劇場公開日 2016年4月1日

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あやしい彼女 : インタビュー

2016年3月31日更新
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変顔、毒舌、涙の熱唱…多部未華子が魅せるキュートな「あやしい彼女」

もし若返ることができたら?――誰もが一度は考えたことがある夢物語に、女優・多部未華子は「アルバイトをしたことがないので、図書館でアルバイトをしたい(笑)」。そんな多部が、キュートなルックスとは裏腹に、相手関係なく毒舌を浴びせる威勢の良さで周囲を圧倒する不思議女子に変身。73歳でありながら20歳の若かりし日の肉体に戻った「あやしい彼女」に挑んだ。(取材・文・/編集部、写真/山川哲矢)

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家族とケンカして家を飛び出し、ふと目に付いた写真館にふらりと入った73歳のおばあちゃん、瀬山カツ。一人娘を育てることにすべてを注ぎ、あっという間に老後の人生に突入してしまったが、あこがれのオードリー・ヘプバーンの写真に触発され、カメラの前で目を輝かせる姿は少女そのもの。倍賞美津子が見せるカツの強さと少女性は、多部演じる若返ったカツ=大鳥節子に引継がれている。

外見は20歳の少女だが、中身は73歳のおばあちゃん。「撮影前に倍賞さんとお話する機会をいただいて、『戦災孤児だから逃げ足が速い、貧しく育ってきたからすごく愛情深いといった共通認識をふたりで持っていたらいいね』という話をして、走り方やわかりやすく特徴的なところは一緒に相談しながら作っていきました」「倍賞さんが先に撮影をされていたので、初めの頃は現場を見学させていただいたり、現場に私がいないシーンはモニターで見せてもらったりして、常にカツさんを意識していました」と二人三脚でヒロイン像をつくり上げた。

2014年に大ヒットを記録したオリジナル版「怪しい彼女」を、数々のコメディ映画を手がけてきた水田伸生監督が再構築した。水田監督は「まず自由に演じさせていただき、『ここはちょっとこうしてみようか』という細かいものや、このポイントだけ際立たせる」という俳優の持ち味を生かす演出で、現場は「段取りが終わるといつも『やりにくいところはない?』『大丈夫?』と気にかけていただき、テストも何回も重ねるのではなくすぐ本番に行きました。コメディ部分にせよ、シリアスなシーンにせよ、役者が一番演じやすい空気を作ってくださいました」。そんな中、「(オリジナル版が)すごく面白くて3回くらい見てしまいました」という多部は「台本を読んで現場に行っても、良くも悪くもいろいろ比較したり頭に残っていたのですが、監督が全く違う撮り方をしていたので途中から意識したり比べることもなくなりました」とキャラクターに入っていった。

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笑顔、変顔とくるくると変わる表情、軽快なステップなど、カツと節子は年齢を超えた天真爛漫な輝きを放つ。さらに、節子になりきった多部が熱唱する往年の名曲などが、スクリーンを通じて見る者の心を打つ。最も難しかったという「悲しくてやりきれない」は、涙をこぼしながら歌い上げている。劇中ではそんな堂々とした歌手姿を披露しているが、意外にも多部は人前で歌うことが苦手だそうで、撮影の3カ月前から特訓を重ねた。

「先生と1対1でのボイストレーニングを週に1回、撮影が迫ってからは週2、3回やっていました。音程が違っていたり、ピッチが速いなどすごく初歩的なことから始まったので、『大丈夫かな』と思いながら家で録音したものを聞いていたのですが、そういう経験は初めてだったので何が答えなのか、目的地がどこなのかも分かりませんでした」と手探り状態。それでも「テクニックも技術もないですし、持ち味も特に発見できなくて。でも、最終的に気持ちが大事だと言われて、台本を読んでその気持ちに沿ってレコーディングをしました」とマイクの前に立った。

のど自慢大会、路上ライブと歌う舞台もさまざま。観客とひとつになるライブ会場では、フェスの熱気に包まれた多部が生き生きとした笑顔を弾けさせている。「本当に盛り上げ上手なエキストラさんたちで、アーティストさんの『(ステージに立つと)気持ち良い』『みんなに助けられている』という言葉がすごく伝わりました。あの空気感やライブの一体感をエキストラさんが作ってくれて、本当に良い疑似体験をさせてもらったので印象深いです」と充実感をにじませる。

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歌とともに、多部が次々と着こなす衣装も本作の魅力のひとつだ。「ローマの休日」のヘプバーンを思わせる白シャツ&フレアスカートにアップスタイル、ドットシャツとかわいらしいファッションで魅力を振りまいている。色とりどりの衣装の中でも、お気に入りはのど自慢大会で着用した大ぶりなフラワープリントのレトロなワンピース。「衣装合わせの時からかわいいなと思っていたのですが、出来上がった映画を見て衣装が映えて素敵だなと思って。ほかにもスカーフの使い方がオシャレ」と声を弾ませた。

歌にファッションに、多部の魅力がふんだんにちりばめられている本作。コミカルな作風の根底では、若返ったことで、新たな生き方とともに家族との関係を見つめ直すカツ/節子が描かれている。「いろいろな環境があると思いますが、絶対に家族はいるもの。両親がいるもともとの家族、自分たちで作る家族といろいろな形がある中で、『家族ってなんだろう』と改めて考えられるような映画だと思います。娘だったり親だったり、さまざまな立場や方向で見られる映画だとも思うので、どの世代の方が見てもただ面白いだけじゃなくて考えさせられたり、劇場を出る時はすごく前向きになって出られるよう楽しんでもらえるのが一番」。

今回、前代未聞のヒロインに挑戦した多部。同級生と打ち解けられない女子高生、周囲に流されるように生きてきた女性など、役ごとにさまざまな表情を見せてくれる。「この役をやりたいというものはないです。これからもいろいろな職業の役をいただいたり、立場や求められる役も変わると思うので、考えて臨めるくらいプライベートを充実させて、いろいろな引き出しを持てるような生活を送りたいです。どんな役がきても大丈夫な豊かな表現力を持てる生活が一番だと思っています」と等身大の思いを明かした。

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