僕とカミンスキーの旅 : 映画評論・批評

僕とカミンスキーの旅

劇場公開日 2017年4月29日
2017年4月18日更新 2017年4月29日よりYEBISU GARDEN CINEMAほかにてロードショー

老練な芸術家と功名心とエゴで膨れ上がった青年。二人旅で辿り着く苦い真実

1920年代にポーランドからパリに出てきてマティスの弟子となり、1960年代にニューヨークで開かれたポップアート展で「盲目の画家」として一躍有名になったマヌエル・カミンスキー。映画「僕とカミンスキーの旅」は彼の歴史を巡るドキュメンタリーから始まる。それは語り部の美術評論家ゼバスティアンの夢の中で展開されている映像だが、二十世紀美術史の重要項目を織り込んだこのフェイク・ドキュメンタリーは挑発的だ。我々は芸術を見る時、純粋に作品を見ているのだろうか? それともその裏にあるストーリーを見ているのだろうか? 何をもってアートを「本物」とするのかは難しい。カミンスキーの伝記本を書こうとしているゼバスティアンは功名心とエゴで膨れ上がった青年で、アーティストの本質などお構いなしのところがあるが、周辺にいるアート関係者も彼と大差はない。

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私生活においてもキャリアにおいても追い詰められているゼバスティアンにとって、本当に盲目であるのかどうかというスキャンダルも含めて、カミンスキーは絶好のターゲットに思えたのだろう。しかし、この老練な芸術家は真意を語らず、のらくらとしていてつかみどころがない。ゼバスティアンは転がすはずだった老人に転がされ、かつての恋人に会いたいという彼をスイスの山奥から連れ出して、ベルギーまで一緒に旅することになる。道中で二人は心を通わせ……という展開にならないところがいい。ゼバスティアンが知るのは、アートと同じくらい、いやそれ以上に人生は複雑だという真実だ。そしてその苦い教訓が彼の作品に本当に活きるのかは謎のままだ。ゼバスティアン役のダニエル・ブリュールと監督のヴォルフガング・ベッカーは「グッバイ、レーニン!」以来のリユニオンとなるが、ナイーヴな青年を演じたあの頃とは違い、ブリュールは苦くて陰影の深い演技も出来るようになった。自己愛が強いゼバスティアンも、デンマークのベテラン、イェスパー・クリステンセンが演じるカミンスキーも劇中で分かりやすい変化を遂げることはないが、それでも見ていると二人を愛してしまう。

山崎まどか

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