劇場公開日 2018年2月3日

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「心に残る佳作」blank13 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0心に残る佳作

2018年3月22日
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鑑賞方法:映画館

幸せ

悲しい

 昔、かぐや姫というフォークグループが「赤ちょうちん」という歌を歌っていた。その2番に「生きてることはただそれだけで哀しいことだと知りました」という歌詞がある。

 リリー・フランキーが父親、神野三鈴が母親、斎藤工が長男で高橋一生が次男という4人家族。
 人は往々にして準備も稽古も不足のまま子供を作る。子供は目的があって生まれてくる訳ではない。サルトルが言うように、人間は職人の頭の中にあるペーパーナイフではないのだ。
 生きることは苦しむことだから、人間は基本的に不幸である。人生は苦痛と恐怖に満ちているのだ。人間が生きているのは苦痛と恐怖を愛しているからだと、ドストエフスキーは看破する。

 本作品の登場人物はいずれも不幸な人々である。不幸であることを前提に、日々の小さな幸せに縋りつきながら生きている。しかし彼らは言う。自分は幸せだと。この世界観は素晴らしい。
 リリー・フランキーや高橋一生が時折見せる笑顔は、小さな幸せを上手に演技している。斎藤工の演出も世界観をうまく表現している。
 小品だが心に残る佳作である。

耶馬英彦