劇場公開日 2017年1月28日

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「全ては芸術のために」エゴン・シーレ 死と乙女 フリントさんの映画レビュー(感想・評価)

全ては芸術のために

2017年4月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

画家が真の美を求めるうちにモデルと恋仲になるも金を選ぶ話

エゴンシーレについては何も知らなかった、作品「死と乙女」は見たことあったけれども。

本作品はエゴンシーレの半生とそれに付き沿った女性たちの物語だ。

エゴン役の人、顔つきもいいし、神経質な演技、ほっとけない感じがよく表現されていたと思う。
こんなにか細くてでも芸術意識が高く、理想に燃えている男がそばに居たら誰もが好きになってしまうだろう。

妹役の人も童顔で、本当に10代かと思えてしまう幼さだった。

兄妹の関係はに画家とモデルの枠、肉親の枠を超えていて、かなり危うい感じだったけれど、枠にとらわれない愛が有ったように思える。

ポルノ画ばかり書いてるから、世間的には変態扱いされてしまうし、鑑賞中自分も「こいつただの変態なんじゃ・・・」と何度も思った。

運命的なモデルと出会い、仲を深めていくが、最終的にはお金を取ってしまう。
芸術活動には資金が必要だし、理想のためには彼女と別れるしかなかったとは言え、結末が悲惨過ぎる。
後世で多大に評価されているのがせめてもの救いだ。

父親のトラウマや仲間との別れ、不幸にしまった女性たち、エゴンの作品の根幹が少しわかった気がした。

エゴンと共にある大きな姿見だけが全てえを目撃し、全てを映していた。

映画好きの友人の言っていた「鏡の演出が上手い映画に外れなし」の法則によるとこの作品も良作なのかもしれない。
本作では演出と言うより登場人物の一人としてそっとそばに居た相棒的な感じだったが。

真の芸術、真の美の為にはすべてを捨てて没頭せねばならないし、生活費の心配などしていられないと言っていたけど、これは甘えだと思った。
生活が出来た上で作品を作り、それで評価されて生業にする。誰かに頼って活動したところで人として威厳は無いと思った。

凡人の自分には計り知れない、探求心が彼ら天才には有るのだろう。
だからこそ後世にまで残る名作を作れるのだ、わかってはいるけどどうしても尊敬しかねる人物だった。

エゴンの画に素晴らしい価値が有るのは、人とは違う突き抜けた信念が有ったからなのかも知れない。

劇中セリフより

「真実の愛は、過去に寛大よ」

今の姿に恋したなら、過去にどんな事が有ったにせよそれ込みで好きになる。
今が有るのは過去の積み重ねなのだから。
全てを許し合える二人の愛はとても美しいものだと思った。

フリント