劇場公開日 2017年8月26日

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「映画館を出たら、いつもの街が違って見える」パターソン shironさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0映画館を出たら、いつもの街が違って見える

2017年8月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

四半世紀ぶりに観たジム・ジャームッシュ映画は、画面全体が愛おしさに包まれていました。
詩人の目を通して観る街や人々の、なんと魅力的なことか!
バスのフロントガラスの曲線すら、美しく見えて…

あれ?でも、ジム・ジャームッシュ映画って、こんなだったっけ??
恥ずかしながら、当時ファッションでジム・ジャームッシュ映画を見ていたきらいがあるもので、思い出すとムズ痒さを伴うのですが (//_//);
…この印象の違いは、単にあの頃の私がジム・ジャームッシュの魅力の本質をわかっていなかっただけなのか…。
それとも、私と同じだけ監督も年を取ったせいなのか…。(^-^;
いずれにせよ、ジム・ジャームッシュブランドに対する気恥ずかしさを克服できたので、今日からは胸を張って大好きな監督だと言えますww

主人公のパターソンには、お気に入りのマッチがあります。
大量生産で使い捨ての小さなマッチ箱。その材質、フォルム、デザインから、様々なイメージを感じ取っていて…
メガホンのような形のロゴは、世界に向かって叫んでいる。
きちんと並んでいる青い頭薬のマッチ棒からは、内に秘めたパッションを。
マッチ箱は詩人の彼そのもので、そんなパターソンにギャップ萌え〜(*≧∀≦*)

一緒に暮らしている、ちょっと独創的な彼女も
マッチ箱のロゴを「メガホンの形」だと感じていて、二人はとってもお似合いのアーティスト。

同居している犬のマーヴィンも最高!
冷静に二人を観察していて、パターソンとは恋敵であり悪友でもあるような。。。
マーヴィンの魅力だけで一晩中語れますww
(映画.comアプリでもCastの欄に含まれていて感激。ご冥福をお祈りします)

パターソンは、ニュージャージーのパターソンでバスの運転手をしていて、毎日規則正しく同じルートを走っているのですが、彼女の何気ない一言やバスの乗客の会話からインスピレーションを受けると、見慣れた街が違った顔を見せてきます。
むしろキーワードが、向こうからやってくるかのよう。
サプライズとユーモアと愛に満ちているパターソンをパターソンが愛しているのか、パターソンにパターソンが愛されているのか、わからなくなります。

映画が終わってしまったときは「もっとパターソンの日常を見ていたい。彼が観ている目線でず〜っとパターソンの街を観続けていたい。」と、寂しい気持ちになりました。

試写会のお土産はマッチだったのですが
映画の世界から現実の世界に戻った私の手の中にすっぽり収まるメガホン形のロゴから、私は一体何を感じることが出来るのか??
心なしか、いつもの街が違って見えるようで、粋なプレゼントに痺れました。

shiron