劇場公開日 2015年11月7日

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「近頃の難病映画は生きている時のことを描くのさ」サヨナラの代わりに りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)

3.5近頃の難病映画は生きている時のことを描くのさ

2015年10月24日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

ヒラリー・スワンクがALS(筋委縮側索硬化症)を発症した女性を演じる『サヨナラの代わりに』、ポスター等のデザインでは、車椅子にに乗った彼女を後ろから支える若い女性(エミー・ロッサム)の姿があることから、なんとなく『最強のふたり』をイメージします。

難病もの映画も最近は変化しているのでありまして、主人公が死んじゃうことで涙を絞るということはよしたようです。
この映画もそのとおり。

早くに、ケイトの病気がALSであり、克服困難な病気であることを告げます。

つまり、残された時間をどのように生きるか、その時間で、登場人物のだれが新しい人生のキッカケを得るか、ということに焦点が置かれます。

映画では、ケイトの看護人で、少々無軌道で自堕落で男癖が悪いベックが変化していくわけですが、親密になっていく過程がちょっと類型的かしらん。
女子大生にしてはとうが経ったエミー・ロッサムが演じているのも、いささか作り物めいてしまっている。

そこを補うのが、ヒラリー・スワンクの演技。
アカデミー主演女優賞を得た『ミリオンダラー・ベイビー』を髣髴とさせる(もしくは凌駕する)ような演技で、その日増しに衰えていくさまは心に突き刺さる。
後半、もう手の施しようがない段になってからは、先の作品以上の決意も感じさせます。

また、同じALSを患った黒人女性夫婦との交流なども途中描いており、残された時間をどのように充実させるのかのも巧みに描いています。

ただし、そのような生きる力を前面に押し出しているので、本来ならばもっと悲壮感があるのではないかと思われる描写が少ないあたり、米国メジャー作品でないにも係わらず、少々エンタテインメントに寄っちゃったかな、とも感じました。

りゃんひさ