劇場公開日 2015年8月28日

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テッド2 : 映画評論・批評

2015年8月25日更新

2015年8月28日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

前作越えを課されたテディベア喜劇、マクファーレン監督の“革新者はつらいよ”

前作「テッド」は、奇想と笑いと下ネタの化学反応が想定外のメガヒットをもたらした奇跡のコメディーだった。孤独な少年ジョンの願いで、クマのぬいぐるみが命を宿し、友情を築く。ここまでならファンタジーの類型に収まるが、27年後、外見はテディベアのまま中身が不良中年になっていたという展開が秀逸。同じくダメ中年になっていたジョン(マーク・ウォールバーグ)と共に、ビールと大麻でダラダラ過ごし、下品なジョークを連発するテッドが、女性観客層に熱く支持されたことも嬉しい驚きだった。

才人セス・マクファーレンは、「テッド」で映画監督デビューを果たした後、監督・主演作の「荒野はつらいよ アリゾナより愛をこめて」を経て、この「テッド2」に臨んだ。前作同様、監督・脚本・製作に加え、テッドの声と動き(モーションキャプチャーを使ってCGで描画)も担当している。

前作を越える出来に、というプレッシャーは間違いなく強かっただろう。新味を出すため、テッドの結婚、子作り騒動、婚姻の無効通知とつなげ、テッドの“人権”を勝ち取るための裁判へと話を広げていくのだ。アマンダ・セイフライドが新米弁護士として奮闘する訴訟の過程は、古くは黒人の奴隷制度、公民権運動から、昨今の同性婚をめぐる動きまで、被差別マイノリティーが平等を獲得してきた歴史に、明示的に重ね合わせている。

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もちろん真面目なテーマだけではなく、前作から懲りずにストーカーを続けているジョバンニ・リビシの腰振りダンス、「荒野はつらいよ」で重要な役を演じた某俳優のぜいたくな無駄遣い(前作のライアン・レイノルズと一緒)、セイフライドの大きな目を「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラムになぞらえる幼稚なからかいなど、笑いの要素も豊富。往年のミュージカル映画を彷彿とさせるオープニングクレジットの群舞や、コスプレイヤーたちが大勢集う終盤のコミコン会場など、前作からの予算アップが如実に表れたシーンも見事だ。

ただし、盛り込まれた多彩な要素が、前作のようなケミストリーを生むまでには至らなかった。業界に新風を巻き起こすイノベーターが、常に斬新な傑作を求められるのは、宿命とはいえツラいところ。すでに第3作の製作が決まったというニュースも流れており、次作での挽回を一ファンとして今から期待している。

高森郁哉

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