ブルックリンのレビュー・感想・評価
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誰にでもある選択のとき
アイルランドの美しい自然と
自分で生きる道を歩んでいく主人公に
ひたすら魅入ってしまう作品。
誰にでも生きていれば苦しい選択を
迫られるときが来ると思いますが、
これを観れば大丈夫だと思える、
そんな終わり方でした。
観終わったあと、アイルランドへ行きたくなります!
糟屋
今年ナンバーワンかも。
田舎から来たおぼこい娘の成長譚としてだけでなく、それぞれの街と周囲の人間の心の機微をとてつもなく美しく描いていた。
この手の映画って都会の人間を不必要に冷たく描写しがちだけど、都会に住むことの虚無感や孤独感っていうのは、みんな良い人で充実してるように見えてそこに自分だけ付いていけてない気がする事の焦りから来るものがほとんどだし、実際は田舎の年寄りの方がよっぽど性格悪かったりする。
それがとても丁寧に描かれていて、また演者も見事にそれを演じきっていて、もう完璧だった。
ラストは明るくなっても出たくないレベルで泣いてしまったよ。
72
彼の空、彼女の光
「BOY A」は、私にとって特別な映画だ。忘れ難い、希望と絶望。あの映画を作ったジョン・クローリー監督の新作と知り、これは観逃せないと思った。そして、脚本は、イギリス映画秀作には必ず顔を出す、脚本のニック・ホーンビィ。これはもう…!と、いそいそ劇場へ。
ヒロインが渡米する船のデッキ越しに広がる一面の海と空、恋人とデートする海辺の遊園地、故郷の浜辺…。中でも遊園地は、パステルカラーと楽しげなざわめきに彩られている。希望と幸せに溢れているはずなのに…空が重たい。雲ひとつないものの、どこかくすんで寂しげだ。
新たな世界に飛び込み、人と繋がり距離を縮めることの喜びと恐れ。そして、他者と近づくほどに、埋められらないと痛感させられる孤独感。「BOY A」と共通するものを感じ、すっと引き込まれた。
本作のヒロインは、帰郷により新たな世界から一旦離れ、飛び出したかつての居場所を新たに見つめる機会を持つ。揺れる彼女の選択は…。もどかしくも踏み出せなくなる彼女を後押しするのが、何とあの人物!…という点が、とても効いている。この意外性が、本作の魅力をぐっと押し上げていると感じた。
出逢いとは、つくづく妙なもの。親切で心優しい人以上に、思い出すだけで身の毛がよだつ、忘れられない嫌な出逢いもある。忌み嫌いたいものへの全面対決が、あらたな道への突破口となるのかもしれない。その時は不幸と思えた出来事が、後から思えば、何にも代え難い体験とるのかも…。そんな様々な過去の情景が、とりとめなく頭を駆け巡った。
人生は、不思議に満ちている。ヒロインを包み込む、ラストのあたたかくも力強い光が印象的だ。そういえば、船からの海と空、入国審査所の扉からも、光が差し込んでいた…! 闇あっての光。そんなことも感じた。
よかったです
主人公をとりまく周りの環境や主人公の気持ちの移り変わりに共感するシーンも多かったです。
この手の映画は気分が悪くなる人もいるかもしれませんが私は好きです。
映し出される景色や町並みも綺麗でした。
私も主人公のように軸を決めたらそれに従ってまっすぐ生きたいと思えるような映画でした。
人生の選択
この映画には、人生におけるたくさんの選択が出てくる。故郷を離れること、仕事に結婚…
主人公は、それらに直面するたび、苦しみ、悩みながら選びとっていく。
他人と全く同じ条件で生きているわけではないから、自分が深く考えて、決めたことに自分が責任を持つことになる。
でも、その選択が正しいかどうかは、選択自体ではなく、選択後の生き方によって決まるのではないかとも思う。お姉さんが故郷で多くの人に愛されていたように。
成長するけど主体なし
地味な田舎の女の子エイリシュが都会に行って頑張って成長していく姿はとってもグッときました。
ホームシックとか、初めての職場でのぎこちなさとかはあるものの、エイリシュは結構ハイスペで、新生活は順調そのもの。周りの人から例外なく可愛がられるので、多くの人が苦しむ対人関係の悩みも特になく、真面目で頭もいいのか勉強も上手く行く。
エイリシュを後押ししたお姉ちゃんも、「妹はデキるから、NYCでもイケる!」と見立てていたんだろうね。
物語の後半、故郷=ジムか、ブルックリン=トニーかで気持ちが揺れるのは無理もないことだよね。久々に地元に戻ったら仕事面でも頼りにされたり、イケメンが寄って来るなどチヤホヤされちゃって、上京前とは大違い。愛するお姉ちゃんの眠る地だし、お母さん1人になっちゃうし、そりゃー離れがたいよ。
ただ、ブルックリンに戻る選択をするきっかけは今ひとつだなと感じました。決断の要因が外からの働きけで、しかも「〜からの逃避」というのがちょっとね。内なる情熱とか意志の力とかではないし、トニーとの絆の再確認でもないしねぇ。
だが、それこそがエイリシュを象徴しているように思える。エイリシュは根性あるけど主体性はあまりない。これからアイデンティティーを確立していくのだろうが、エイリシュの本質はフワフワした適応マシーンのように思えて、個人的には人としての魅力を感じなかった。このまま主体なく歳を重ねて行くのであれば、エイリシュに暗雲をもたらすだろう。
それから、エイリシュはトニーには恋をして、ジムには好感を持っていたけど、2人とも愛してはいなかったのかもしれない。結婚も押し切られた形だったし。トニーの元に戻るエンディングは一見ハッピーだが、物語のあとすぐに離婚しちゃったりして。まーそれもハッピーエンドかもね。
あと、トニー一家が最高!弟とか、仲良しな雰囲気とか。イタリア系いいですねー!
行きの船に乗り合わせたマドンナみたいな金髪のねーちゃんもカッコ良かった。
トータルではとてもキュートな佳作だと思いました。
静かな物語でした
シアーシャ・ローナン、いつの間にあんなに上品な美しさをたたえた大人になってたんだろう。時代的にも昔の大女優、といったような風格と品性を備えたたたずまいに見とれていました。
ある雑誌の映画評の中で「逆・木綿のハンカチーフ」といった表現を見ましたが、ああいう選択は本当に嫌なものです。
よかった、納得いくラストで。
シアーシャ・ローナン、再評価。
吸血鬼に殺し屋、近頃特殊系女優の道を邁進していたシアーシャ・ローナンの演技力を改めて思い知った一本。
演出、当時の再現など見どころもあるけれど。
話は結局都合の良い「女の子末っ子の本領発揮」で、正直面白くはない。
ただ、シアーシャ・ローナンの輝きだけはそれはもう異質だった。
決してとびぬけた美人さんというわけでもなく、モッタリ(失礼)とした印象なのに。
少女から女性までを色気も含めて醸し出していたのには、改めて凄いなと思った。
主演女優を観るだけでも価値のある作品。
「少女」だった主演女優が「大人」の扉をノックする。
時々、映画は「少女」と「女性」の狭間に立った女優の一瞬をレンズに捉えることがある。「ブルックリン」は、まさにシアーシャ・ローナンが少女から女性へと美しくメタモルフォーゼする映画だ。「つぐない」ではまだ中学生だったシアーシャ・ローナンが年齢を重ね、今作で「大人」の扉をノックする。まだ大人にはなりきれていない、しかしもう子どもではないローナンの顔つきや体つきが、ヒロインの繊細な心の機微をセリフ以上に雄弁に語る。この役とシアーシャ・ローナンの出会いはまるでひとつの奇跡のようだ。
物語は初めての恋と迷いを描く。特に前半部分の、お互いに好意を持ち始めた者同士の初々しくも熱っぽい交流の描き方が爽やかで良い。この辺は脚本ニック・ホーンビィのうまさを感じるところ。そして中盤から舞台を再びアイルランドに戻してからは、一度極限まで接近した二人の心が静かに離れていく危うさを描く。姉の死、母の不安、友人の結婚、姉の仕事、そして新しい出会い・・・と言う具合に、ヒロインを引き留めようとする力がじわじわと働き始め、まるで言い訳のように滞在を引き伸ばしてしまうその姿に焦らされる。アイルランドとブルックリンの一往復が引き起こした変化の積み重ねが、そのまま少女が女性へ羽化する変化と連動して実にドラマティックだった。
結末には少し不満が残る。ヒロインが恋の迷いから目を覚ますその展開が、ヒロイン自身の力で迷いを振り切るというよりも、他人に刺激されて反動のように答えを出した(ように見えてしまった)のは、いくらか心許ない動機だろう。夫から届いた手紙の封も開けられないほど、そしてその手紙の返事も書けないほどに心が揺れていたのは事実だ。それを振り払う力が、ヒロインの内側からではなく外側からのベクトルで生じたという点だけがどうしても納得いかず、★5つにできなかったたったひとつの理由だ。
作中のローナンが纏うファッションが目に楽しい。登場は田舎娘らしく冴えない地味な服を着ているが、洗練を獲得するにつれて、色彩豊かでセンスのいい着こなしが見えてくる。グリーンのコートも良く似合っていたし、黄色のワンピースも可憐で爽やかで愛らしい。シンプルなデザインなのにぐっと目を引く、というのは本当に洗練されたお洒落だと思うし、それを着こなせるローナン自身の魅力に因るところでもあると思う。
この作品のように、大人の女性へと成長しようという若き女優の背中をぽんと押してやれるような映画が日本でも生まれてほしいと思う。そうすれば、日本の若い女優たちにも充実した年齢の重ね方が許されると思うのだが・・・(日本の女優さんは、ちょっと容姿が大人っぽく成長しただけで劣化呼ばわりされていて本当に気の毒だ)。
純文学を読んだような鑑賞感
まだインターネットも携帯電話もない時代に、アイルランドの田舎町で鬱屈した生活を送る推定18歳くらいの女の子がニューヨークに行って暮らす話だ。
大都会に戸惑いつつ、ホームシックと闘いながら徐々に慣れていく。そして物語が少しずつ進むにつれて、主人公も少しずつ変化していく。それがこの映画の主眼で、主人公は大人しく従順だが必ずしも純粋無垢ではなく、隠しごともすれば恋の駆け引きもする。時には規則を破ることもある。
アイルランドとニューヨークを一往復半する間に、主人公は世の中のことを理解していき、自分の居場所を自分で築くようになり、主体性を確立していく。映画はいいことも悪いことも両方備えた等身大の少女の姿を偏りのない視点で正面から捉えている。その率直な表現は、純文学の作品の読後感に似ていて、とてもさわやかだ。非常に気持ちのいい映画である。
苛立つ
なぜ苛立つのか、それは主人公が何ひとつ解決せずに
『あ、私ここ嫌いやったん忘れとったー!』
ばりのノリで、全ての問題をぶん投げ、なんとなく解決した気になり、悟ったような表情で、都合良く優しくしてくれる人の元に逃げていくから。
主人公に終始寄り添う構成にも関わらず感情移入は、私にな出来ませんでした。
主演女優が美しい
アイルランドの美しい風景が見れるかと思いましたが、そういう景色はありませんでした。代わりに主演女優の美しさが印象に残っています。
ストーリー自体はチープな恋愛ものです。もう少し主演の内面に踏み込んでくれると良かったのですが。。。正直消化不良です。
それだけならば星は2.5にしたいところですが、個人的には、当時のアイルランド移民の雰囲気がぼんやりとですがわかったのでおまけで+0.5としました。
成長と巣立ち。
劇場鑑賞中、隣に座ったオバサンがほぼ泣きっ放しだった。
それが分かるものだから、こちらの感動も増してしまった。
田舎から上京した女性、嫁いだ女性、日本もこの時代なら
女性は故郷を離れた人が多いだろう。もしも親族に何かが
起き実家へ戻ってもすぐに夫子が待つ住処へとトンボ帰り。
私の母もそうだった。離れるほどに故郷には帰れなくなる。
姉の協力で単身ブルックリンへと旅立った彼女は、都会で
洗練されて美しい女性へと成長する。彼氏もできて結婚も
視野に入れ付き合っていたところ、姉が急逝。祖国へ帰る
のだが、この時彼氏の方から「結婚」を迫ったのが実に賢い!
もう帰ってこないかも…と単純な危機感を覚えたのだろう。
洗練された彼女を誰もが離さない。幼馴染さえ彼女に靡く。
これって悪いけど、彼女の本質を誰も見ようとしていない。
羽ばたきたくて都会へ渡った女性が、(もちろん家族や友人
は大切でも)また出ていかない保証はない。ここで封じ込め
ても、きっと彼女はまた違う道を探し出すような気がする。
なので母親の態度は良かった。辛いが娘を解放してあげた。
同じ移民として苦労を重ねたイタリア系の彼氏とのほうが
彼女には合いそうだと思っていたので結果的に良かったが、
故郷の幼馴染がドーナル(個人的に好き)なのは参った正直。
こりゃ大いに悩むな確かに。どちらもお似合いだったしね。
(あのシアーシャ?と思ったくらいに成長。美しい瞳は健在)
エイリシュの現実主義は「ゴッドファーザー」だ。
アイルランドからの移民の女性という退屈になりがちな題材を、主人公エイリシュ・レイシーの人生の機微を捉えた引き締まった物語へと昇華させている。
主人公がニューヨークへ渡るまでの部分は、テンポよくつないだカットで語り、観客を退屈させることなくうまく乗り切る。
物語が本格的に動くのはエイリシュがニューヨーク行の船に乗ったところからである。
船が嵐に突入したところでは、船酔いで嘔吐する場に困るどころか、下のほうにも不自由をするエイリシュの姿が生々しく描かれる。ここでは旅慣れた同室の客に教えられて、なんとか彼女はトイレを奪回することができる。
多難な前途を感じさせるこのシークエンスは、しかし同時に、生き抜くために必要な冷徹さを親切でお人好しのこの田舎娘が身につけたことを示す。奪回したトイレを、彼女は二度と相手には譲らない。相手が自分と同じように悲惨な状況に陥ると分かっていながら、彼女自身の従来のモラルに反することを貫徹するのだ。
ここでエイリシュが得た現実主義の徹底こそが新世界のモラルであり、本作の太い経糸となる。ここでは若い女性の夢や恋はその現実主義に危機をもたらすイベントとして背景に追いやられる。
この映画が一人の人間の生き様を描くまでに深まった最大の理由はここにあるのではないだろうか。
ダンスパーティーで恋の相手を見つける際にもその冷徹さは発揮される。
鼻持ちならぬ新入りを良くは思っていないエイリシュは、自分が男に誘われたことを理由に、その新入りをダンスパーティーに置き去りにする。大家からこの新入りの保護者役を任されていたにもかかわらず、彼女を残して夜の街へ男と二人で消えたのである。
そして、エイリシュの現実主義にとって最大のリスクテイクが、下宿の自室へ誘い込み肉体的に結ばれるときであろう。
このときの彼女は、それまでに築いてきた下宿生活での信用と優遇を賭して、お互いに本気で好きだと分かった男との結婚の約束を勝ち取る。
重要なのは、これがロマンスを描いているのではないということである。移民という社会の新参者が、現実的な判断の積み重ねによる行動によって、その社会における地歩を固めていくことを描いているのだ。
ここを単なる若い男女のロマンスと捉えると、後に姉の墓参りの為に戻った故国で、アイルランドの金持ちの息子に求婚される前後のエイリシュの行為が不可解になるであろう。
しかし、この一時帰国の部分にも彼女の現実主義は貫かれており、今後の人生を故国で過ごすのか、アメリカで過ごすのかという二者択一を彼女の現実感覚に基づいて行っている。
ただしこの時点で彼女が故国に残ることなどないであろうことは、そもそもからして明らかなのである。エイリシュが着ているニューヨークの服が素朴なアイルランドの風土の中では目立ちすぎている。
本作は「ゴッドファーザー パートⅡ」における、ヴィトー・コルレオーネの若かりし日々の回想部の女性版ともいえる。主人公エイリシュ・レイシーが人生を託すのはイタリア人の男なのは、たまたまではあるまい。
美しく汚れなき物語
想像していたものとかなり違っていた印象。これほどまでに映像に魅せられるとは─。
ノスタルジックを漂わせつつ色彩豊かで煌びやか。単に郷愁というものの力に頼ることなく、しっかりと今と未来をつむぎ逢わせている確固とした映像に、終始感服の涙を催す。
構図、色彩、脚本とサウンド、あらゆる要素が見事に溶け合い、笑いと感動を誘い出す。
展開されてる話は、確かに汚れなき奇麗事で、現実世界を装ったファンタジーでしかない。それでも、これを単なるアメリカ賛美の映画と捨て去るにはあまりにももったいないくらいに、素晴らしい結晶がそこにある。美しいものをいつまでも眺めていたいという願望と等しく、この映画も繰り返し眺めていたいと思ってしまった。
ストーリーを追ってしまう映画というものは、とかく一度見てしまえばあとは見なくてもいいと思ってしまうものなのだが、映像と音がしっかりした映画であれば、ストーリー関係なく何度でも見たいと思うわけで、この映画においてもその範疇に入っている。
田舎者が都会で生き抜く話であり、男女の恋愛を描いたにすぎないわけで、星の数ほどに描かれてきた題材。しかも、結局は男を選んで他のものを捨てたというツッコミどころもある訳なのだが、それでもこの美しい映像は非常に心にしみこんでくる。
特に音楽がアイリッシュ的調子からいつの間にかアメリカ的に変わっているという演出と、対象と背景との色彩コントラストには恐れ入った。
シンプルにこんな映画をつくりあげてしまうアメリカというのは、恐ろしく、かなわないと思ってしまう。
ずるい女
忘れていました。
「つぐない」の時も、まだ若かりしシアーシャ・ローナン演じるブライオニーの小悪魔ぶりに翻弄されましたが、今回もか…という感じ。
計算高い女を演じさせたら天下一品。観後感が何とも悪い映画でした。
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