フリー・ファイヤー : 映画評論・批評

フリー・ファイヤー

劇場公開日 2017年4月29日
2017年4月18日更新 2017年4月29日より新宿武蔵野館ほかにてロードショー

殺すことも死ぬこともできない男女10人の密室バトルを描いた異色の銃撃戦映画

かつて銃撃戦はアクション映画の華やかな呼び物だった。洋画ファンはクリント・イーストウッドチャールズ・ブロンソンらが渋いポーズで銃を構えるポスターに見惚れ、期待をふくらませて映画館に通った。ところが1980年代以降にSFXやらCGやらが発達し、あらゆる壮大なスケールの天変地異さえも映像化可能な時代が到来すると、いつの間にか銃撃戦はアクション映画の刺身のツマのようになってしまった。

ハイ・ライズ」のイギリス人監督ベン・ウィートリーがそうした風潮に義憤を抱いたかどうかは不明だが、彼の新作「フリー・ファイヤー」は今どき珍しい本格的な“銃撃戦映画”である。とある夜、廃工場にアイリッシュ系ギャングと武器商人の一味が集結。大量の銃器取引が成立しかけたところで思わぬイザコザが勃発し、怒濤の銃撃戦になだれ込むという物語だ。わざわざ時代背景を映画史上における銃撃戦の全盛期たる1970年代に設定した点にもウィートリー監督のこだわりが感じられる。

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それにしても全編の約2/3を銃撃戦が占めるボリュームは尋常ではない。しかもこれは銃撃戦を格好良く見せる映画ではなく、スタイリッシュとは真逆の泥臭い仕上がりだ。女性ひとりを含む登場人物10人はふたつの陣営に分かれて闘うものの、お互いまったく統制がとれておらず、銃弾がアナーキーに飛び交う廃工場はたちまちカオスと化す。10~20メートルの距離でいくら撃ち合ってもこめかみや心臓には当たらず、傷つけられるのは肩や脇腹や太股といった中途半端な部位ばかり。呻き声を漏らしながら地べたを這い回る登場人物たちは、それでも撃って撃ちまくり、果てしない長期戦を余儀なくされていく。

実際に銃撃戦が起こっても人は簡単に死なないし、殺すこともできやしない。ある意味、そんなドライな“リアリズム”が貫かれた本作は、今をときめくオスカー女優ブリー・ラーソンと曲者俳優たちが結集した豪華キャスト映画でもある。もっとプロットにひねりがほしいとか突っ込みどころはいろいろあるが、ほぼ小銃だけで10人が破滅していくという何もかも非生産的な修羅場を描ききった力業には脱帽せざるをえない。銃撃戦映画の博物館に飾りたい怪作である。

高橋諭治

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