劇場公開日 2017年9月23日

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ナミヤ雑貨店の奇蹟 : インタビュー

2017年9月11日更新
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山田涼介はジェームズ・ディーンの再来!? 西田敏行が太鼓判を押す理由

ジェームズ・ディーンの出現に近いものを感じる」とは、日本を代表する名優・西田敏行の弁だ。時代を変えた世界的名優と並べられたのは、東野圭吾の同名小説を映画化した「ナミヤ雑貨店の奇蹟」で主演を務めた山田涼介(Hey! Say! JUMP)。大先輩からの惜しみない賛辞に大恐縮する山田だが、西田の言葉通り、今作で俳優としての新たなステージにたどり着いた。(取材・文・写真/編集部)

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「東野作品史上最も泣ける感動作」と評価される人気小説を、「娚(おとこ)の一生」の廣木隆一監督が映画化。2012年、養護施設出身の敦也(山田)は、同じ施設で育った翔太(村上虹郎)、幸平(寛一郎)と悪事を働き、かつて町の人々から悩み相談を受けていた「ナミヤ雑貨店」逃げ込む。今は廃屋となった店で一夜を過ごす3人は、深夜、シャッターの郵便受けに手紙が投函されたことに気がつく。1980年に書かれ、時空を超えて届いたと思われる悩み相談の手紙に戸惑いながらも、当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書き始める3人。やがて、敦也らと浪矢の意外なつながりが明らかになる。

浪矢を演じた西田は、共演前にあるバラエティ番組で山田を見たといい、「良い奴だなあと思ったんです」とにこやかに話す。番組の内容は、子どもが自転車の練習をするというもので、「子どもがときどき転んでしまったり、挫折したりするんです。そのときのなぐさめる言葉、励ます言葉、本当に心から言っているんですよ。表面上じゃないんです。そういう精神を持っている人。だからこの作品に入っても演技に嘘がないんですね。自分を欺いた芝居をしない。それは俺も役者を長いことやっていて、1番心がけていることなんです」

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さらに、山田に「ジェームズ・ディーンや『灰とダイヤモンド』のときの(ズビグニエフ・)チブルスキーの出現と近いものを感じる」といい、「既製のものに対する打破のようなものは、必ず新しい空気のときに出てくる。そういう空気感を山田くんは漂わせている」と絶賛する。

大先輩からの惜しみない賛辞に、「常に自分を磨き続けなきゃいけないなとすごく感じます」と恐縮しきりの山田だが、今作が自身の成長過程の大きな1ページになったと自負する。「俳優としての成長は自分で判断することじゃない」としながらも、等身大の青年を演じるにあたり、初めて「引く演技」に挑戦したと話す。

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山田「アイドルの仕事は、全面的に自分の存在を前に押し出す仕事だと思っているので、ライブに立っているときは世界一自分が格好良いくらいの気持ちでやらないと成立しない。でも今回は、群像劇なのでみんなが主演。そのなかでどれくらい主張して、どれくらい引かなきゃいけないかという駆け引きをすごく大事にしました。現場では、自分のなかで作ったキャラクターをどんどん薄めていく作業を考えていましたね」

山田の言葉に納得したように聞き入っていた西田は、「そこが本当にクレバー。ショウビズのなかでの彼の在りようと、映画のひとつの役を演じるということに徹した彼の在りようが、いわゆる“アイドル”の方の作品とは違う。それは、本当にはっきりと言えます」と断言。「この作品が持つ空気感みたいなものは、山田くんの居ざまで決まるところもあったので、本当にクオリティの高い作品にしてくれたと思いますね」と“座長”ぶりに太鼓判を押した。

2012年と1980年という違う時代を生きる人物を演じた2人は、直接共演するシーンがなかったため、互いの撮影現場に足を運んだ。山田は、西田と成海璃子(皆月暁子役)の共演シーンを見学したといい、「西田さんは台本にないことをその場で生まれた空気感でお話することもあるので、めちゃくちゃ楽しかったです。今後、自分も自然な演技をしていくうえで大切なことだなと、すごく学ばせていただきました」と尊敬の眼差しを向ける。

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一方の西田は、山田、村上、寛一郎が夜の町を走り抜けるシーンを、寒空の下撮影が終わるまで見学したといい、「虹郎くんも寛一郎くんも、山田くんを慕っている感じがとっても見ていて愛おしくてね。3人の関係性が、今の時代の若い人たちの感覚をリアルに表現してくれているなと思って、とても好きでしたね」と述壊する。

西田「年が離れている分、かわいいという思いもあるけれど、同業の俳優としての目線で見て、今の俺が吸収できるものがいっぱいあるんです。先輩だから全部こちらから提供しなきゃいけないということはなく、お互いにギブアンドテイク。俳優というひとつの土俵に乗ったら、あとはもう先輩も後輩もなくて、その役のなかでどう生きるかということを考えている人が1番すごいと思いますね」

手紙の相談内容から、投函者と自分たちの生きる時代とがずれていることを疑った敦也は、店のなかと外の時空が違うことを確かめるため、白紙を郵便受けに投函する。その白紙が32年前の浪矢に届いたことで2人は初めてつながり、予想だにしなかった浪矢からの返事に、敦也は衝撃を受ける。

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山田は、浪矢からの手紙を読み涙するシーンで苦戦したものの、西田が手紙を読み上げる音声を聞きながら演じると「涙がブワッと出た」と気持ちが切り替わったことを明かす。最終的なオーケーテイクでは、「カメラの横にいる廣木監督の存在が見えなくなった」と話し、「芝居ってこういうことなんだと。芝居じゃない芝居。それがすごく印象的でした。1番難しいシーンでもあったのですが、西田さんの声ひとつで一気に飲み込まれました」と納得の表情を見せた。

時間軸が複雑で登場人物も多い原作を、129分の映像にまとめ上げることの困難さは想像に容易いが、西田は、省略を感じさせない脚本を絶賛したうえで役者の役割を語る。「現実性を帯びていて、なるべく原作の色合いや風味を壊さずに映像化できないかとみんな苦戦する。足りない部分は、演じる側が芝居や空気感で埋めていくみたいなことでしょうか」

山田も、「現実とファンタジーの部分があるので、不協和音を奏でそうなんですけど、飛び込んでいったら意外ときれいなメロディが奏でられている。それがこの作品の魅力のひとつ」と胸を張る。「原作ファンの方は、『あのシーンどこ行っちゃったんだろう』と思うこともあるかもしれない。でも、演技に正解はないけれど、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の実写化の正解は今作。僕は大成功だと思います」

恐れずに「大成功」と言い切る真摯な眼差しに、俳優・山田涼介の成長を見た。

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