劇場公開日 2017年1月7日

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「不信感という網に絡まる恐怖。」The NET 網に囚われた男 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0不信感という網に絡まる恐怖。

2017年4月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

かなり前に観ました。
『The NET 網に囚われた男(2016)』
原題  The Net

(あらすじ)
北朝鮮で奥さんと娘と3人で仲むつまじく暮らしていた漁師のナム・チョル(リュ・スンボム)は、 漁の最中に網にかかり南、つまり韓国へ流されてしまう。韓国警察に身柄を拘束され、スパイ容疑と、韓国への亡命を強くすすめられる。しかし愛妻家のナムは、必死で厳しい尋問に耐え、やっとの思いで北に戻るも……。

忌野清志郎さんの"あこがれの北朝鮮"いう曲をご存知でしょうか?
"北朝鮮であそぼ
楽しい北朝鮮
北朝鮮はいい国
みんなの北朝鮮"
この曲は一般的には、「皮肉」と解釈されています。
私も本作を観るまで、そう思っていました。
独裁者による洗脳で、貧しい生活を強いられている北朝鮮の方達。っていう。
しかし、彼等は北だけしか知らないので、それが「普通」なんですよね。
なので南で身柄を拘束されたナム・チョルは、自分達がどれだけ穏やかに幸せに暮らしているか訴えます。
北に帰りたいと。自分はスパイじゃない!と。
けれど、南は南の価値観で、「独裁者からナム・チョルを救え!南に投降させろ」となります。北に帰らせるなんてとんでもない!独裁者の国だぞ!可哀想!救わなきゃ! つって。

ここ、はっとさせられました。
先進国、発展途上国って、何を基準にして先で、何を基準にして途中なんでしょうかね。
経済的に豊かな国が、そうではない国に行ってダムとかビルとか建て、先進国の価値観で、先に、先に、向かわせるのって、どうなのかなって。
彼等は彼等の価値観で、十分に幸せなのかもしれない。
そう、幸せって自由じゃないと得られないものなのかな?
独裁者の下でも、幸せってあるよな?とか、考えました。
でも、自由じゃなくても幸せはあるけど、自由で豊かだと幸せの選択肢が増えて、寧ろ幸せだって感覚が薄れるかも。
貧しい国では、家族みんなが一日しっかり御飯が食べられれば幸せ。
幸せは一個だもん。

でも、それが「普通」だったナム・チョルですが、南の"経済的"な豊かさにも、ちょっと影響される訳です。
そして北に帰ってからは、南に寝返ったんじゃないか?って疑われる。
また身柄を拘束され、尋問開始です。
信じる物を失って行き場をなくす、心。
心が、不信感という網に絡まる恐怖。

キム・ギドク監督作品にしては、バイオレンス少なめ。
ストーリーも分かりやすい。俳優さん達者です。
けれど、ちょっと刺さったトゲが、あとから化膿してくる感じ。
今そこが、熱を持ってます。

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さぽ太