくまでジャンヌの眼差しを芯に世界を切り取って原作とはまた別の、より親密な時空を獲得してみせる監督は、時を自在に飛ばしもする。冬の荒海をみつめるひとりの生を支える春の日の柔らかな光の記憶。それを繰り返し召喚して人生を耐える存在の近しさ、愛おしさ。常にそちら側の人を描いてきたという監督が選んだ主演女優ジュディット・シムラの、かそけくいとけない佇まいも効いている。

川口敦子

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4.1 4.1 (全3件)
  • 全てはラストへとつながって行く 様々な苦難が起こる中で、ラスト、主人公の乳姉妹ロザリーが口にした言葉に救われ、勇気を貰った気がしました。 脇役ではありますが、ロザリーという人物にとても惹かれました。 ...続きを読む

    ひで3 ひで3さん  2017年12月8日 20:14  評価:4.5
    このレビューに共感した/0人
  • 一人称映画 ある女の愛の遍歴 電気の無い時代の物語なので、夜は暗いです。 基本、灯りはロウソクか暖炉の炎。 寝室のシーンでは、オレンジ色の光に照らされた主人公の鼻の形から「ああ、こっち向きに寝ているのね。」と推測して見ていま... ...続きを読む

    shiron shironさん  2017年12月7日 08:46  評価:5.0
    このレビューに共感した/0人
  • 現代に蘇る古典の世界 モーパッサンの有名な古典作品の実写化は、北フランスノルマンディの美しい自然が心に残ります。 繰り返す四季のなか、ひとりの女性の胸躍り溌剌と過ごした時間、裏切られ絶望しそれでも前を向いて生きる姿... ...続きを読む

    ちゅうみぃ ちゅうみぃさん  2017年12月7日 05:13  評価:3.0
    このレビューに共感した/0人
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