劇場公開日 2018年1月5日

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嘘八百 : インタビュー

2018年1月5日更新
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中井貴一&佐々木蔵之介&友近“全員主役”になって作り上げた味わい深いコメディ

中井貴一佐々木蔵之介がダブル主演を務めたコメディ「嘘八百」が1月5日に公開される。共演にはお笑い芸人の友近、若手女優・森川葵、そして坂田利夫寺田農芦屋小雁近藤正臣ら芸達者なベテラン勢。劇中では出演者全員が絶妙な存在感を放ち、中井は「全員が主役の映画」と自信をのぞかせる。誰ひとり欠けても成立しない、「全員が混然一体と溶け合った」味わい深いコメディが完成した。(取材・文/編集部、写真/根田拓也)

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日本アカデミー賞で優秀作品賞と最優秀脚本賞を受賞した「百円の恋」の監督・武正晴と脚本・足立紳が再タッグを組み、共同脚本としてNHK連続テレビ小説などを手がける今井雅子が参加した痛快エンタテインメント。大阪・堺を舞台に、イカサマ古物商の小池則夫と落ちぶれた陶芸家の野田佐輔が、「千利休の幻の茶器」という真っ赤な嘘を仕立て上げ、一攫千金を狙うさまを描く。中井が小池、佐々木が野田に扮し、友近が野田の妻・康子を演じた。

撮影期間は16日。「ひとつでも撮りこぼしたら終わらない」過密スケジュールだったが、悪いことばかりではなかったという。中井は「あの慌ただしさと必死な感じが、この映画にぴったり合っていた。ゆとりをもって撮影していたら、こういう映画にはならなかったのかもしれないと思うほどに、題材と現場の波長が合っていた。全員が馴れ合いではなく、刺激し合いながら楽しい時間を過ごせた、それが『嘘八百』の現場でした」と振り返る。

もちろん苦労もあった。佐々木は、「僕は陶芸をやらなければいけなかったのですが、撮影期間が短い分、段取りが細かく決まっていたので『この短時間のなかで、これをやり抜かなければいけないのか』という瞬間がありました。練習では、何度か土をこねて、30分ほど経ってようやく『こうすればうまく菊練りができる』とわかるのですが、撮影ではそれをすぐにやらなければならない。そうなると難しく、プレッシャーがありました」と明かす。

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そうした“短期決戦”の撮影ながら、友近曰く、現場の空気は「あんなにゆっくり時間が流れている穏やかな現場は初めて。大好きな空気でした。『現場に行ったらこの人と会えるんや』って思わせてくれる人ばかり。中井貴一さん、蔵之介さん、そして小雁さんや坂田師匠に会えるって、ずっとニヤニヤしていました」。とりわけ“いい味”を出していたのは、やはりベテラン勢だったそうで、「おっちゃんが大好き」だという友近は、「私は自分からおっちゃんやおじいちゃんを探しにいくタイプですが、この現場は探さないでもセッティングされていたので最高でした(笑)」とラブコールが止まらない。

大先輩の存在は主演2人にとっても大きかった。中井は「僕らも友近さんも、もう先輩という立場。先輩になってみて初めて先輩のありがたみがわかるんです。『ああ、先輩の存在感はこんなにありがたいものだったのか!』と。先輩方が心の支えとしていてくださることで、時間の過ごし方に余裕が生まれるんです」としみじみ語る。

佐々木「心のゆとりですね」

中井「先輩方がいなかったら、こういった現場には絶対にならなかった」

友近「絶対! そう思いますね」

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ダブル主演の中井と佐々木は、意外にも本格的な共演は本作が初めて。互いの印象を問うと、中井は「印象とか、そういうことすら考えないでよかった。蔵之介くんは、気張って『何かしなくては』と考えさせない人。お互いの役が溶け込み合って、ひとつの映画になっていくような。砂糖とミルクがコーヒーに入れた瞬間混ざり合うみたいな状態だった」と噛み締める。

一方の佐々木も、「空気感、2人の関係性や距離感を、芝居をしながらわかり合っている感じがしました。後輩の僕が言うのはおこがましいですが、芝居の最中に『今の間はいただきですよね。この空気を引っ張りながら次のセリフで落したらいいですね』みたいなことを感じながらやれたので、楽しかったです。単純に楽しいだけでなく、緊張感、探り合いを楽しめる現場でしたね」と同調する。

中井「蔵之介くんだけではなく、今回『嘘八百』というコーヒーのなかに、いろんなものを入れたのだと思う。それが混然一体と溶け合っている。誰もはみ出ることなく溶け込んでいるという状態に、このチームはなれたのだと思います」

インタビュー前に行われた完成披露試写会には、幅広い年齢層の観客が足を運び、20代の若者、40~50代の女性、中年男性の姿も見られた。友近は「デビューした時から、同世代はもちろん、50代、60代の方にも笑いを提供したいと思っていました。人生を重ねているので目が肥えているし、人との距離感も分かっている。この作品はそういった年齢層の方に喜んでもらえるんじゃないか」と笑みをこぼす。

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佐々木「この作品には、ダメな男が2人出てきます。若者が少々恋愛でくじけたとかではなくて、長いことこじらせたおっさんと、泣くにも泣けないようなおっさんが出会って、一発逆転目指して奮闘する。それがおっさん世代の人へのエールになるし、若い人らにも『こんなおっさんでも頑張れるんだ』というエールになるのではないか。家族で見ていただける映画になればいいなと思っています」

中井「今、映画館に行くと学生服を着た若い男女の話が圧倒的に多いですが、本当はいろんな世代が見られるものを提供しなければならない。そういった意味で、幅広い世代が見られる映画のひとつとして、『嘘八百』が存在してくれればいいなと思っています。僕らより上の世代の方にも、映画館に行く習慣を忘れないでいてもらいたい」

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