劇場公開日 2015年2月7日

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マンゴーと赤い車椅子 : インタビュー

2015年2月5日更新
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秋元才加「“女優”じゃなくて“役者”になりたい」

「AKB48」を卒業してわずか1年半。現在は女優として、舞台にテレビに映画にと躍進を続ける秋元才加。今は「がむしゃらにひとつひとつの仕事をこなすことに精一杯」だといい、どの作品に対しても全力投球な姿が印象的だ。「今はやっとスタートラインに立てた状態。一生懸命やって、まずはその熱が伝わったらうれしい。技術はきっと後から付いてくるものなので、最近はやっぱり気持ちが大事だなって実感することが多いです」と清々しい笑みを浮かべ、主演最新作「マンゴーと赤い車椅子」について語った。(取材・文・写真/山崎佐保子)

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不慮の事故で半身不随になってしまった女性・彩夏(秋元)。最初は車いすを受け入れられず自暴自棄に振舞うが、リハビリセンターの同じ車いす仲間たちとの交流や、故郷・鹿児島で暮らす祖母(三田佳子)の思いを支えに、自らの人生を取り戻していく。

本作は、仲倉重郎監督の思いが込もった念願の企画。自身も突然半身不随の車いす生活に直面し、その時に出会い感化されたリハビリセンターの若者たちをいつか映画にしたいと構想を練ってきた。そんな仲倉監督の思いを一身に背負った秋元だが、意外にも「プレッシャーは全然なかった」という。「監督が伝えてくれることにできるだけ向き合って、一生懸命に取り組むだけでした。車いすの作品はたくさんあると思いますが、この映画は車いすに関する描写がとてもリアルなんです」。

確かに仲倉監督の実体験がふんだんに盛り込まれているので、車いすの演出は秀逸。しかし、実際はかなり限られた時間と環境下でのトレーニングだった。「自分の体に合わせて車いすを作ったので、実はその車いすを使っての練習時間はあまり取れなかったんです。でも、彩夏も最初は下手という設定なので、私も下手な状態から撮影に入れたことはよかったかも。病院の車いすはものすごく重いけれど、自分用のは軽くて動きやすくて。まるでドキュメンタリーを撮っているみたいで、役と自分がリンクできましたね」と、その不慣れさが奏功した。

車いすでのアクションよりも、秋元が心を砕いたのは彩夏の複雑な女心だったという。「障がいがあっても人を愛することはできるし、子どもを産むこともできるという強い思いが、ストレートに台本に書かれていました。彩夏は妻帯者の恋人に対して思いを持ち続け、障がいを抱えても彼の子どもを産みたい。私はサバサバしているし経験も少ないので、彩夏の気持ちを表現するのはとても難しかった。なので作品を通じて、彩夏に教えてもらった気がします」。

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リハビリセンターで出会った車いすの人々との出会いが、彩夏という役にはもちろん、秋元自身にも大きな刺激を与えてくれた。「結構やんちゃな方々が多くて、みんなアクティブでエネルギッシュ。『サインちょうだいよ』とか(笑)、得意そうにウィリー(前輪を浮かせるテクニック)を見せてくれたり。辛い時期を乗り越えてきた方たちなので、強い心を持って生きているんだなって感じました」といい、「色々な不幸や悲しみがあるけれど、与えられた環境の中でいかにベストを尽くせるか。前向きに充実した生き方ができるか。やっぱり自分が一歩踏み出さないと何も変わらない。そのことをシンプルに教えてくれる映画だと思います」。

「AKB48」卒業後、初めて挑んだ舞台は三谷幸喜作・演出の人気舞台「国民の映画」。この作品によって、秋元はアイドルから女優への“脱皮”を遂げた。「歌ったり、踊ったり、お芝居をしたり。私の中ではそこに境界線がないんです。“演じる”という意味では全部一緒な気がします。だから、いまだに女優という肩書きはちょっとムズムズします。私は“役者”になりたいんです」と言葉に力を込める。役者転向を決めたのは、「25歳になった時。女優としてスタートするのに一番良い区切りだと思ったんです。新しいことに挑戦し、荒波にもまれ、失敗や経験をする時間を考えたら、それ以降だと遅いと思った。私は何でもこうと決めたらそれを曲げることはないんです」と意志は固かった。

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同じ「AKB48」卒業生で女優として活躍している代表格に、前田敦子と大島優子がいる。3人とも作品の系統は異なるが、現在でも交流は続いており、互いに刺激し合いながら女優として着実にキャリアを重ねている。先日の「さよなら歌舞伎町」の会見で、前田は「作品のためなら(脱ぐことに)抵抗はない」と語ったが、秋元も「私も来たらすぐにやりますね。脱ぐことはいとわない。抵抗は全然ないです。それを恥ずかしがって中途半端にやることの方が恥ずかしい。それなら全部出しちゃえばいいじゃんって思う」と平然。「体当たり演技って書かれるのがすごく嫌いなんです。確かに体当たりの演技だけど、『じゃあ他のお芝居はなんなの?』って思ってしまう。体当たりは当たり前。それで体当たり演技って言われるなら、いくらでも脱ぎますよ(笑)」と潔く笑う。

どこまでもストイックな秋元。卒業生としても、後輩たちを思う気持ちやグループへの責任感を常に感じている。「私たちは独り立ちしたけれど、今度は私たちの頑張りをグループに還元しなくちゃいけないと思っています。今頑張れているのも、これまでの環境のおかげ。『元AKB』という肩書きが外れる時、感謝の意味でもそれがグループに対して一番の恩返しになるんだと思います」。

男勝りで責任感が強く、決めたことには迷わず一直線。秋元は今、「『こういうものをやりたい』『こういうことができる』という自分の”資料”を作っている時期なんです。とにかく今は、色々な役をやって経験を積み重ねるだけ。時代劇をやったことがないので、殺陣にも挑戦してみたい。この2~3年の頑張りで今後が大きく変わっていくと思うので、これからどうなるだろうとワクワクしています」。

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