雨の日は会えない、晴れた日は君を想うのレビュー・感想・評価
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ギレンホール、見事に役を生き切った
ヴァレ監督はいつも、崩壊しそうなほどに傷ついた人の心を剥き出しに描き出す。それは時にヒリヒリする描写を伴うこともあれば、まるで真逆の、言いようのない温かみとなって香りたつ瞬間もある。こと本作を観ながら思い知らされたのは、心は一つの構造物であり、一つ一つのネジや柱が支え合って何かを成立させているということだろう。妻が死んでも泣けなかった主人公は、自分の気持ちに素直なのか、それとも抗い続けているのか。それは彼自身にだってわからない命題だ。だからこそ心をバラバラに解体してどんな構造なのかを確かめ、壊れているところがないかを見極めてみる。最初は狂気じみているように思えたその行為が、やがて慟哭にさえ近い、とても切実かつ胸に迫る行為であったことに我々は後から気づかされるのだ。その心理状況が見事に成立しているのもギレンホールの存在あってのこと。彼にはどれほど賛辞を送っても足りない。この俳優は生涯に一度あるかないかの難役を、見事に生き切った。
肉体労働と子育てで“生”の実感を取り戻す
原題のDemolitionは端的に「破壊」。分解や解体の作業は複雑にこんがらがった感情をいったんバラす象徴だけれど、インテリの主人公が肉体を酷使することで生きている実感を取り戻す効果もある。共通点の多い「永い言い訳」でも、作家の主人公とトラック運転手の遺族仲間が対比的に描かれていた。それに、慣れない子育てに触れることで、再生のきっかけをつかむ点も似ている。
ジェイク・ギレンホールは「ドニー・ダーコ」や「ナイトクローラー」など、精神的に問題を抱えた陰のあるキャラクターが似合う。主人公の義父役のクリス・クーパーが成功した経営者としての尊大さを醸しながらも娘思いのキャラクターを渋く好演している。
ジャン=マルク・バレ監督は、「ダラス・バイヤーズクラブ」に比べると今回少し演出にキレが足りない印象。音楽使いのセンスは良かったけれど。
大切な人のいない世界で
妻の突然の死でわかりやすく悲しみに暮れるのではなく、
空いた穴があまりにも大きかったために
自分でも自分は何か感じてるのかどうなのかがわからなくなってしまっている。
分解して、周りを壊して、
自分はなんなのか、愛を理解もしていないのか、ともがいて
自分を取り戻すというか生きなおそうとしている。
何も感じなくなったのが不感状態になったのは
結婚後なのか前からなのか。
己を探っていく過程で、
まさに自分の存在というものにいろいろ
問題と疑念や鬱屈をいだいている
少年が、構築しなおす相棒として最適だった。
少年や子供たちが健やかに過ごせる、
それが彼自身の再構築にもつなっがていく。
悲しみがわかりやすくはないけれども、
実際に奥さんを亡くした昭和なおじさんなどは
こんな感じなのではないかとも思う。
仕事にがんばってきてそれが存在事由とまでも感じていたろうが、
後方支援していた妻を失うと急に崩れ、
存在を支えてたとおもっていた仕事や会社社会も
個人を労わることはないし
ましてや定年してたら過去の人で無関係なようなものだ。
喪失感をどう埋めるのだろう。
壊れた心を解体し、修復する過程で見えたもの
原題はDemolitionで、解体などと訳す。
心が雨の日は曇って周囲がよく見えなくなるが、心を一度解体し修復した後の晴れの状態になって見えてくるものがある。
3度目の鑑賞だが楽しめた、ジェイク・ギレンホールの演技が素晴らしく光る作品。
難解。それでも何度も観てしまう不思議な魅力を持つ映画
1回観て、内容を曖昧にしか覚えていなくて、もう一度観たけど、
やっぱりどこか雲を掴むようなストーリー。
でも不思議と「つまらないから観るのを止めよう」とは思わない。
交通事故で突然妻と死に別れたジェイク扮するデイヴィスを中心に話が進んでいく。
「構造がどうなっているか気になって仕方がない」とあらゆるものを分解し始めるデイヴィスを見て、
周りは妻を失ったショックで精神が不安定になっていると同情する。
でも、ディヴェィス自身は妻を失った悲しみを感じているのか自分では分からなくなっている。
分解行為は次第にエスカレートして破壊行為に変わっていく。
家屋の解体作業に混ざったり、遂には、妻との自宅も鈍器で破壊し始める。
傍から見れば、妻を喪失したことにより、精神に異常をきたして奇行に走っているようにしか見えない。
でも分解して本来は目に見えないものを表に出す行為は、
彼自身の心の中を知ろうとする気持ちの表れなのではないだろうか。
破壊するのは、心に覆いかぶさっている余計なものを全て木っ端みじんにして取り除こうとしているのではないだろうか。
壊して、壊して、壊しつくして、分厚くてごちゃごちゃした壁が取り払われて、それでも残った心の欠片に触れたとき、
彼は妻に対する本当の感情に気づいたのだ。
全てを理解することはできない難解な映画ではあるけど、
きっと私たちの感情ってこんなもん。人類に普遍的な破壊と再生のテーマが込められているように感じた。
挫折と再生の物語
ある日突然の事故によって、大切な妻を亡くした。その事により色んな事が傾き始めた。それは何気なく進む時間の中でにあって気づくと違った。
破壊的な衝動や悲しみを感じる作品だった。
妻を亡くして、それから自分というものを新たに向き合うと今まで知らなかった事実がそこにあった。
とても励まされる作品というわけではないけど、辛いと思える時に出会えた人々から多くの事を学び前に進むと歩む姿は、とてもカッコよかったです
ジェイク・ギレンホールとナオミ・ワッツは実年齢で一回り違うのだが、なぜこのキャスティングなのかと思った。 個人的にはナオミ・ワッツくらいの年齢の女性がオレは好きだが。
動画配信で映画「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」を見た。
劇場公開日 2017年2月18日
2015年製作/101分/PG12/アメリカ
配給:ファントム・フィルム
ジェイク・ギレンホール37才
ナオミ・ワッツ49才
クリス・クーパー66才
原題は「Demolition」。
意味は「解体」
邦題とは大きな違いがある。
通常米国の映画タイトルはワンセンテンスが多い。
ジェイク・ギレンホールは事故で妻を亡くした。
運転していたのは妻。
同乗していたジェイク・ギレンホールは無傷だった。
ジェイク・ギレンホールはなぜだか全く悲しみを感じなかった。
自動販売機のチョコレートが出てこなかったことでジェイク・ギレンホールは自動販売機の会社に苦情を郵送した。
返事がなく4通目の苦情を送った後に電話があった。
苦情係がナオミ・ワッツだった。
やり取りをするうちにジェイク・ギレンホールとナオミ・ワッツはお互いを意識するようになった。
ジェイク・ギレンホールとナオミ・ワッツは実年齢で一回り違うのだが、なぜこのキャスティングなのかと思った。
個人的にはナオミ・ワッツくらいの年齢の女性がオレは好きだが。
終盤、ジェイク・ギレンホールは亡くなった妻の浮気と妊娠、堕胎を知ることとなる。
米国映画サイトでは批評家評価も視聴者評価も賛否両論。
制作側が思ったほどの興行成績を上げていない。
満足度は5点満点で4点☆☆☆☆です。
人生経験の積み方によって、見方が大きく変わる作品。 突然ぽっかり穴...
人生経験の積み方によって、見方が大きく変わる作品。
突然ぽっかり穴の開いた心の描写が、緻密で激しく、
切ない。
鑑賞日:2017.1.20
グリーフの真っ最中
仕事一筋で家庭のことを顧みない夫が事故で急に妻を亡くし、悲嘆とどん底の中から少しずつ立ち上がっていく話。
悲嘆から通常に戻るまでにはいろいろな過程があるが、この場合は奇行とも言えるような行動が目立つ振る舞いからの立ち直りだった。
2022年 89本目
事故で妻を失った男性の再生の物語。
ジェイクはやはり演技が上手いですね。
作品自体は終始淡々と進んでいくし、特別何かあるわけではないが最後まで寝ることなく観れました。
個人的に見終わったあと、スッキリできました。
Crazy On You♪
解体も見事だったけど、デイヴィス(ジェイク・ギレンホール)の精神が壊れていく様子が見事。「心の修理は車の修理と同じ」なんて義父は言うけど、それなら俺は専門家に任せちゃうけどなぁ。などと考えちゃう。あのくらいのオヤジ世代になると、金持ちであろうがDIYしちゃうのが常なのだろうか?
個人的な話になりますが、HEARTの「クレイジー・オン・ユー」を聴くと涙が出てくる。若い頃、急造バンドで演奏したこともあり、懐かしすぎるのだ。と、感想を書きながらYouTubeで懐かしい映像をチェック・・・激しい!カッコいい!泣ける!とは言え、彼女たちの曲の中で一番好きなのは「バラクーダ」。
苦情処理からの恋愛関係発展かと思いきや、ストーリーはそう簡単には好転せず、カレンの息子クリス(ジュダ・ルイス)との悩み共有、共感といった展開は面白い。サンバイザーに隠されたメモに書かれたことが邦題になっているけど、もしそうなら妻は自分の死を予感していたのかな?疑問も残るけど、逆回転する周囲の人の映像とか意味ありげなシーンがとても多い。意味深な部分は何度も鑑賞すればつかめるのだろうけど、そこまで何度も見たい気持ちにならないのが残念なところ。
まぁ、尾行していたステーションワゴンの人物が意外だったところや、ラストシーンの解体が見事だったところは印象に残る。年齢を感じさせないナオミ・ワッツにも惚れてしまう・・・crazy on you
存在
自分の存在、
あなたの存在、
どうやって確かめる?
近くにいる、触れれる、感じられるけど遠い存在。
何かに誰かに見つけて認めて、それは自分自身でも、
やっと存在できる。
悲しいかなもう二度と認められない存在もある。
アメリカ中産階級のビルトアンドスクラップだ!
アメリカ中産階級のブルシットジョブ?クソどうでもいい仕事の虚しさを?
そうなると、この映画こそ、ブルシットムービーかも。クソどうでもいい映画。
面白いと思うが、なんか違うんだよね。
不条理そうだが、冷静に考えれば、そうなるだろうと思う。変形的予定調和。
新たな自分
妻を亡くしどういう訳か涙がでなかった
どうして…… 自分でも分からない
どこかモヤモヤして
どうでもいい事に興味が沸いて
中がどうなっているか
無性に見たくなった
気になるものを解体したり壊したり
感情のままに生きてみることに
そこで関わった人たちと自分を見つめ直す
幼い頃のしあわせだったことや
自分の得意だったことなど振り返る
仕事以外関わらなかった人生が
人とふれ合うことで色々な感情が生まれてくる
妻の好きだった場所に行ってみる
違った景色が見えてきた
自然と涙がこぼれた
妻を彼女を……愛していた と
心から思えた
彼の壊れている心の描写が
彼の壊す行動によって痛いほど
伝わってくる
彼女を失った哀しみが
壊すパワーに変えている
この作品は失踪感を味わうところが
どこかドライブマイカーと似ている
静と動の違いはありますが
妻が不倫していたのも
なかなか難しく考え深い作品です
Demolition(解体)
何か悲しいことが起きた時、即座に悲しみに沈める人もいるだろうが、何を想えばいいかも分からないところから始まることもある。この主人公のように、わからないものを探すために、些細なきっかけに触発されては、去来する思いのままに奇行を重ね、やみくもな行動の中からも最後には何かを得る。そんな生き方が私は好きだ。
ちらちらと見え隠れする映像で語られない裏目を紡ぐような構成は深みがあって秀逸で、挿入歌の入り方もよい。Demolitionという原題の直接的なイメージを補完する邦題も素敵だ。
突き刺さる
一度でも心が壊れた事がある人には見てほしい映画。仕事に追われて心が壊れていたのにも気づかず、すべてに無関心になっていた。妻が死んでも涙ひとつ出ない悲しくもないそんな自分が妻を愛していなかったんだと思う。だが妻の死をきっかけにこれまで無関心だった日常の些細な事が異常に気になりだす。一度気になったらとことん分解して解体した。そんな気持ちをありのままクレームの手紙として送った。その手紙をみたクレーム係のカレンは手紙をみて泣いた。カレンやカレンの子供との出会いで壊れていた心をすべて分解して解体していくような毎日。愛されていた自分。浮気をする妻じゃなかった。いつもなら無関心だったメモを見た時本当に大切な物を失った事に気づいた。今までの10年が雨の日だったかのように、、自分も妻をたしかに愛していた。素敵な映画でした。
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