バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 : 映画評論・批評

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生

劇場公開日 2016年3月25日
2016年3月29日更新 2016年3月25日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

善とは、力とは、正義とは。自問する両雄の激突は、悩める世界の合わせ鏡

絵空事の典型のようなアメリカンコミックのスーパーヒーローは、しかし、常に時代を映す鏡だった。元祖アメコミヒーローの「スーパーマン」が誕生したのは、第二次大戦前夜の欧州でナチスドイツがユダヤ人迫害を強め、米国では大恐慌を経て社会不安が高まる1938年のこと。貧しいユダヤ系難民の子として育ちオハイオ州クリーブランドで出会った2人の若者が、超人的な力をもって世の悪事や災厄から弱者を助ける“救世主”を夢想し、漫画に描いたのだ。

人気を博したスーパーマンがアニメ化、映画化されたのはもちろん、39年の「バットマン」をはじめ数多くのヒーロー漫画が生まれる契機にもなった。さらに、DCコミックの正義の味方が同盟を結ぶ「ジャスティス・リーグ」も、米ソ冷戦の危機を迎えていた60年に初登場。実写映画化としてはマーベル・コミックのヒーローが結集する「アベンジャーズ」(2012年)に先行されたが、今作「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」でついに、両雄がスクリーン上で初めて顔を合わせる。

ストーリー的には13年の「マン・オブ・スティール」の続編となり、クラーク・ケント=スーパーマン役のヘンリー・カビルほか主要キャストと、製作のクリストファー・ノーラン、監督のザック・スナイダー、脚本のデビッド・S・ゴイヤーが続投。冒頭、前作でのスーパーマンとゾッド将軍の戦いが再現されるが、ブルース・ウェイン=バットマンの視点で描き直されるメトロポリスの光景は、高層ビルに突入する飛行体、崩落する建物、瓦礫と粉塵に飲み込まれる人々など、9・11テロのニューヨークを容易に想起させる。強大な力を持つがゆえに、抗う敵との戦いは、街と市民に甚大な被害をもたらす。スーパーマンを人類の脅威とみなすバットマンに、宿敵レックス・ルーサーの策略もからんで、いよいよ正義の両雄は自らの善を貫くため対決する。

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異星人のスーパーマンが本来の能力なら人間に負けるはずはないが、バットマンとレックスにフィジカルやメンタルの弱点を突かれ、勝負の行方は分からなくなる。CGを駆使した超高速アクションがヒーロー映画で全盛の昨今、バットマンとハンディを負ったスーパーマンの肉体のぶつかり合いを実感させるファイトは見応え十分。スナイダー監督が「300 スリーハンドレッド」「ウォッチメン」で見せた鮮烈なスローモーションは、アクションシーンではないものの、いくつかの場面で印象的に挿入されている。

ノーラン監督、ゴイヤー脚本の「ダークナイト」3部作は完結し、今回バットマン役にはベン・アフレックが起用されたが、同3部作のダークな基調は新バットマンのキャラクター設定に継承されただけでなく、本作全体に影を落としているように感じる。世界のリーダーたる米国の威信が薄れ、各国で銃や爆弾によるテロが相次ぎ、政治や世論が右傾化する当世のムードを、観客が投影する面もあるだろう。それでもなお、暗い時代に希望を失わず、障害や対立を超克して手を携えることを、私たちに訴えかけているように思えてならない。

高森郁哉

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