劇場公開日 2017年4月7日

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「降格機動隊」ゴースト・イン・ザ・シェル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5降格機動隊

2017年8月22日
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鑑賞方法:DVD/BD

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『マトリックス』のモデルでもある士郎正宗原作×押井守監督の傑作ジャパニメーションを、ハリウッドが満を持して映画化。
こちらも企画が上がってからどれほどの歳月が流れただろうか。
メチャクチャ『攻殻機動隊』に詳しいって訳ではないが、押井版は何度も見ていて、本当に今も色褪せない傑作だと思っている。
あの世界観、ビジュアル、クールさ、哲学的とも言える深遠なテーマ…ハリウッドでさえ憧れて実写化したがるのも分かる。
さて、その感想は…

“柔殻機動隊”とでも言うべきか、押井版よりソフトで分かり易い印象。
よりエンタメSFアクション色が強く、『攻殻機動隊』を知らなくても全然大丈夫な初心者入門編。
ビジュアルや再現度はなかなか。
特に誕生のOPシーン、光学迷彩を着て体が透明になりながらの高層ビルからのダイブ、水上アクションなど結構感激モノ。
清掃車、少佐の海中ダイビング、クライマックスの多脚戦車とのバトルもちゃんとあり、エンディングで川井憲次によるあの音楽が流れたのも嬉しかった。

良かったのはここまでで、後は不満点を…。

敵が“人形つかい”から“クゼ”に変わった事を除けば、ストーリーは概ね踏襲。
そこに新たな要素として、少佐の過去と苦悩。
よりドラマを深めるには無難な要素だが、ちとありふれ過ぎて安直だった。
さらに少佐の過去には義体開発企業の陰謀が…って、まんま『バイオハザード』じゃん。
時折感情に揺れる少佐は自分の中にある“人間”を表しているが、やはり少佐は近寄り難いくらい徹底したハードボイルド・ヒロインであって欲しかった。
義体と人間の境界線、心は?魂は?…など押井版と同じテーマは投げかけているものの、残念ながら深遠さは感じられない。
押井版は確かに難解であっても、その難解さが魅力の一つだった。
ルパート・サンダースの演出は再現やオマージュは良くても、ストーリーやテーマの深み、面白味、怖さ、不気味さに欠けた。
そもそも、何故この監督が抜擢されたのか今も疑問。『スノーホワイト』はそれほどスゲー斬新なビジュアルとも思わなかったし、通じるものも違うし…。

さて、話題の中心であるキャスティング。
スカヨハの“少佐”。
何で白人が…という野暮な事は言うまい。見てればラスト、ちゃんと説明も付く。
だからスカヨハのキャスティングに異論は無い。現在ハリウッド屈指のアクション女優でもある彼女のアクションはさすがに魅せるものがある。
ただ…、はっきり言ってしまおう。
今作でのスカヨハ、デブってないかい!?
光学迷彩スーツを着てない時はいつもながらのスタイルなのだが、スーツを着ると…。
お陰で本作でのスカヨハにセクシーさを感じられず。
映画の話には一切関係ないかもしれないけど、作品の魅力としては非常に大事な事!

バトー役のピルー・アスベックは悪くない。アレ、目が…と思ったけど、ちゃんと。
トグサは全く印象残らず!
そしてそして、荒巻役のビートたけし。
一人だけ日本語、日本語なのに字幕が欲しい喋り、荒巻でありながら『アウトレイジ』ばりに銃をブッ放すなどあちこちで色々言われているが、まあこの人がまたハリウッド映画に出ただけでも…。

最初は再現やオマージュに楽しんだが、後半はストーリーが失速して残念。
やはり『攻殻機動隊』の実写化は影響受けた『マトリックス』一本で充分だったかなぁ…。
見る前に感じた恐れ、不安、孤独、闇…。
そこに希望は浮かび上がらなかった。

尚、本作は吹替鑑賞がオススメ。
吹替の方こそ、最大のオマージュが捧げられている。
(強いて言えば、あの清掃局員二人の声に、千葉繁と山路サンを配して欲しかった~)

近大