ポリーナ、私を踊る : 映画評論・批評

ポリーナ、私を踊る

劇場公開日 2017年10月28日
2017年10月17日更新 2017年10月28日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにてロードショー

ダンスの躍動感と映画的な醍醐味をそなえ、一粒でニ度おいしい。

ダンス映画というと、それだけでかなり限定されたイメージを抱いてしまうだろうか。ダンスに興味がないと辛いかもしれない、ただ美しい踊りを見せる映画ではないのか、など。しかもグラフィック・ノベルとして人気のこの原作を映画化した共同監督のひとりは、著名な振付家のアンジェラン・プレルジョカージュ。ある意味これは、映画として落とし穴になる可能性もあると、正直観る前はわたしも懸念していた。だが蓋を開けてみればそんなことは杞憂だった。否それどころか、ダンスの美しさや躍動感と、映画的な物語としての醍醐味、双方を楽しめる一粒で二度おいしい作品になっている。

幼い頃からボリショイ・バレエ団に入ることを夢見て、ダンスを学んでいるポリーナ。学校帰りに歩きながら、その歩調が自然に力強いステップに変わって行く様に、彼女の秘められたエネルギー、ダンスへの情熱がほとばしる。だが個性よりも完璧さが要求される厳格なクラシック・バレエの世界は逆に、彼女の奔放な情熱を次第に削いでいく。ボリショイに合格しながらもすべてを捨てて、ポリーナはモダン・バレエの修業に南仏へ旅立つ。しかしモダンの世界に行けば今度は、「あなたの踊りには感情がない」と言われ、無力感に浸る。審美的な美しさを保ちながらも、こうした彼女の挫折や葛藤を掬いとるようなカメラワークが秀逸だ。

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ポリーナ役のアナスタシア・シェフツォワは、サンクトペテルブルクのバレエ団出身で、これがスクリーン・デビュー。踊りはもちろん筋金入りとして、ポリーナの感情の起伏を鮮烈に表現する演技力をそなえ、しかもマトリョーシカのようにフォトジェニックである。さらに彼女を取り巻く共演陣が強力で、ダンス経験もあるジュリエット・ビノシュ、パリ・オペラ座の元エトワール、ジェレミー・ベランガール、そしてポリーナのパートナーに扮するのが、現在フランス映画界で人気急上昇中のニールス・シュナイダー

映画を観ているうちに、ヒロインのポリーナと演じているアナスタシアがオーバーラップし、ひとりのバレエダンサーの成長譚を描いたドキュメンタリーを観ているような錯覚に陥る。ポリーナがクライマックスでベランガールと踊る頃には、ダンス・ファンでなくても高揚を覚えるほど、物語に引き込まれているのではないか。

ちなみに本作の後、アナスタシアはバレエ団を離れ、今はまさに振付家と女優を目指しているとか。この映画を観るとそれも十分に頷けるほど、彼女は格段に光っている。

佐藤久理子

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