永い言い訳のレビュー・感想・評価
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自分を大事に思ってくれる人を、簡単に手放しちゃいけない。離れる時は一瞬だから。
夫や家族の対比なんかじゃない。そんな簡単なメッセージではない。
役者一人一人が演じる感情が、これでもかというくらい溢れて迫ってくる。
熱い涙も、笑う瞬間も、色んな感情を与えてくれる、とても素晴らしい作品でした。
是枝監督の「誰も知らない」とどこか似ているな。子供たちの無邪気で無垢な可愛さ、小さな感情の揺れも見逃さない丁寧で一つ一つを大切にしている事が伝わってくる撮り方。
と思って調べたら、監督の西川美和さんは、テレビマンユニオンの面接担当だった是枝裕和監督に意気込みを見出され、映画『ワンダフルライフ』にフリーのスタッフとして参加された経緯があったのですね。そしてエンドロールで流れて気がつきましたが、企画協力に是枝さんの名前が。納得。
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妻がバス事故で亡くなった時に不倫相手と真っ最中だった最低な幸夫(本木雅弘)。でも、妻同時の死をキッカケに大宮家と関わるようになり、変わっていく心情。メンツやテレビ映り重視の幸夫だったのに、岸本(池松壮亮)の言葉に違和感を感じるようになる。以前の自分だったらすんなり受け入れただろうに。
家族に小さな歪み、交差する心のすれ違いが生じ始めた時。歪みが、ほころびがまだ小さいときに、深く心を閉ざしてしまう前に、立場は違えどそっと気づいてくれて寄り添ってくれる、潤滑油のような幸夫のような存在が、今の世の中で生活している一人一人に居てくれたら。と思った。
家族でもない赤の他人だけど、大宮家にとって、子供たちにとって、幸夫はかけがえのない大切な存在。
冷めきっていた幸夫の心の秒針の針が、大宮家と触れ合う事で暖められて、だんだんと動き出していく。
描かれてはいないが、最低な人間だった幸夫も、そうなってしまった背景があったのかもしれない。否定から入るのではなく、汲み取る暖かさの大切さも感じた。
またゆっくりと見たいなと思える素晴らしい傑作でした。
好きな作品
出だしのサチオが髪を切ってもらう場面、何を言っても否定して持論を繰り広げる嫌な夫と、もう改善することを諦めた妻のシーン。
後に出てきた『もう愛情はひとかけらもない』という言葉、このシーンを見れば当然だと思う。
陽一くんと出会って、子供達の世話をしているうちに段々と浄化されていくサチオ。
自分でも、前のダメな夫の自分を忘れかけてた時にケータイの『ひとかけらもない』の言葉を見て愕然とする。
子供達の世話をして生きてる実感を得ていたのに、科学館で出会った女性に、自分の居場所を奪われそうになって、子供達と陽一に暴言を吐く。あれはイカン。
陽一が前を向こうと、妻の声を消去したときや、子供達のシーンで何度も泣けたー。
最後は希望を持って終われたので良かったけど、お兄ちゃんが学ラン姿だったので、私立行かずに公立中になったのかなと思った。
プライムビデオで鑑賞。
さすが、西川美和監督❗️
不倫の最中に、愛の無くなった妻を事故で亡くした幸夫(本木雅弘)。同時に愛する妻を亡くした大宮(竹原ピストル)。悲劇の夫を演じる幸夫は、大宮の2人の子供の面倒をみるという、これまた贖罪を演じていくのだが、次第に心変わりしていく。西川監督は、痒いところに手が届くような描写を表現するのがとても上手く、自分的にはトップクラス。冒頭の幸夫の携帯ストラップが揺れてるシーンや、大宮が長男を殴ったところで、別の部屋で妹が無言で聞いているシーンなど、すごく細かい。素晴らしい。
妻を亡くした大宮の部屋や生活が徐々に荒れていく描写など感服です。
本木雅弘のまるで小説の中の人みたいな演技も素晴らしかったが、竹原ピストルにもやられましたね!また、子役の2人が本当に良い演技してました。将来主役級の俳優として成長する予感がありました。
夫婦のカタチ、家族のカタチ
妻に余り関心を持っていない小説家の幸夫が、或る朝突然、妻が不慮の事故に巻き込れた事を知る。当たり前に過ごしていた日々の大切さ、何故きちんと向き合わなかったのか、自身を支えてくれていた存在の大きさに、失って初めて思い知り苦悶する様を、本木雅弘さんが巧みに演じる。
幸夫が当初戸惑いながらも、子供達との触れ合いを通して徐々に喜びを感じ、人としての優しさを取り戻していく姿に魅了された。
トラック運転手の父(竹原ピストルさんが熱演)に対し、心を震わせながら反抗的な言葉をぶつけてしまう真平のやるせない思いに泣ける。藤田健心君、名演技でした。
幸夫の妻夏子を演じた深津絵里さん、恋人智尋を演じた黒木華さん、それぞれに魅力的でした。池松壮亮さんの演技もいい。
ドラマ「凪のお暇」で小学生の少女を演じた白鳥玉季さん、この作品で既に名子役ぶりを発揮されていたのですね。
台詞の一言一言が刺さる作品でした。
西川美和監督の見つめる眼差しの優しさ、深さに改めて魅了されました。
映画館にて鑑賞
邦画ならではの良作
深っちゃん(深津絵里さん)が出てる時点で、私の中では評価ダダ上がり。なんとなく見始めたらとても良かった。
最初の髪を切るシーンで、長い付き合いからくる夫婦2人の溝がよく伝わってくる。
もっくん演じる作家の幸夫が、今まで自分の周りにいないようなタイプで、不思議な感覚で見ていた。
ああいうタイプの男性が、子供を目の前にしてあんな優しさを見せるなんて、意外というか、、そういう一面があったから2人は惹かれあったということなのか。単なる罪滅ぼしとは言えないくらい、子供たちとの関係が特別だった。本人が子供のような人だから、わかり合えたのかな。
なっちゃん(深っちゃん)の真意は語られないけれど、間接的に想像させられるシーンが散りばめられる。
未送信フォルダのメッセージは、すごいパンチだけど、それが真意とも言い切れない。幸夫くんを打ちのめすには充分だったけれど。
髪を切っているのが伏線であることもわかっていながら、だんだん伸びていく髪、散らかっていく部屋、モッくんの動作に、引き込まれていく。中からえぐられるような心情が、なんとも苦しい。
それなのに子供との対話はとても温かい。
子役がまたすごい。しんちゃんもあかりちゃんも。
自然体の演技といい、映画全体の空気感といい、是枝監督に通じるなぁ、と思ったら、西川美和監督だから当然か。
竹原ピストルの熱苦しさもいいスパイスで、子供心の葛藤も、ちゃんと回収してくれた。ゆきさんがいい奥さんでお母さんだったこともよく伝わる。なっちゃんがそんな家族と親しかったことは、とても意味がある。
余計なセリフがないシーンもあって、映画っていいもんですね、水野晴郎。と思った。
「ちゃぷちゃぷローリー」の完成度がすごい(笑)
素直に泣ける人と泣けない人。
とっても考えさせられた。
突然。愛する妻が事故で亡くなる。妻が居なくなっていつまでも泣いている男と自分で納得して泣かない男。(泣けない男)なぜ泣けないのか理由を考える。泣けない事には訳があった。妻への愛が冷めていた。(妻も気付いていた)友だちの夫は妻を愛していた。
本木の言っていることが理屈っぽく聞こえる。…… 何を言っているんだろう。 よく聞いてみると言っている意味が分かる部分もある。(誇示付け) 自分本位だった本木が子供と接する事で人に寄り添っていく。生活に潤いがでて本人の意識が次第に変わりつつある。家族と関わることで自分の中の何かが変わる。子供がいることはリスクと思っていたが人を育てることで人はもっと柔軟な考え方ができるのかも。妻の死から沢山の事を学んだ。 本木の細かな表情がよかった。
夫婦の愛情は当たり前の日常への感謝から
この映画を観ようと思ったきっかけは、
離婚しようと話し合っていた夫婦でも、
ある日突然片方がこの世を去った時、まだ「夫婦」だという事実にどう向き合うのか?を知りたかった。
戸籍上の夫婦でも、心は縛れない。
涙の一筋も流れない事もあるだろうとは思った。
だが、そんなにクールに割り切れないのも「夫婦」
本当は子供が好きだから、仕事はあるけれど「貴方の子供が産みたい」と、口に出すことをしなかった妻の思いを感じると切なくなった。
また、息子と父親の関係の深さもしみじみさせられる。
この映画はシンプルに、ほかの親族が加わらないが、
リアルでは、色んな二親等、三親等以上の親族が口を出してくるからややこしい。
映画からその先の夫婦、離婚、子育て、など思いが深まりました。
そうか~ こんな映画だったのか
「そうか~ こんな」映画だったのか」
「僕みたいに
愛していいはずの人が誰もいない人生になる」
はたして私はどうなのだろうか
妻も子供もいる、だけど陽一(竹原ピストル)のようにストレートな感情ではないように思う
どちらと言われれば幸夫(本木雅弘)よりのように思えてなりません
気持ちがわかるのですよ、全部じゃないけど
子供の時からあまり感情を表に出さずに今まできましたからね
笑いますよ大声で、でもたぶん装ってる、それか演じているとでも言いましょうかね
自分の本音を酒飲んだって言わないんです
たぶん尋問されたら直ぐしゃべっちゃうけどね
だって大したこと考えてないから
何でも我慢しちゃうんですよ人といると
それが家族でもです
だから時間があれば一人になってる
映画見たり山行ったりね
いまさら変えられないでしょ
その点で言えば幸夫君は凄いです
他人の家庭を見返りなしで助けているのだから
あれが妻に対しての謝罪というか自分への言い訳なのでしょうね
突然人がいなくなるって辛いです、歳を取っていたり長患いとかでなければそんなこと思わないものね
そればっかりは誰にもわかりわしませんね
二人の子どもがかわいかった
主人公のサチオの言動には理解できないところも多かったけれど、子どもとの向き合い方は良かったと思う。子どもたちの描き方が通りいっぺんでなく、複雑なところにリアリティを感じた。本木のアップが映るたびに、端正な顔だなーと見入ってしまった。
すごく心に残る映画でした
すばらしき世界からこの監督を知り、観ましたが最高でした。この監督のつくる映画の他者は美しいです。
役者さんの選び方だったりセリフの選び方も美しいです。すばらしき世界同様、カップ麺のシーンだったり食べ物を使う演出が素晴らしいです。
怒りの演技、声の振り絞り方も最高です。
ニンニク臭い息!いや、トラック運転手ならCO2くらいは知ってるだろうに・・・
妻を亡くしたとき、いったい何を失ったのだろうかと茫然自失となる小説家・津村啓こと衣笠幸夫。鉄人衣笠と奇しくも同じ名前だった幸夫くん。妻には結婚して以来ずっと髪を切ってもらっていたことが、他人に言える唯一の愛情。曲がりなりにも小説家なのだから、人を感動させる術を知っているところが哀しい。
そんな時、トラック運転手・大宮陽一(竹原)と知り合う。同じ遺族で亡妻が親友同士。彼には遺された中学受験を控える真平と幼い灯がいたが、彼らの面倒を見ることで、自分自身と家族というものを見つめなおすチャンスを得た幸夫。食事だけのつもりだったが灯のアナフィラキシーショックが彼を衝き動かしたのだろうか、家庭のことを顧みることのできない父親と対比させようとしたのだろうか、とにかく幸夫にも父性があることを確認したかったに違いない。
冷え切った夫婦関係ではあったが、そこからはドキュメンタリーに出演したり、小説を書いたりして、自己を見つめなおすきっかけとなり、愛はあったのだろうかと、自分と亡妻とのことを書き連ねたのだろう。“長い”じゃなくて“永い”という形容詞には妻を弔う気持ちも含まれている気もするし、忘れたいという想いよりも永遠の贖罪の念を込められているのかもしれません。
やっぱり「守る者がある」ことの幸福感。純朴な男だけれど、「自分が死ねばよかった」という点だけは幸夫の言い分が勝っていた。生きることの尊さは、むしろ灯ちゃんの方が知ってたぞ!といったシーンもあった。お互いに欠けてる部分を補うべきところもあり、幸夫と陽一の関係は生涯親友として育まれるだろうなぁ~と、そっちの関係も爽やかだった。
どうでもいいことですが、本木雅弘が貴乃花親方に見えてしょうがなかった。ドスコイ!
湖畔にて
亡き妻を罵倒するシーンが面白い。家族に潜んでいた影が不幸を契機にコントラストをもって浮き上がる。その影に自分を隠す余地はもうない。自分の輪郭を自らでなぞるように自問する。軽率な編集者と思いきや、終盤では意外な表情。この辺の回収は巧み。案外、他人には輪郭はしっかり見えている。人間関係に身を潜め、周りは見えぬものと知らぬは自分ばかり。これは戒め。
自分であればと問うて観てしまうが、用意された類型が利己的と単純に振れていて、想定外の行動が多く、共感は持てなかったところ。
となりのトトロ。
まず滑舌と録音が良い。
次のシーン、カット、表情、台詞を待つスリルとそれを裏切らぬ濃密な映画体験。
邦画の星、西川美和は亡き者深津絵里の目線で全てを見通し、本木雅弘の自己ベスト演と、それをも喰う驚愕の子役演を引出した。
必見。
原作にある蛍の墓よりも、となりのトトロとの類似が快打の要因の一つ。
母の不在、賢兄愚弟、夜のバス停、自転車、少しだけ風呂。
トトロトトロとチャプチャプも。
子の健気な可愛さを描くに鉄板のアイテムなのだろう。
【長い長い坂道】
長い長い坂道を自転車で登る。
ぐいぐいペダルを漕ぐ。
坂のてっぺんが近づけば近づくほど、息があがって、脚にも力が入らなくなって大変だ。
でも、もう一息のところになると、パッと視界が開けて…。
永い言い訳は辛い。
永い言い訳は、後ろめたさや、自分の弱さから始まる長い長い坂道を自転車でフラフラしながら登るようなもので、そして、坂のてっぺんはなかなか見えない。
夏子の事故の時、他の女として寝ていた幸夫。
亡くなるのは父親の陽一の方が良かったと考えた真平。
だから、二人は大切な人の死や悲しみに向き合えないのだ。
そして、
幸夫は真平を通して、
真平は幸夫を通して、
自分自身と向き合っているのだ。
きっと、お互いを理解することで、自分を許してあげたいのだ。
対比される、ピュアな陽一。
無邪気で率直な灯。
内面(うちづら)と外面(そとづら)の使い分け。
良く見せたいが為の虚飾。
期せずして失ったもの。
失うべくして失ったもの。
どうしてそうなったのか。
思い返したら、僕だって言い訳だらけの人生ではないか。
ずっとあると思っていたものが突然なくなる。
夏子自身だけではなく、夏子の気持ちが既になくなっていたことを知る幸夫。
生きていると、言い訳が必要な事は沢山ある。
人間だから。
でも、同時に自分自身と向き合うことも大切だ。
永い言い訳を終わらせることが出来るかもしれないのだ。
長い長い坂を登り切るには、少しずつ、ヒーヒー息を切らしながら、確実に、ペダルを漕がないと、てっぺんには辿りつかないのだ。
だが、必ず坂道に頂上はある。
「永い言い訳」は、僕の大好きな作品だ。
人生は他者だ
個人評価:4.7
原作も監督が担う作品がとても好きだ。
シンガーソングライター。
それが出来る数少ない監督。西川美和作品がたまらなく好きだ。
妻と向き合う事をしなかった夫。妻の死と向き合うには、過去の妻と向き合う事から始めなければならない。
同じ様に心に隙間が空いた大宮家と、お互いを補い合うドラマが、とても人間味がある物語となっている。
最後の人生は他者だと記した主人公。映画イントゥー・ザ・ワイルドの主人公の様な人生と幸せへの哲学。素晴らしい作品だ。
妻との距離を考えながら映画見ました
妻の本心がわからない、わかろうとしない夫が、妻の死に直面し、自分を見失い、そして他人の家族を助けることで自分の生き方を見つめていく。心にジーンと訴えかける、いい映画です。
あー、いるいるこういうの
あーこういう男居る、ほんと居る、
まじでクソ、しかも面白くないし、
そこまで力あるわけでもないのに
すごいプライド高いやつ、居るわー
っていうのがすごく上手く描かれてて、
イラッとするポイントの多いこと。
それをリアルにすごく自然に取り込めてるのは、
やっぱり女性監督だからこそなのかな。
あれをさらにリアルに
中途半端なぶさいくなんかにやられてたら
見てられなかった。
本木雅弘がイケメンで良かった。
お兄ちゃん役の子が良かった。
白鳥玉城ちゃん、
小さい頃からああいう役なんだな、
本当に顔変わらないな、と思った。
お兄ちゃんの受験どうなったとか、
あの本の中身とか、
保存されてた下書きの続き、
深津絵里サイドの物語も見たくなってしまった。
感想冒頭では、普段の振る舞いや態度に対しての、
あー、いるいる、だったけど、
映画全体を振り返っての感想も、そこに行き着く。
向き合えない、向き合おうとしない、
向き合うことから逃げて、
人と接することで変わっていく心。
向き合ったつもりになってるけど、
実際は自分に都合よく辻褄合わせしてるだけ、
結局なにも分かってない、分かろうとしてない、
自分に酔ってる女々しいタイプにありがち、
あー、居るよな、こういう言い訳がましいやつ、
って思ったところで、
タイトルが「永い言い訳」なことに気付いて、
なにか腑に落ちた感。
もっと不倫や死が重たく描かれてるかと思ってたけど
嫌な重さがなくて見やすかった。
劇中で語られていない部分の想像を掻き立てられる作品
本木雅弘さんを筆頭に、自然でリアルな演技に終始惹き込まれました。まるで現実のドキュメンタリーを見ているような会話のやり取りに、役者さんたちの力量を感じました。
また、タイトル通り、映画の中ではエピソードとして取り上げられていない場面や劇中で亡くなった2人の生前の様子を、他のキャラクターの発言などから想像させてもらうことのできる、奥行のある作品と感じました。
例えば、主人公幸夫に対し「もう愛してない。ひとかけらも」という衝撃のメッセージを遺していた夏子ですが、生前大宮一家と交流した際には、幸夫のことを「幸夫くんがね、幸夫くんがね。」とたのしげに話題に頻繁に出していたのではないかと私は想像しました。
でなければ、陽一が初対面であれだけフレンドリーに「幸夫くんだよね!?」と親しみをもって呼びかけ、「会いたかった人にようやく会えた!」というような接し方はあの場でなかなか難しいのではないかと思ったからです。子ども達が懐くのにそう時間がかからなかったことからも。親友のユキには夫婦間の悩みなど打ち明けていたかもしれませんが、少なくとも陽一や子ども達には幸夫についてポジティブな印象しか与えていなかったんじゃないかな〜と想像しました。
だからこそ余計に衝撃のメッセージの真意はわかりませんが、おそらく本当はまだひとかけらも愛していなかったわけじゃないのではないかと私は思います。ひとかけらも愛していなかったのならわざわざ携帯に文字を入力し保存することすら手間に感じるかとも思いますし...。
また、はじめて幸夫と大宮親子で外食した際、灯がアナフィラキシーショックを起こしてしまった場面では私も本当に不安になりました。「お父さんエピペン持ってないの??」としっかり者の長男が言うと、慌てふためく父親の姿に目を覆いたい気持ちになりました。
ユキの生前は、家族で外食の際は真っ先に気をつけていたことでしょう。娘の命に関わることですから..。それにも関わらず父親はオーダーの際に気を配ることもなく、いかにユキに任せきりだったかがうかがえます。天国のユキがこの場面を見ていたら、不慮の事故で突然亡くなったしまった自分を責めてしまったかもしれませんね。
幸夫は、大宮家に関わるようになり、かつて経験したことのない子どもの世話や家事を経験し、予想外に自分の居場所や存在価値を見出す。
もしも、夏子との間に子どもをもうけていたら、彼の人生はもっと輝いていたのかもと、思ったり思わなかったり。結局は失ってはじめて気づいたということなのだと思いますが...。
こんなふうに、アナザーストーリーを自分で想像し、物語をさらに楽しませていただくことができました。とても心に残る作品でした。
強烈なファーストシーン
不機嫌で堂々巡りな愚痴、穏やかに髪をカットする鮮やかな手さばき、対照的な夫婦のやりとりが強烈に印象に残るファーストシーン。
この後の展開で、夫 幸夫くんの印象が良くなろうとも、この時の妻の穏やかなキラキラした印象は最後まで尾を引く。
なんて凄いシーンなんだろう。
愚痴を聞いてもらうのは、付き合う前の恋愛感情を抱いてくれている相手が最適。友人とそんな話をしたばかりだったので、特に幸夫くんの愚痴は耳に残る。
大切にしてくれる相手を蔑ろにする罪は深く、拭いされない、そんな展開に向き合う大切さを確認した。
取り返せない事態が起きないと気がつかない、人間らしくて皮肉な顛末。
近しい人こそ1番に気を遣わなければいけないって私の自論の答え合わせを見た。
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