劇場公開日 2014年6月7日

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いのちのコール ミセスインガを知っていますか : インタビュー

2014年6月4日更新
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子宮頸がんとは?蛯原やすゆき監督が安田美沙子主演作で訴える検診の重要性

子宮頸(けい)がんをテーマにした安田美沙子主演作「いのちのコール ミセスインガを知っていますか」が、6月7日に劇場公開される。若手監督・蛯原やすゆきが、闘病生活を送っていた故渡邉眞弓さんとともに映画化を実現。子宮頸がんに侵された女性と周囲の人々のきずなを描き、病気に対する正しい知識と検診の重要性を訴える。(取材・文・写真/編集部)

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高校教師の河原たまきは、婚約者・大島高志と幸せな日々を送っていた。そんなある日、腹部に痛みを感じ、子宮頸がんであることが発覚。子宮と卵巣の全摘出手術を受ける。たまきは高志と結婚するが、周囲の病気への無理解や夫とのすれ違いから孤立し、愛聴していたラジオ番組の最終回に、自殺をほのめかす電話をかける。

子宮頸がんは、性交渉によって感染するヒトパピローマウイルスが原因で発症。感染初期は自覚症状がなく、手術では対応できない状態まで進行してしまうため、早期発見が重要となる。近年は、20~30代女性の罹患率は増加しているが、病気の認知度、検診率はともに低く、誤った情報による偏見も問題視されている。

蛯原監督は、家族を奪ったがん撲滅を願う父親の活動を追った動画を制作するなど、社会性のあるテーマに取り組んできた。2009年に子宮頸がん啓発セミナーに参加し、「子宮という言葉がつくから女性の病気かと思ったら、男性こそ知っておかなければいけないのではないか」と痛感。「検診への意識を高めたい」と願っていた渡邉さんと出会い、映画化へと踏み出した。

より多くの人に見てもらい、病気に対する正しい知識を広めたいという思いから、ドキュメンタリーではなく劇映画を選択。実話を基にしたシドニー・ポラック初監督作「いのちの紐」をベースに、「脚本家の南木(顕生)さんのアイデアで、『いのちの紐』を現代版にアレンジした」と物語を構築していった。

「元気をもらえる」と白羽の矢が立った安田がたまきを演じ、若手俳優・山口賢貴がたまきの家族として病気と向き合うことになる高志役に抜てきされた。「僕もそうですが、日本の男性は『お前を守る』という強いイメージができなかったんです。格好つけない弱い男を演じてほしかった」と等身大の男性像を組み立て、病を患った当事者だけでなく家族の苦悩も描き出した。脇を固めるベテラン勢も個性豊かな顔ぶれで、室井滋がたまきの命をつなぎとめるラジオDJ、マユミ役に挑戦。「最初から室井さんのイメージしかなかったんです。室井さんも『このキャラクターは私自身』とわかってくれていたと思います」と作品を支えている。

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蛯原監督は、撮影のため患者に取材を敢行し、偏見をはじめとした見えない問題に直面したという。「手術後は以前のように体力が持たず仕事を休みがちになったり、悩みを語り合うボランティアのNPO団体がない地域があります。そういった団体をつくったり、サポートする人を増やすことが大切で、話しを聞くことで、いろいろな問題が浮かび上がります」。渡邉さんら製作陣が共通して持つ「正しい知識を持ってもらいたい」という思いを盛り込んでいった。

強いメッセージを込めながらも、「教育映画にしたくなかった」と振り返り、「若い人に見てほしいという思いがあったので、重くつらいものにはしたくなかったんです。最後まで見てもらえるストーリーにするため、クスッと笑えたり、感動できるものが必要でした」とドラマ性を持たせた。訴えたいテーマと面白さのバランスに苦戦したが、キャスト陣も蛯原監督らの思いに共鳴するように「子宮頸がんに限らず、病気を体験した人の話を聞いたり、調べてくれました。ただ面白い作品をつくるということだけではなく、『子宮頸がんとは何なのか』というメッセージを伝えていこうという思いが感じられ、うれしかったですね」と一丸となって作品を完成させた。

蛯原監督は、12年に作品の完成を待たず他界した渡邉さんの思いを受け継ぎ、「これから性というものに興味を持つ若い人に見てもらいたい」と熱を込める。「まずは、子宮頸がんというものがどういうものなのか、言葉だけでも知ってもらいたいです。男目線でつくっている部分もあるので、男性から恋人や家族に『検診に行っている?』と一言声をかけてほしいと思います。それから検診に行ったり、何かアクションを起こしてほしいですね」と若い世代にメッセージを送っている。

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