女神の見えざる手 : 映画評論・批評

女神の見えざる手

劇場公開日 2017年10月20日
2017年10月10日更新 2017年10月20日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

策士チャステインが仕掛ける怒濤の展開に息を呑む社会派サスペンス

ラスベガスで史上最悪の銃乱射事件が起きた今月、図らずもタイムリーな日本公開となってしまった「女神の見えざる手」。大勢の命が奪われる悲劇を繰り返しながら、なぜアメリカで銃規制がなかなか進まないのか、その内実に迫るジャーナリスティックな側面もあるサスペンスドラマだ。

特定の団体の利益をはかるため、議員に働きかけて議会での立法活動に影響を与え、さらにマスコミや世論も動かすロビイスト。ジェシカ・チャステインが扮するエリザベス・スローンは、ワシントンで名の知られた敏腕ロビイストだが、所属する大手ロビー会社が銃擁護派団体と組むことに反発。部下4人を引き連れて小さなロビー会社に移籍し、銃規制法案を可決させるべく奔走する。

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クールなチャステインが問答無用にかっこいい。彼女の代表作「ゼロ・ダーク・サーティ」で演じたCIA分析官と同様、男性優位の社会にあって媚びず甘えず、強靭な信念で職務を全うしようとする。ダーク系のファッションと高いヒール、赤い口紅に黒のネイルは戦う女性の象徴だが、すり減らした神経ともろい心を守る鎧にも見える。実際、古巣のロビー会社から不正疑惑や私生活での問題を突きつけられ、銃擁護派議員が議長を務める聴聞会で窮地に追い込まれてしまう。

脚本術を独学で学んだ元弁護士のジョナサン・ペレラが、不正行為で逮捕された共和党系ロビイスト、ジャック・エイブラモフのインタビューを見たことで着想を得て、初めて執筆したのが本作のシナリオ。これが製作会社を経て「恋におちたシェイクスピア」のジョン・マッデン監督に渡り、わずか1年で完成に至ったという。エリザベスが聴聞会に臨むシークエンスから幕を開け、過去の彼女の仕事ぶり、銃規制法案をめぐる攻防と行き来する構成は、緻密な組み立てと衝撃的な展開の連続で飽きさせない。ちなみに、ヒントになったエイブラモフの事件はケビン・スペイシー主演の「ロビイストの陰謀」で実録映画化されており、政治の裏側での駆け引きに関心を持った人は併せて観ると理解が深まるだろう。

高森郁哉

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