劇場公開日 2014年8月30日

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「食べることは生きること 食は命へと繋がる」リトル・フォレスト 夏・秋 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5食べることは生きること 食は命へと繋がる

2017年1月2日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波、VOD

総合65点 ( ストーリー:55点|キャスト:65点|演出:70点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )

 主人公いち子の日記のような日常生活を、ひっそりとゆったりと静かに描く。

 音楽はでしゃばらず控えめに流れ、虫の声・鳥の囀り・風の音で生活を表現する。昔ながらの慎ましい生活の中で静かに地に足をついた生活をし、自給自足に近いかたちで食べ物を育てて料理をしていく。ただ田舎の生活を賛美するわけではなく、体力を使う日々も不便な部分もありのままの田舎生活を描写し、迷っている自分の人生を、育て採集し調理し食べるという、食を通して生を感じて静かに見つめていく。橋本愛の語りが心地よい。
 物語にも登場人物にも動きはあまりない。いち子の過疎の山村での本来ならば貧困生活を、ただただ1つの若い一人の女の人生として日常を食べ物を中心に追いながら描くだけの記録映像のよう。それは普通ならば退屈してしまいそうなのに、なんとなく退屈せずに見れてしまう。何かこの寒村が俗世を離れ自然と調和した不思議な生を見つめなおす空間のように思える。映画としては独特なので高い点数ではないけれど、つけた点数以上に不思議な魅力がある。

 原作者の五十嵐大介は登場当初から好きだったが、彼が仕事がなくなり漫画をほぼやめて過ごした実際の村を舞台にした作品であり、彼の村の生活での経験を基にした人生観に引き込まれる。近年は文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞するなど彼の作品が高い評価を受けて認められているのが嬉しいし、このように映画化されてより多くの人に知ってもらえるのも喜ばしい。

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Cape God