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劇場公開日 2017年5月19日
2017年5月16日更新 2017年5月19日よりTOHOシネマズ新宿ほかにてロードショー

SF映画の概念を覆し深遠な問いかけをもたらす、鬼才監督の仕掛ける映画的体験

鑑賞中、何度も新鮮な驚きを与えてくれるこの映画は、観る側がいかにSFというものに対して、いつの間にかありきたりのイメージを寄せていたかということを認識させる。たとえば宇宙人の造形。頭部が大きく痩せて目がぎょろりとしている、こんな人間の変形のようなものが地球外生物だと、我々はどこかで思っていなかったか。だから本作に登場する異形の生き物“ヘプタポッド”を目の当たりにすると瞠目し、興奮が沸き上がる。さらに洞窟を思わせるような暗くミニマルな宇宙船内のルックも斬新だ。監督によれば、実際スタッフがぶつかり合うほど現場も暗かったそうだが、まるで深海にいるかのような独特のムードを作り上げた美術スタッフと撮影監督、音楽家チームの功績も特筆に値する。

原作はテッド•チャンの短編小説「あなたの人生の物語」。SFとしてかなり独創的なこの物語をスクリーンに展開させるにあたり、鬼才ドゥニ・ビルヌーブ監督は、その真髄を保ちつつ、アーティスティックな映像による壮大なスケール感を加味してみせた。

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ある日地球上の何カ所かに、突然黒い卵形の宇宙船が降り立つ。奇妙な音や文字を発信する彼らと交信するために、軍の依頼を受けたのが、エイミー・アダムス扮する言語学者ルイーズだ。「ヒーロー」ではなく「ヒロイン」というところに物語の大きな伏線があるものの、それだけでなく、彼女の接し方には明らかに周囲の好戦的な男性とは異なるものがある。母性的とも言える開かれた心と寛容性、未知のものに対する恐怖を攻撃性ではなく好奇心に転換していくその姿勢は、現代社会の状況を風刺する政治的なディメンションをも本作にもたらしている。

後半は、<彼ら>対<地球人>のような王道SF戦争路線になっていくかと思いきや、こう来たか!というひねりと共に、深い人間ドラマとして着地している点もみごとだ。人類に対する考察、そして人間が生きることの意義に関する深遠で哲学的なまでの問いかけは、あのスタンリー・キューブリックに匹敵すると言っていい。これがビルヌーブにとって初のSF映画だったというのも驚きだが、観るとなおさらその次回作「ブレードランナー 2049」への期待が高まるのを止められない。感覚と知能の双方を刺激する、まさに映画的体験に満ちた作品である。

佐藤久理子

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