劇場公開日 2014年4月5日

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THE NEXT GENERATION パトレイバー 第1章 : インタビュー

2014年4月2日更新
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押井守×真野恵里菜 2014年、なぜ「パトレイバー」は再び立ち上がったのか?

昨年3月の「東京国際アニメフェア 2013」でのアナウンス以来、大反響を呼んだ「機動警察パトレイバー」完全オリジナル新作の実写化プロジェクトが2014年、ついにその全ぼうを明らかにする。その先陣を切るのが、4月5日から全国の劇場でイベント上映される「THE NEXT GENERATION パトレイバー 第1章」。物語の主役である“特車二課”の歴史と現在を描くイントロダクションだ。なぜ、パトレイバーは再び立ち上がったのか? シリーズ全7章のイベント上映&来年GW公開の長編劇場版まで、1年以上の歳月をかけて物語られる意図とは? 総監督を務める押井守と、ヒロイン・泉野明(いずみのあきら)役に大抜てきされた真野恵里菜が思いを語る。(取材・文・写真/内田涼)

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1988年の発表後、コミック、アニメ、小説と多彩なフィールドで展開した「パトレイバー」シリーズを語る上で、長年アニメシリーズの演出を手がけた押井監督はハズせない存在。その押井監督が総監督に立った実写化プロジェクトに、ファンの間では「待ってました!」と歓迎する声と、「なぜ今なのか?」と首をかしげる意見が交錯しているのではないだろうか。

「2本目のアニメを作った時点で『これで終わり』だと思っていたし、もう一生やることもないだろうと。そもそもテレビからかかわって、付き合いも長かったから、飽きちゃったという気持ちもあった」と押井監督。“2本目のアニメ”とは傑作の声も高い「機動警察パトレイバー2 the Movie」(93)のこと。その後、小説の執筆やギャグ満載の短編「ミニパト」こそあったが、シリーズへの思いはいったん断ち切れた状態だったという。「時間が経ち過ぎているよね」(押井監督)。

ただ「時間が経ち過ぎている」からこそ、押井監督が今再び「パトレイバー」と向き合う結果になったのも事実だという。「なぜ今かって疑問に答えるとしたら、自分がどうこうじゃなくて、やっぱり周りの環境が大きく変わったんだと思う。言ってみれば、一回自分が終わらせたものでもあるから、昔のままを実写化してくれと言われても、それはできない。でも時代や環境に即したアレンジであれば、そこに自分が(総監督を)やる必然も見えてくる。そうでなければ、違う監督がやるべき話だから」

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今だからこそのパトレイバーを、押井守が表現する。その必然は「THE NEXT GENERATION」というタイトルが示す通り、“栄光の初代”“無個性な2代目”を引き継ぎ、今やお払い箱となったレイバーの運用経験継続を名目に、かろうじて存続している特車二課“無能な3代目”の奮闘を描くという新設定に表れている。もちろん、オリジナルストーリー。キャラクター名も真野演じる泉野明(いずみのあきら/原作は同じ漢字で、いずみのあ)をはじめ、塩原佑馬(しおばらゆうま/原作は篠原遊馬)、隊長の後藤田継次(ごとうだけいじ/原作は後藤喜一)などアレンジが施された。

アニメや漫画を原作にした実写映画が公開されるたび、キャスティングに対して厳しい意見が噴き出す昨今。主演を務める真野の重責は、想像に難くない。「私が生まれる前にスタートし、たくさんのファンに愛される作品ですからね。正直不安は大きかったですけど、これも何かの縁なので真正面から向き合うしかないなと思いました」(真野)。いざ、千葉県内の倉庫に作られた特車二課のセット(そこには全長約8メートルの実物大パトレイバーの姿も)で約半年間に及ぶハードな撮影が始まると、悩みや戸惑いを感じる隙はなかったという。

「毎日、特写二課に通う明の日常と、現場に通う私の現実が完全にリンクしていましたね。現場にマネージャーさんがいたのも、クランクイン当日だけ。私から『ひとりで大丈夫です』ってお話しして。それも明を演じる上で、すごく良かったですね」。共演した太田莉菜をのぞくと、現場は男だらけの汗くさい“戦場”だったが「早くなじみたかったので、自分から積極的にコミュニケーションをとるようにしました。ふだんは人見知りですけど、そんなことも言っていられませんし。撮影が終わった後、友人から『久しぶりに会ったけど、すごく明るくなったね』と言われて。撮影中は気づきませんでしたが、きっと時間をかけて、自然と明になれたんだと思います」と胸を張る。

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半年間の撮影期間を経て、自然な流れでキャラクターになじんでいくキャスト陣。その姿を、ファンは約1年間続くシリーズを通して、やはり“自然に”受け入れていく。全7章のイベント上映&長編劇場版という長期スパンがもたらす演者と観客の相互作用に、押井監督も大きな期待を寄せている。

「例えば、香川照之さんが丹下段平を見事に演じるって、それはそれで素晴らしいけど、今回はそういう趣旨じゃないから。アニメの世界の泉野明は、たくさんのアニメーターが絵を描き、冨永みーなという声優が命を吹き込んだキャラクターだから、いざ実写といっても誰かが取って代われるものじゃない。もうね、最初はキャストに対して違和感があってもいいんですよ。肝心なのは1年という時間を、一緒に過ごせる相手かどうか。見終わる頃には『この子も成長したな。やっぱり明を演じられるのは、真野恵里菜だけだった』と絶対に思ってもらえるはず。そこがシリーズの醍醐味だし、いいキャスティングができたと自負している」

来年公開の長編劇場版を目指し、新たに生まれ変わった「パトレイバー」は起動したばかりだ。ふたりは現在の心境を、率直にこう語る。

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「私にとって半年間、同じ役を演じるのは初めての経験。パトレイバーのコクピットに入り、たくさんのスイッチやレバーを目の当たりにした緊張と興奮は、今も忘れません。昨年末、クランクアップした瞬間は、それまでの“日常”が一気に消えてしまった感覚で、不思議な思いにかられました。きっと、特車2課にずっといたかったんでしょうね……。今は達成感いっぱいです! 長丁場の現場で学んだことも多いんですよ。こういうシーンでは照明さんはこう動くんだとか、それに気づける自分も嬉しくて(笑)。女優として視野がすごく広がったのを感じたし、これからが勝負だなって。根拠のない自信がついたのも、『パトレイバー』をやり遂げたからこそだと思います」(真野)

「僕も実写で6カ月って初めてで、思った以上に長かった。グダグダになるかと心配もしたけど、内容が濃い現場だったから。それにキャラクターって、監督の中にも役者の中にもいなくって、その中間にいるから、同じ方向を向くのに時間もかかる。いまだに『名前を貸しただけ』なんて言う人もいるみたいだけど、ちゃんと仕事はしました。(イベント上映される)12個のエピソードは監督も変わるから、それぞれ明らかな違いもあるし。寄ってたかって映画を作ると、面白いものが完成する典型ですね。自分で言うのもなんですが、かなり面白いものに仕上がりつつあります」(押井監督)

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