劇場公開日 2016年5月7日

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「ワンカットの理由」ヴィクトリア(2015) 大方大輔さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ワンカットの理由

2016年6月25日
iPhoneアプリから投稿

普段の生活って、
起床してから眠るまで、
意識はワンカットだ。
(途中で昼寝したり事故とかにあわない限り)

この映画を観て、
逆にそんなことに気づかされた。

普通の編集が施される映画は、
不要な部分や、意味なく間延びするところをカットし、テンポ感や時間の進行などを演出する。

しかし、この映画ではあえてそれが全く行われていない。
(眠くなる人もいるだろうねそりゃ)

だから観客は、まるで映画のなかで生きているような錯覚に陥る。

この映画のなかには確かに間延びしている部分や、退屈を感じる、特に意味のない「空白の時間」が随所にある。

だから効果的なのだ。

私たちの生活にも、たくさんの「空白の時間」があるからだ。

生活の意識と同じことが映画で起こっているから、強いリアリティを感じる。

観客は映画を観始めたとたん、
強制的に映画の中で生きることになる。

空白の時間はあるにはあるけれど、
めちゃくちゃ濃密で劇的な120分。

映画が暗転した瞬間、
ものすごいリアルな悪夢から目覚めたような感覚に陥った。

4Dや3Dとか派手な仕掛けがなくたって、
観客は映画の世界を生きることができる。

DEPO LABO