午後8時の訪問者

劇場公開日:

午後8時の訪問者

解説

「ロゼッタ」「ある子供」でパルムドールを受賞し、カンヌ国際映画祭の常連として知られるベルギーのジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟監督作品。ある日の夜、診療受付時間を過ぎた診療所のドアベルが鳴るが、若き女医のジェニーはそのベルに応じなかった。しかし翌日、身元不明の少女の遺体が診療所近くで見つかり、その少女が助けを求める姿が診療所の監視カメラに収められていた。少女はなぜ診療所のドアホンを押し、助けを求めていたのか。少女の死は事故なのか、事件なのか。そして、ジェニーはなぜドアホンに応じなかったのか。さまざまな疑問が渦巻く中、ジェニーは医師である自身の良心や正義について葛藤する。主人公のジェニー役を「スザンヌ」のアデル・エネルが演じ、ジェレミー・レニエ、オリビエ・グルメ、ファブリツィオ・ロンジョーネらダルデンヌ兄弟作品の常連俳優たちが脇を固める。

2016年製作/106分/G/ベルギー・フランス合作
原題:La fille inconnue
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2017年4月8日

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(C)LES FILMS DU FLEUVE - ARCHIPEL 35 - SAVAGE FILM – FRANCE 2 CINEMA - VOO et Be tv - RTBF (Television belge)

映画レビュー

4.0異色のハードボイルド。

2017年4月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

シロウト探偵物というジャンルがあるが、まさかダルデンヌ兄弟がジャンル物にここまで接近してくるとは思いもよらなかった。もちろんダルデンヌらしい現実の社会問題への告発や警鐘は込められているのだが、まず医者であるヒロインが、患者の脈拍の変化から「何か知ってるわね!」と切り込んでいく捜査の仕方が新鮮で面白い。

もうひとつ感じたのは『チャイナタウン』でも『ロンググッドバイ』でも何を引き合いに出してもいいが、これが正統派のハードボイルドミステリーであるということ。

推理にはさほど重きを置かず、あくまでも主人公があっちにフラフラこっちにフラフラと動き回るうちに、怪しい人物が次々と現れ、やがて真相にたどり着く硬質な迷宮めぐり。孤独な暮らしをしているらしいこと以外背景がわからないヒロイン像も、ゴツゴツとしたハードボイルドの触感にぴったりだった。

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村山章

3.5一介の市民の目線で紡ぐダルテンヌ流サスペンス

2017年4月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

人生は“もしもこうしていたなら”という後悔で満ちている。本作のヒロインである女医のジェニーも「あの時、ドアを開けなかったこと」にとらわれ続け、遺体となって発見された少女の名前を知ろうと、事件の渦中へと飛び込んで行くことに。名匠ダルテンヌ兄弟の手にかかると、かくも警察などの捜査関係者とは全く違う一人の女性の視点で事件の追究が展開され、また彼女が出会う人々の証言からは、その地に根ざした貧困や移民、犯罪、医療、または親子や家族間の関係性といった様々な様相が垣間見えてくる。その誰もがそれぞれのレベルの「あの時こうしていたら」という思いを抱えて生きていることも印象深い。初めは事件に首をつっこむヒロインの行動が衝動的なもののように思えるのだが、それは106分を通じて「なぜ彼女はこの診療所に居続けるのか」といった命題への答えにも成り得る。本作は周囲を解き明かすことでやがて自分自身の使命感や胸の内にたどり着く映画とも言えるのだろう。

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牛津厚信

4.0少女の存在をなかったことにさせない

2023年11月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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つとみ

5.0まじめなキャラクター

2020年7月11日
PCから投稿

海外の報道でPortrait de la jeune fille en feu(2019)が絶賛されている。英語タイトルがPortrait of a Lady on Fireとなっている。rottentomatoesが98%、imdbが8.2。いちばん見たい映画だが、順当にこっちへ来てくれるか解らない。

フランスのアカデミー賞=セザール賞に部門ノミネートがあがったが、ポランスキーの「J'accuse」が作品賞を受賞したことに腹を立てたアデルエネルおよび監督のCéline Sciammaらが式から退席したと報道されていた。

報道にあることしか知らないが、ポランスキーは過去の未成年者への性的暴行罪で起訴され、その後にも告発によって、幾つかの被害立件の渦中にあるという。
そんな彼の映画が作品賞に選ばれたことに反発し、自身も性被害のサバイバーで、フランスのミートゥー運動を牽引するアデルエネルが「ブラボー!ペドフィリア!」と叫んで会場から去った──とのことである。

ポランスキーの作品賞受賞はフランス市民の反感を買いデモにまで発展した。これらは、つい先月(2020/02)の話だそうだ。

アデルエネルはいまのフランスの代表的な女優だが、日本のわたしには馴染みがうすい。見た作品もすくない。これがもっとも印象的だったが、ほかはあまり記憶がない。

ただyoutubeに遍在している彼女のインタビュー動画を見たことがある。
演技上にない素のアデルエネルは、見たこともないほど天然な感じの人である。

対談や会見の最中、彼女は、絶え間なくキョロつく。
眼球と頭がつねに動いて、意識が散漫にほかへ移る。まるで動画にでてくる赤ん坊のように、たえずどこか/なにかを触り、忙しなく好奇心の方向が変わる。
その一方で熱く語ったりもする。

その、素のファンキーな感じがクリステンスチュワート以上なのであって、とうぜん、そんな人はおらず、まして女優ならなおさらである。
ゆえに、もしアデルエネルがこの天然のまま映画に収まったら──と思うほど魅力的な「素」だが、ただし、あまりに動きが止まらないので、トゥレットとか多動性とかの障害を思わせもする。
しかし、障害ととらえてしまうなら、午後8時の訪問者の彼女はどう説明するのか。

ジェニーは、小さな診療所で熱心にはたらく医師。
落ち着きがあり、どこまでもまじめな人である。

ダルデンヌ兄弟のほかの作品に出てくる人物像と共有するものがあるが、にんげん、ふつうだったら、どこかで妥協して、流れに任せるのだが、ジェニーはぜったいにあきらめない。まじめに、信念をつらぬく。
ただし、信念をつらぬく──とはいえ、どこかの新聞記者とちがって勘違いやポーズをしない。つねに相手を思い遣り、みずからの範囲において最善を尽くそうとする。

いったいどこの映画人がまじめに生きる市井の人を描くだろう?まじめな人を描くなら、誰だってエンタメに寄せて感動に祭る。サンドラ(の週末)やジェニーのように、一途に貫いて、とりわけ大きな成果もない事象を映画にしようとは思わない。が、だからこそ、ダルデンヌ兄弟には無類の価値がある。

Portrait de la jeune fille en feuは同性愛が描かれているらしい。かつアデルエネルは監督のCéline Sciammaとその関係にあるそうだ。
天然とゲイとアデルのキーワードがアブデラティフケシシュの映画につながってしまうのだが、午後8時を見返しながら、炎の貴婦人がなんとかぶじに輸入されてほしいと思った。

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津次郎
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