劇場公開日 2016年12月23日

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「手に汗握る緊張感、そしてアラン・リックマンに捧ぐ。」アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場 はるさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0手に汗握る緊張感、そしてアラン・リックマンに捧ぐ。

2017年12月24日
iPhoneアプリから投稿

評価:★★★★★ 98点

テロを未然に防ぐ為に、上空から爆撃可能なドローンから小鳥サイズ、昆虫サイズを使用し、政府にとっての危険人物を監視している。
作戦命令に従い、イギリス政府高官の指令室、アメリカ軍の作戦室、ドローン操縦士、現場ケニアの工作員4視点から物語が主に進んでいく。つまり戦場には工作員のみだ。

感想は、全ての人に鑑賞してほしい作品であり、こんなにも手に汗握る映画は久しぶりである。

1人の少女の命とこれから起こるであろう無差別テロによる何千人の命。この作品は観客側にその二者選択を迫られる。あなたは決断できるか?

撃つか、撃たないかの攻撃の意思決定の緊迫感と議論が全編102分に渡って続くという構成は見事。
政府高官達は軍事的にみるか、法的に問題はあるか、人道的にはと作戦のたらい回しが続いていく。 「このドローンからの映像が外部に漏れることはあるのか?」
「あなたはこの映像がYouTubeに漏れることを心配しているのか?」
「だが、革命はYouTubeの映像から生まれる」

つまり、この攻撃の責任を責任者である彼等は誰もとりたくないのだ。
観客側の正義と悪の価値観を揺さぶり続ける今作品。
我々の視点から見たらテロリストと言われる彼等も個と見れば良き隣人なのである。ラストのトラックがそれを物語っている。
そして、また復讐の連鎖は続いていく。

最後の高官達のやりとりもぜひ聞いてほしい。
戦地に行き銃撃戦で相手を殺せば正義なのか? 机上でドローンを使い殺すのは悪なのか?
そもそも戦争が正義ではなく、人が人を殺す行為が正しくない。戦争などなくなってくれと強く思う作品であった。巻き込まれるのはいつだって善良な国民なのである。

ハリーポッター作品のスネイプ先生こと名優アラン・リックマンの遺作となった今作。
彼の最後の言葉「戦争の代償(痛み)を知らない兵士などいない」安全地帯から平和を掲げることしか出来ない文民と世界を守る為に戦う軍人。綺麗事で世の中上手くいったら戦争など、とっくになくなっている。戦争をしたくないと思っているのは戦争を経験した軍人達なのだ。深い言葉である。
オススメです。

はる