劇場公開日 2016年4月29日

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「死の入り口、生の出口」追憶の森 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0死の入り口、生の出口

2016年11月3日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

難しい

幸せ

2015年のカンヌ国際映画祭で上映されるやブーイングを浴び、ガス・ヴァン・サント監督のワースト作とまで。
確かに万人受けしそうな作品ではないが、そこまで酷い作品ではなかった。
最も、この監督の生死を扱った作品は取っ付き難いものが多いが。

死の為に死の場所を訪れた主人公がそこで見出だしたのは“生”。
死を通して生を浮かび上がらせる、話の展開的には悪くない。
海外で不評だったのは、東洋的な死生観。
でも輪廻転生などは日本人には分かるものなので、本作は日本人が見ると普通に見れるわけ。
欧米(だったかな?)の死者がヴァルハラで待っているというものが日本人にはピンとこないのと同じ。

それより、話の作りで難点が幾つか。
ほとんど森の中が舞台なのでヘンな日本描写はあまり見られなかったが、主人公が出会う日本人が都合よく英語を喋れるのは何もこの作品に限った事じゃないが何とかならないものか。
また、主人公は妻を亡くしている。それが自ら命を絶とうする理由。
妻は腫瘍が見つかり、手術は成功して、不仲だった妻と関係が良好になるが…、あのシーンは妻がどうなるかすぐ察しが付き、ちょっと安直であった。
それと、何でアメリカ人が自殺の為にわざわざ青木ヶ原樹海を訪れる不思議は分からんでもない。

マシュー・マコノヒーと渡辺謙の演技にケチを付ける人は誰も居ないだろう。
特に、焚き火を前にしての二人の抑えた会話のやり取りは本作のハイライト。
「フールズ・ゴールド」なんて駄作に出てた頃を思うと本作のようなマコノヒーの演技には誇らしいものを感じるし、渡辺謙の役柄は人それぞれの解釈。

日本人には“陰”のイメージがある青木ヶ原樹海が美しく撮られている。
東洋的な神秘さが生と死を包む。

近大