劇場公開日 2016年3月4日

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マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章 : 映画評論・批評

2016年3月1日更新

2016年3月4日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

国宝級の名優たちがインドで舞う。爽やかな味わいに満ちた人生賛歌

イギリス俳優界のまさに“いぶし銀アベンジャーズ”ともいうべき大御所たちが再集結。インドの灼熱の太陽の下、彼らの足取りは年齢を感じさせないほど軽快で、なおかつ涼風のような爽やかさでストーリーを牽引する。「老いは人生の終点ではない、新たな出発である」。そんな胸のすくメッセージが、今回も観客の心を掴んで離さない。

嬉しいことに観客は、冒頭からマギー・スミスの舌好調ぶりにガツンとやられる。何しろホテル事業の新たな資金獲得のため渡米したミュリエル(マギー)は、投資会社の社長を前に「紅茶とはなんたるか」を大熱弁してみせるのだ。この融資の行方こそ、今回の重要な鍵。物語は若き支配人ソニーとフィアンセの一週間に及ぶ盛大なインド式婚礼を背景に、流麗な語り口で進んでいくが…

おんぼろホテルで暮らす面々はみんな相変わらず。ビル・ナイジュディ・デンチは互いの愛に躊躇して一歩踏み出せずにいるし、ソニーに対する指南役ミュリエルの態度は、時に血の雨が降りそうなほど辛辣だが、また時に強い優しさと絆を印象付ける。一方、今回はアメリカからリチャード・ギアが投入され、新たな化学変化を巻き起こすのも見逃せない。

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そもそもマリーゴールドは、信頼、愛、嫉妬、勇気という多様な花言葉を持つ。その花びらのごとく、人生をもっと美しく咲かせようと奮起する彼ら。さりげないセリフの端々、仕草、視線にそっと味わいを滲ませるところもさすがだ。とりわけジュディ&マギーという実年齢もたった19日違いの81歳コンビが、ほんの一瞬だけ見せる共演シーンには、言葉にせずとも通じ合う思いがギュッと詰まっている。終始移ろいゆくマギーの表情もまた、ここでは一つの軸。下されるひとつの凛とした答えはいつまでも心に響いてやまない。

ボリウッド風の熱狂に包まれる終盤、若者たちに負けじと、必死に身体をくねらせて舞う名優たちの可愛らしさも格別である。そしてつくづく思う。これは大御所たちから若者へ、情熱のたすきを繋ぐような映画なのだと。両者がすれ違いざまに掲げ合う手と手のごとく、誰もが客席から精一杯の敬意を表したくなるはず。人生は冒険。魂の躍動は誰にも抑えられない。いぶし銀の名優たちは今回もそのことを、活き活きとした瞳で教えてくれた。

牛津厚信

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