劇場公開日 2014年11月15日

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「語るSF」楽園追放 Expelled from Paradise SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0語るSF

2015年1月4日
iPhoneアプリから投稿

知的

難しい

面白かった。見た目はオタクアニメっぽいが、中身はガチテーマのSF。ヴァーチャル世界に人類の大部分が移住し、リアル世界よりも「現実」として機能している未来。
マトリックスに似てるけど、マトリックスでは少なくともリアル側には肉体が必要だったのが、こちらでは肉体すら必要なくなってて、リアル肉体が必要なときには数十時間で培養合成してしまう。ヴァーチャルとリアルの関係が完全に逆転している。
虚淵脚本に多いのが、世界の根幹であるシステムそのものが敵であり、その敵は社会全体の最大幸福を実現しようとする、むしろ善意のかたまり、みたいな設定。この話もその類型にはまる。
ヴァーチャル世界の価値観と、リアル世界の価値観の対立がテーマの主軸となっていて、その落とし所として、管理社会の中で家畜化する人間のあやうさが語られる。うーん。ガチSF…。
ヴァーチャル世界の価値観や生活は、ネット接続が前提となっていて、それに頼り切ってしまっているところなどは、現代社会への警告にも見える。
ただ、虚淵脚本てみんなそうだけど、重要なことを全部登場人物に語らせてしまう。話についていけないと、何がなんだかわからない、ということにもなりそう。
最後はおきまりのドンパチで終わるのは、ありきたりで冷めたけど、映画のドラマツルギーってそういうものなのかな。
難点を言うとすれば、ヴァーチャル世界の良さというものをもっと具体的に出してほしかった。ヴァーチャル世界に住むなんておかしいよね、やっぱり人間はリアル世界に住むのが本当だよね、なんていう単純な話ではないのに、そういうふうに見える話になってしまってる。
両方の世界の間で葛藤し、どちらかを選び取る、という意思決定が物語の中でなされれば、「楽園追放」というタイトルがすごく生きたと思う。

SP_Hitoshi